なぜ与党議員が共謀罪に反対してきたのか
「野党や市民団体などの反対派は、この法案の揚げ足取りばかりやって、
ありもしない不安をあおっている」という批判があります。また、反対派の多く
は、「野党や市民団体、一部左派メディアの反対の声のおかげで、これまで
法案の成立を阻止してこられたのだ」と言います。
でも、本当にそうでしょうか。
あまり知られていませんが、衆議院の法務委員会では、野党議員だけでな
く、いや時に野党議員以上に、与党議員も様々な角度から問題点を指摘し
てきました。
この法案の危険性を見過ごせなかった与党議員のおかげで、今まで
法案の成立が回避できたのかもしれない。私にはそう思えてなりません。
中でも、自民党の早川議員や公明党の漆原議員は弁護士出身でこの法
律の危険性を知り尽くしているので、表現は丁寧でも、するどく疑義を呈し
ています。その様子は、議事録を読んだり衆議院ビデオライブラリーを見る
とよくわかるので、ぜひ自分の目と耳で確かめてみてください。
▼衆議院法務委員会2005年7月12日
■議事録 http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000416220050712026.htm
■ ビデオ http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib2.cfm?u_day=20050712
▼衆議院法務委員会2005年10月14日
■議事録 http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000416320051014005.htm
■ ビデオ http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.cfm?deli_id=28252&media_type=rb
■早川 忠孝議員(自民党)
1.重大な変更。特に慎重な審議を
2.恣意的な運用があってはならない
3.だれもが同じ解釈にたどり着けるか疑問
4.条約の範囲を逸脱していないか
5.市民団体や労働組合の活動が阻害されるのでは
6.正当な弁護活動が萎縮しないか
■漆原 良夫議員(公明党)
1.裁判官の恣意に流れないか
2.犯罪の成立には実行行為が必要
3.重大な犯罪のみの予防措置と言うには対象犯罪が多すぎる
4.目に見える犯罪の準備行為を要求すべき
5.対象を組織犯罪集団に明確に限定せよ
6.なぜ国際性がいらないのか
7.まともな団体から組織的犯罪集団への変質の認定は難しくはないか
8.恣意的な捜査が行われない保証はあるのか
(両議員の主な発言は http://kyobo.syuriken.jp/paper2.htm
で読めます)
条約に合わせて国内法を整備することに賛成の与党議員が、なぜ慎重
な審議を強く要求してきたのか。そのわけを考える価値はあるでしょう。
なお、2006年4月21日に提出された与党修正案は、数々の疑義のうち、漆原
議員の4と5に半分答えているだけ。問題だらけの修正案を声高に読み上げる
早川議員はいったいどんな感情を噛み殺しているのか。
政府や与党執行部は、この法案を慎重に審議する忍耐をもはや持ち合わせ
ていないのだ、という声が永田町から聞こえてきます。 (KI)