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満洲事変日中戦争、第2次世界大戦太平洋戦争東京大空襲と沖縄戦原爆満洲の悲劇
───────────────────────└→昭和の初めの戦争


 話を『はだしのゲン』に戻すと、中岡大吉は「アメリカと日本では資源がちがう」「資源のない小さな国の日本は平和を守って世界中と仲よくして貿易で生きるしか道はないんだ」「日本は戦争をしてはいけんのじゃ」と言っている。
そうなると、資源のある国が戦争をしていいことになってしまう。
 また、大吉は日中戦争および太平洋戦争について、「軍部のやつらが金持ちにあやつられ、武力で資源をとるため、かってに戦争をはじめて、わしらをまきこんでしまったんだ」「ひとにぎりの金持ちがもうけるために、国民のわしらになにひとつ相談もなくかってにはじめたのだ」と言っている。これはアメリカ、ロシア、シナといった外の戦争の原因への視点が欠けているが、のちにゲンと弟分・隆太は「戦争を起こした奴」と「ピカを落とした奴」を両方とも許せぬ責任者としている。久間元防衛大臣の「原爆しょうがない」發言は、日本が他国から戦争を仕掛けられた場合、報復に日本が敵国に原爆を落としていいという結論になる。

 また、中岡大吉の言う「少数の金持ちが国民を無視」というのは、今の格差社会や、企業が勝手に生産を中国の工場に移している問題にも当てはまる。また、手書きからパソコンや携帯への移行の強制、株券電子化の強制、テレビの「地デジ」など、一部が国民に相談もなく、勝手にやっていることは多い。
 日本では金持ちが金を公共に寄付する考えがなく、貧困層に分配されない。ゴッホ(Gogh)やルノアール(Renoir)の絵を買って、「自分が死んだら絵も焼いてほしい」と言った日本企業幹部もいたので、人類共通の遺産と言えるものは、オークションに出さす、公共の博物館などで保管したほうがいい。

 戦争の原因を言うなら、第2次大戦だけでなく、秦王(始皇帝)が六国を「侵略」、「植民地支配」した戦争、『三国志』の戦争、川中島の戦争などの原因も考え、関係者を断罪し、被害者に賠償すべきであろう。自分の経験した戦争だけを問題にし、それ以前を単なる「歴史上の事件」にするのが人間の悪い癖である。

 「國民食堂」では雑炊に箸が立つということで人が並ぶほど、食糧難だった。粥も米が少なく、顔が映るようなもので、もはやただの汁、「おもゆ」であった。

 中岡家は知人から分けてもらったイモを警察に「ヤミで手に入れた」と見なされ、大吉、ゲン、進次は警官に殴られ、身ごもっていた君江も警官に蹴飛ばされ、イモは没収された。ここで警官が没収の口実にした「みなが空腹に耐えているのに、自分たちだけ食糧を独占するのはけしからん」というのは「平等」思想であり、「イモは兵隊の食糧」、「天皇に恥ずかしくないのか」は軍隊と天皇に特権を与えた差別思想である。これだから、格差社会の被害者はいつまでたっても救われないのだろう。社会の底辺の人は軍隊、自衛隊に入ったほうがいいということになるが、これも「政治」が作った間接的な徴兵システムであろう。

 このように、「平等」と「差別」は表裏一体である。例えば、「日本国憲法」で「(日本)国民は法のもとに平等」とあるのは、「国民」でない人間を差別することに繋がっている。これはもう、宗教に近い。

 一方、この警官も「大東亜戦争」の大儀を考えるなら、まず、一人でも多くの民衆に糧を与えることを考えるべきであった。「国のため」と言いながら、その「国」とは「天皇」と「軍」だけで、「(軍人以外の)国民」は入らないのであろうか。この警官の行動がかえって政府や戦争への反感を強める結果になった以上、この警官こそ「非国民」であるし、妊婦を蹴るなど言語道断。将来の小国民を誕生前に殺す気だったのか。この件で君江は「こんな日本なんかふっとんでしまえばいいんだ」と嘆いていた。こう言わせるまでに堕落した日本など、早く他国に併合されたほうがいいのではなかろうか。

 大吉は「わしら貧乏人にとって戦争などなにひとついいことはない」として、平和を望んでいた。ところか六十年余りたって「ネットカフェ難民」(ネットカフェ関係者には不評らしいが、使用者は気にしないだろう)や「ワーキングプア(就労貧困層)」、「フリーター」(「フローター」のほうがいい気がする)が問題になっているとき、その格差社会の底辺にいると想われる人たちが「いっそ、戦争でも起きてほしい」と言っているようだ(赤木智弘『「丸山眞男」をひっぱたきたい』朝日新聞社『論座』2007年1月号」)。

 つまり、「大東亜戦争」は貧困層が現状打破の切り札として望む「戦争」でも国を豊かにできなかった意味で一時的には大失敗であった。フランス革命も一種の国内の戦争であり、ケーキもパンも食えない貧困層が怒ると戦争=一揆になる。戦争に反対する人たちが一揆、暴動、武力闘争を支持するのは大きな矛盾である。

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2008年9/14


参照
T-CupBlog>戦争と格差、貧困層