サイクルモードに来ちゃったぜ・・
11月6日
今年も来てしまったぜ・・。
私は、煌びやかに彩られた広大な会場へとゆっくり下りていくエレベーターに乗りながら、小さくため息をついた。
この時期になると、幕張メッセで開催される「サイクルモード」は、スポーツ自転車関連では、日本最大の展示会である。
毎年楽しみにしていたのだが、私はもう来る気はなかった。
なぜなら、虚しいからだ。
エスカレーターを降りると、いきなりブースを展開しているのは、世界一有名なロードレーサーのメーカー「コルナゴ」だ。
まるで世界遺産の仏像みたいにライトアップされて展示されている、コルナゴのロードレーサーは、なんとフレームだけで60万円弱である。
これにさらに・・ホイールや変速機やギアといったコンポーネント・・いろいろと部品を取り付け、乗れる状態にしたら、100万円近くに上るだろう。
なんと、うちの軽自動車・・ダイハツのタントと同じくらいのお値段になります!!
なんだか、このロードレーサーが途方もなく遠い宇宙からやってきた、地球人より遥かに高い頭脳を持つ宇宙人がこしらえたマシンのように思えてきた。
とりあえず、私がコイツにまたがる日は来ないということで。
私は木枯らしに吹かれて彷徨い歩く旅人みたいに、人ごみの中に紛れていった。
イタリアの老舗メーカー「デローザ」のチタンロードレーサーだ。
手作りにこだわり、一人の職人が2日かけてこしらえるという、このいぶし銀に輝くこのフレーム。
いいなぁ・・これ、欲しいなぁ。と思って札を見ると、50万円との驚くべき数字が踊っていた。
私は黙ってその場をあとにした。
ああ・・虚しいな。
私の眼に、初めて見るロードレーサーが映った。
「株式会社ティグ」・・日本の会社が、チタンのロードレーサーを作っている!?
心を躍らせ、ゴールドがわずかに混じるシルバーの美しいフレームを眺めた。
一番高い奴でも、フレーム価格30万円弱。
こいつなら、私でも買えそう!!
私はずっと探していた物が見つかったみたいに足取りも軽く、次のブースへと移動した。
パナソニックのチタンロードレーサー!!
家電のメーカーが自転車?・・そういえば、電動アシスト自転車が有名だが、ロードレーサーの実力はいかほどなのだろう?
私がひとつだけ言えること・・今のところ、乗っている人を見たことがないということだ。それが真実を物語っていると思う。
というわけで、係のおにいちゃんに「一番速い奴を!!」とお願いし、パナソニックのロードレーサーに試乗してみた。
会場の狭くてスピードが出せない試乗コースを3周した程度では、コイツの良さを理解するのは難しいのだろうが・・
我が愛機、ヴァンニコラスのチタンロードの方が、遥かに優秀!!やっぱり相棒が世界一素晴らしい。愛してるよ、相棒!!
試乗を終えて、そろそろ帰ろうかと思っていた時だった。
後ろから声をかけられ、振り向くと変態同盟のサムライがいた。
彼は風邪をひいて、家でもだえ苦しんでいるはずではなかったのか。
変態ウイルスによるテロとか悪行を目論んでいるのか。
さらに変態同盟・隊長も来ているというので、トークショーが始まる場所へと誘われた。私は、隊長の解説を受けながらトークショーを適当に流し見た。
舞台に上がっている、マイクを持っているおねえちゃんと、赤いジャージ来たおっさんが結婚するとのことだ。だが、そんなことはどうでもいい。
私が、ツール出場で有名なユキヤ殿はどのおっさんかと尋ねると、まだ登場してないらしい。
ピンクのシャツが別府選手で、チェック柄が土井選手で、白黒が新城選手とのことだ。
隊長に、ユキヤ殿はいつ登場するのかと尋ねると、もう出ているぞと言われた。
トークショーを途中で切り上げ、自転車漫画「弱虫ペダル」の作者がいる方に行ってみた。
「なんだ、ただの汚ねえおっさんだな。」
という、隊長の言葉に同感し、我々は選手たちのタイムトライアルを鑑賞した。
今日が誕生日だという鈴木選手が一番速く、東大出の西園選手がビリだったようだ。
会場に物寂しげな「ホタルの光」のメロディーが響き、人の波が出口へと流れていく。
どうやら今年の「サイクルモード」はこれにて終了だ。
みんな!楽しんだかい!?
悪天候でどこにも旅に行けない日に、私はいい時間つぶしになったよ。