SS 捨てる男あれば | 月に酔う梅ー艶小説ー

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梅の花 一輪咲ても うめはうめ
土方歳三さんへの愛を叫んでいます

「捨てる男あれば」

 

 

秋の雨は冷たくて嫌い。

もう何年付き合ったかわからない恋人とは、

よくある男の浮気であっけなく終わった。

 

別れたばかりの寒々しい心に、激しい音を立てる雨は容赦しない。

 

(…傘、意味なかったな)

 

お気に入りの傘が差したくて、雨の日を待ち焦がれていたのは、いつだったか。

今はただ早く雨がやまないかと、濡れる足元を気にしながら歩いている。

 

「……?」

 

何気なく見た道の端に、雨に打たれて座り込んでいる男がいた。

…金色の長髪。少しチャラそう。

20代?服装は30代に見えなくもない。

身なりは整っているのに、雨に濡れることを全く気にする様子がない。

 

(きれいな色…)

 

雨に濡れた髪は、きらきらと輝いていて、

その美しさについ吸い込まれるように、彼の前へと足を進める。

 

「…ん、なんだい?」

「あ、いえ…」

 

(何やってんの、私…)

 

自然と、傘を傾けていた。

自分が濡れることを気にする余裕もないほど、

彼に降る雨を遮ってあげたいと思ったから。

 

「…大丈夫ですか。風邪、引きますよ?」

「ありがとう、でも大丈夫だよ。」

 

そう言ってニッコリと笑って見せる彼は、全然笑っているように見えなくて。

 

「これ使ってください。家、すぐそこなので…」

 

そう言って、今まで差していた藍色の傘を差しだすと、きょとんとした顔で見上げてきた。

整った顔立ちにくっきりとした二重の瞳。

 

ごめんなさい、チャラそうなんて思って。

 

「女の子を濡れさせて平気でいるような男に見えるかい?」

 

少しおどけて、両手をひらひらとする彼に、思わずふっと笑みがこぼれた。

 

「見えません。見えませんけど…、濡れて帰りたい気分なんですっ…!」

 

(……完全にバカ丸出しだ)

 

自分で言った言葉に、心で強烈に突っ込みながらも、

差し出した傘を引っ込めることはできない。

 

一拍置いた後に、豪快に笑いだした彼が、

涙なのか雨なのかわからない目じりの滴を拭った。

 

「いやぁ、久しぶりに笑ったよ」

 

そう言いながらも、まだ笑ってるじゃない。

よっこいしょ、と彼には何とも似合わない言葉で起き上がりながら、

前髪を流れる雨のしずくを片手で払う。

 

ああ、やっぱり。とても綺麗な顔をしてる。

 

「ねぇ、おせっかい、って言われない?」

「…い、言われます…」

「俺もねぇ、よく言われるんだ。何でもかんでも首を突っ込みすぎだって」

 

そう言って、寂しそうに笑った。

誰かを想っているようなその表情に、胸がひどく痛む。

 

「…誰かを、待っていたんですか?」

「いや…、うーん、…どうだったかな」

 

顎に手を当てながら少し悩んだ後、彼は後ろを振り返った。

誰かを探してる?

それにしてはもっと、遠くの、空の向こうを見ているような眼差しだ。

 

「…あの、」

「綺麗な色だね」

 

ぱっと振り返った彼は、私の言葉を遮るようにそう言って、私の手から傘を奪った。

 

「さ、行こうか。お姫さま」

 

(…どこに?)

 

そう聞き返すことができないほど緊張してるのは、

小さな傘に二人で入ってしまったから。

 

私の方に傾けられた傘をそっと押し返すと、

 

「全く、強情な子だね」

 

そう言って、まぶしそうに目を細めて、彼が笑った。

 

 

…今日、彼を拾いました。

 

 

おしまい

 

 

お世話になりっぱなしの艶友さんの推しが慶喜さんなので、

突然に慶喜さんを書きたくなりました^^

 

どんな設定で書いているのか、自分でもわからずで…

でも書きたいように書いてみました。

一応、慶喜さんのつもりで書いたのだけど…すみませんw

 

現代に生きている慶喜さんっぽい彼が、

何か大切な誰かを忘れているような感覚で生きていて、

誰かから言われた言葉やその人の服の色は覚えているのに、

その人そのものはすっぽり忘れている。ような。

すごくふわっとした感じで書いてしまったけど大丈夫かな><

土方さん以外を書くときはいつも緊張します。

 

この後どこに行ったかというと、彼女の家です←

そこでどうなったかはご想像にお任せで^^w

 

最後の、藍色の傘を指して歩く彼と彼女は、

何となくですが、秋斉さんに守られているような二人を思い浮かべました。

 

 

よし。

次は土方さん書こう!甘いやつ!