中国から伝わった幻獣の獏(ばく)は、
人間の夢を喰って生きると言われている。
もちろんこの場合の夢は将来の希望の意味では無く、
睡眠中にみる夢の事である。

この数年、岩屋山志明院のシャクナゲの夢を見ている。
5年ほど前の紅葉の時期に一度だけ伺った。
鴨川の源流を守る、奥深い山中に佇む山門、
その門前に咲き誇るシャクナゲの群生が艶やかである。

このシャクナゲを最も良い状態で撮りたいと思い続けている。
先ずは咲く時期が問題があるが、それ以上に水分が左右する。
前日か前々日に雨が降って、快晴で無く薄っすら雲がかかる位。

そんな状況は中々遭遇できないし、
コロナ禍で志明院の拝観が真面に出来ない状態が続いた。
ところが先週末土曜日にこんな条件がピタッとハマりそうだった。
前日から情報を集め、出発時間も決めていたが、
その時間になると、どうした事か逆の方面に向かっていた。

やってきたのは南禅寺の三門。

 


すでに門前の楓は青々と領域を広げていた。







写真では一見観光客は少なそうだが、
実際は多くの観光客が思い通りの服装で闊歩されていた。
特にお若い女性の多くが妙に地味で渋い色目の着物を召されていた。



コロナ禍以前は東南アジア系の女性が、
ど派手な色彩の着物を羽織っているのに恐怖に似たものを感じた。
それはまるでチンドン屋、性格の悪い私はキットこれは着物業者が、
長年売れ残りで倉庫に眠っていた廃棄処分寸前の極彩色の反物を、
リバウンド景気で訪問している暑い国の女性向けに、
レンタル着物屋に卸し、着物文化に無知な観光客は、
これが日本の伝統文化と思い込み、
何の屈託も無く楽しんでいる様にも見えた。

それでは最近見かける地味で渋い着物を羽織る若い女性は?
おそらく素材と柄は手が込んでいるようなので、
高価なモノと思われる。
例えば祇園の芸者、北新地、銀座のホステスなら分かる。
そう言えばこのコロナ禍は夜の接客業、
特に高級接客業にお勤めの女性を直撃、収入減を招いたらしい。
そう言った高級接客女性向けのグレードの高い着物が売残り、
急場しのぎで若い女性対象のレンタル着物屋に出回った?
真相は兎も角、やはり大島紬みたいいな渋い着物は、
年を重ね、酸いも甘いも知った女性が着こなせるもの。。。

追記:上記の着物に関する内容はあくまでも私の思い込みで、

着物に詳しい方からのご指摘を受け、

実際はこの様な事は無いとの事、何卒ご理解、ご了承下さい。



今日の京都はすでに30℃近い。






南禅寺の紅葉の名所、
天授庵の壁からは大きく新緑がせり出す。



この日は土曜日なので多くの観光客と連れ立って、

 

 

 

 

 




水路閣に入る橋のその先にシャクナゲ、
かなり散ってしまっているが、

 


「キレイ!キレイ!」とはしゃいで、
着物のお若い女性連れは撮影会に興ずる。








その先、南禅寺の方丈玄関の脇にもシャクナゲ、



岩屋山志明院のシャクナゲが最も美しく咲く頃、
いつか撮影に伺えることを夢見ている。
これは叶える事の出来ない希望なのかもしてないが。。。


睡眠中の夢を喰べるのは獏だが、
希望と言う夢を喰べなければ生きられないのは、
どうも人間の共通のDNAのように思える。
それは踊らされているかに見えた東南アジアの観光客も、
最新の着物トレンドと思い込み羽織る日本人女性も私も。。。
その夢が正しいか間違っているかは別として、
おそらくクレムリン宮殿から目を覚ましたモンスターは、
愚かにも帝政ロシアを夢見ているかもしれないが、
大地が汚され多くの人の血が流され、涙を伴う夢は、
やはり希望の夢と呼ぶべきでない、
魔獣の邪悪な夢以外の何物でもないはず!

 



それにしてもいつになったら、
真面に志明院のシャクナゲを撮る事が出来るやら( ´艸`)