はじめに…
ようこそ。この物語に出逢ってくださいましたこと、心より感謝申し上げます。
インディゴチルドレンの私のために、私の元にやってきた彼。今世では親子という形でめぐり逢い、人生で本当に大切なことを氣づかせてくれるため… 私を成長させるため…
としか思えないようなドラマティックなストーリーが次々と展開していきます。
どうぞお楽しみいただけましたら幸いです。




 

" Transit "

第1章 ⑪

【誰よりもヘタ⁉️】

 
アランが天国に引越して2年半…
実は、中3の夏休み前に、また大好きな人との別れを経験していた。
 
母がいなかったら絵を習うこともなかったかもしれない。
彼の大好きなおばあちゃんが天国へ引越してしまった。
絵を習うきっかけを作ってくれたおばあちゃんが。
何よりも誰よりも可愛がっていたたった一人の最愛の孫のこれからの成長も見届けずに。
誰よりも楽しみにしていたはずなのに。 
 
  




 
アランとのお別れ、そしておばあちゃんとのお別れ、大好きで大切なものを失う経験をした彼の心の中は誰にもわからないまま。  
   
 

 


中学3年生の受験生の夏休み、
完全に中学校の存在を忘れて
勝手に淡々と受験対策を進めていた。 

KILALAの夏期講習とマイク先生に受験英語対策。 
 
数学と国語は、自分でやると言って、
夜、やっているフリだけは続いていた。
(フリというのは、リビングのテーブルで、教科書がずーっと同じページから1ページも進まないのをほぼ毎日目撃していたからである。)
 
 

塾を辞めて自分でやる!と決めたのも本人なので
私はただ黙っていることに努力していた。
 

 
 
そして、いつも必ず決まった曲を流しながら。 
この高校受験期間はずーーーっと、
クイーンか、バッハ以外の曲を聴くことはなかったのだ。
リビングでの勉強中も、
KILALAの送り迎えの車の中も。 
どんなに他の曲をかけていても車に乗った途端に、クイーンかバッハに変えられてしまうのだ。  




映画 ボヘミアンラプソディが大ヒットする何年か前のことだったので、映画が大ヒットしてクイーンブームになった時には、違う意味でビックリ!していた。笑笑  
 
  
 
中学校の存在を思い出したのは、
三者面談で、
本人の強い意志の元、
第一志望のみ!
東京都立総合芸術高校美術科。 
 
第二志望とか、滑り止めとか、一切考えていない。
 
と淡々と担任に話し、
私は横で苦笑いをしながら頷いていた。 
 
 
もちろん、担任の先生からは、
都立を受けるというのは、
公立なので、栃木県立の高校は受験できません。
と。
宇都宮の私立の美術デザイン科を一応受けておいたほうが…と。 
 
 
はい。はい。
もちろんおっしゃることは重々承知しております。
と心の中で言いながら、 
本人の強い意向だけを話して教室を後にしたのだ。
 
 
 
もう一つ、三者面談なんかより、
大切な重大なイベント?がこの夏休みに控えていたのだ。 
 
 
その第一志望の高校の体験入学に申し込んでいて、何よりも楽しみにしていた。  
 
 
私はこっそり、一足先に学校説明会に行っていて、
すでに一目惚れしていたし、
彼も一瞬で氣に入ること間違いない、
と確信していたのだ。 
 
  

そして私の予想通り体験入学を経験し、
今まで以上にこの高校以外の選択肢はなくなっていた。 
 
 
 
より強い願望と期待を胸に夏休みが終わり、
中学へ通う日々も淡々とこなしていた。 
 
 
  
地元の高校ではないということで、
中学の先生を頼るわけにもいかず、
再度、受験日や受験科目、願書提出日や提出書類、それに関わる諸々のことを確認していると…
 
 
 
OMGガーンガーンガーン
大変なことに氣づいて、
KILALAの学院長先生のところに駆け込んだ。 
 
 
 
先生、大変!
どうしましょう。私、見落としていました。
デッサン(鉛筆素描)でなくて、
水彩の静物着彩でした! 
推薦入試がデッサンで、
一般入試は水彩でした! 

※推薦入試は都内の中学校に通っているという条件があり受けられない。
都内の中学生は推薦と一般の2回受験できるのだ。
  

 
 
何をこんなに焦っているのかというと、
水彩は小学校低学年のキララの絵画造形教室と、
小中学校の図工や美術の授業でのみしかやっていないのだ。
小学校の途中から油絵専門コースにして油絵ばかりを描いていたのだから。
  
 
 
学院長先生は冷静に、
ママ、試験はいつ?

2月後半です。 
 
大丈夫!間に合う!
基礎科から日本画科のクラスに変更しましょう。 
 
 
 
9月の2週目、
いきなり受験科の日本画クラスに入れられて 
彼は愕然としていた。 
 
 
 
ここは受験科と言っても、
大学受験生ばかり。 
しかも、藝大や武蔵美、多摩美の日本画を受験する高校生や浪人生がいるクラスだった。 
 
 
 
もちろん、中学生は彼のみ。 
高校受験生は基礎科なわけで…
 
 
 
みんな年上の先輩達。
しかも、上手い。当たり前だが敵わない。 
どう周りを見渡しても自分がかなりのレベルの低さで下手すぎる。当たり前だが。 
 
 
 
しかも、大好きな油絵と違って、
水彩の描き方が全く違う。
自由に描けないどころか、
先生のあまりの上手さと速さに衝撃を食らった。 
 
 
 
正直、苦痛だった。 
当たり前だが、どんなに精一杯描いても
明らかに自分が一番下手なのだ。 
中学生だから当たり前なのだが。 
悔しかった。
クラスで一番下手な自分の絵を見る度に
凹んだ。 
自分以外で一番下手な人よりも
自分は下手だった。
悔しかった。 
 
 
 
りんご一つとっても、
先生とは蘊嶺の差があり過ぎる。 
 
 
 
油絵のように重ねられない。 
 
  
 
持ち帰ってきたりんごの絵を観て、
素人の私でもすぐにわかった。
そしてハッキリと言ってしまった。 

 
コレ、先生でしょう!
凄く美味しそうで食べたくなるもの。 
 
こっちは、不味そう。古いりんごみたい。 
 
 
だよね。。。 
先生めちゃくちゃ速くて上手すぎる。 
カッコイイんだよ。
 
僕は丁寧に描いてコレだ。。。 
 
 

(うわっ 本氣で落ち込んでるわ)



油絵と違うから今はまだ描けなくても
仕方ないわよ。
しっかり水彩の基礎から学んでいるから
いいのよ。よく先生や先輩の描き方みていて。
大丈夫!大丈夫!
あなたは天才だから大丈夫よ! 
 
  
 
天才だったらもう描けてるよ。
下手な人より僕が一番下手で最低レベル。 
  
  
 
大学受験生と高校受験生が同じだったら、
失礼でしょ!
上手い人たちの絵を観ながらなんて、
凄いラッキーな環境じゃない。
ツイてるわね〜。 

  

と精一杯励ましていた。笑笑
 
 
 
当分の間、りんごの絵が続いていた。 
 
 
 



 
つづく。。。 
 
 
  
 

à bientôt!ウインク