子供のように うん。とうなずいた旦那は少し安心したようにベッドに横になった。




私は手を握った




手を握るなんて何年ぶりだろう




ある人のブログで手を握ってもらうと心の中の黒いものがスーッと無くなる気がすると書いてあった




私は実践してみたのである




手を握りながら涙が止まらない




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瞼を閉じた旦那に気づかれないよう喋りながら涙を拭う




声が震えないように元気に喋った




そして「頑張りや!」と言うと




「手握って、そんなん言われたらもうアカンみたいやん」と少し笑って旦那が言った




「そんなアホな。ブログで見てん。手を握ったら落ち着くらしい。どや?落ち着くやろ?」




ヤバイ。普段してへんことしたから(笑)




でも、旦那は嬉しそうやった




それから息子も姑も義妹も手を握るようになった




とても自然に




本来なら身内にとっては恥ずかしい行為かもしれない




けど、今まさに消えかかりそうな命を繋ぎ止めるかのように代わる代わる旦那の手を握った






* *  *  *  *  *  * *  *  *  *  *


中学、高校からの旦那の友人はたくさんいる




ひと通り皆、元気な時に見舞いに来てくれていた




ただ1人を除いて…




その1人Tは旦那の1番の親友かもしれない




そのTは旦那の胃癌発覚の前に胃癌の手術をしていた




彼はステージ2だったので今も元気にしている




その親友が手術して入院してる時に旦那は毎日見舞いに行っていた




なのに親友Tは1度も旦那の見舞いに来なかった




なぜか




後から聞いた話




自分だけ元気になって、うちの旦那が苦しんでるのが耐えられなかったと…







旦那に聞いてみた




「暇やろ?誰か見舞いに来てもらおうか?」





首を横に振る旦那




もう人に会う気力もなさそうだ





少し前には誰か来てくれへんかなぁと言っていた旦那




たくさんで来られて一気に帰られると寂しいと言っていた旦那





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ところが、もう誰にも会う気力がないのだ





旦那には内緒で私はTにメッセージを送った





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1時間ほどしてドアが開いた




開くと同時にTは変わり果てた旦那を見て泣きながら入ってきた




「◯◯!ごめんなー!来ぃひんでごめんなー!」





めちゃ泣いてるやん…




あかんやろ…笑




旦那の手を握り号泣しているT





旦那は笑顔





Tが来てくれて嬉しかったようだ




「じゃ、旦那のこと頼むわ。お腹すいたしご飯行ってくるわな〜」




2人にして部屋を抜けた




Tとは私も古い付き合いなので安心して任せておけた




1時間ほどして部屋に戻るとTも帰るところだった




「ほんならな!また来るしな!元気になれよ!」




涙を溜めたT




それが旦那とTの最後の別れだった