「サンデープロジェクト」の共謀罪特集を見て
今朝「サンデープロジェクト」(ANN系)で特集「共謀罪とは何か」がやっと
流れました。一ヶ月以上前に予告されていながら、なぜかなかなか放映さ
れなかったものです。
先週は、各局で共謀罪を取り上げたために、急遽、コーナーを設けたような
感じが否めませんでしたが、今回は覚悟を決めた本腰の特集でした。
具体的に今運動をしている辺野古と、かつて、米軍基地を断念させた三宅
島の運動を取材して、当事者の声を交えてわかりやすく説明し、言論の自
由を侵す形でこの法律が使われる危険がいかに大きいかを主張する論調
など、なかなか説得力のあるものでした。
また、元公安にいた人や現職警官の証言、「警察は法律を守るつもりのな
い組織」は、「公務員の性善説に立たなければ、いかなる法律も作れない」
との政府側参考人の発言の根拠を根底から崩すもので、あらためてこの
法律の恐ろしさを認識させるものでした。
ただ、2点ほど無視できない問題がありました。
●越境性(国際性)を強調しすぎ
海渡弁護士やジャーナリストの大谷昭宏さんは、「越境性」(国際性)を強
調しすぎていて、それさえ入ればなんとかなるようなコメントをしていまし
た。でも、今の市民運動は国際的連携のあるのが普通になってきているの
で、「越境性」を入れることによって市民運動が安全になるとは言えませ
ん。
国際的なNGOの日本支部だけでなく、たとえばイラク支援やアフガン支援
などの市民活動は、まさに国際的な連携活動ですし、多国籍企業の活動を
問題にすれば、そのとたんに「越境性」の要件を満たしてしまいます。
一般に環境保護、人権、平和など、市民が国際的に連帯して取り組む問題
がいよいよ増えてきています。国内で権力と立ち向かうのには市民は非力
であっても、国際的連帯は力をもちえますが、それこそが、各国政府にとっ
ては目障りでしょうから、弾圧される可能性が高いのではないかと心配されます。
●「長期4年」の意味
サンプロでは、共謀罪の対象となるのは「4年以上の懲役・禁固刑」が想定
されている犯罪だ、としていました。しかし正確には「最高4年以上の・・・」
です。
条文には「長期4年以上の懲役・禁固刑」と記されていますが、この「長期」
とは、最高刑期のこと。これを省略してしまうと、事実とまったく違う印象を
生んでしまいます。
つまり、刑が最低でも4年以上が想定されているような重大犯罪だけが、
共謀罪の対象になるかのような印象です。しかし正しくは、刑の上限が4年
かそれを超えるものがすべて入ってきてしまうのです。
たとえば、「窃盗」は最高10年の懲役・禁固刑が想定されていますので、
当然対象になりますが、「窃盗」に含まれる「万引き」は懲役が科されること
さえ珍しい、0年という場合も普通である微罪です。
こうした誤解は、批判する立場に人たちにもしばしば見られ、賛成論者に
有利な論点を与えてしまいます。この点については、これからも事あるごと
に、メディアの間違いを指摘していかなければならないのか、とため息が出
ました。