この時期の花の主役は紫陽花であるが、
爽やかな半夏生、池に浮かぶ睡蓮もいいものだ。
一時期、睡蓮の景色を求めて寺社、池を巡った事がある。
梅宮大社、勧修寺、大原野神社、天授庵、平安神宮、大沢池。

睡蓮はクロード・モネの絵画により世界的に人気の花だが、
日本に自生する睡蓮は白いヒツジグサと分類される一種のみで、
多くの寺社で見られる睡蓮はこれと思われる。

クロード・モネの色彩豊かな睡蓮の絵は、
単に睡蓮の魅力に取りつかれた画家のなせる業だけで無く、
浮き草の配置と池の隙間との絶妙なバランスによって成り立っている。

だからモネの睡蓮をイメージして京都市内の池を巡っても、
裏切られる、と云うより全く別物なのである。

それでも京都の時の移ろいをお届けしたいと、
この時期は各地の睡蓮の生育状態をチェックしている。
先ずは洛西の大原野神社の鯉沢の池、梅宮大社の神苑。
しかし以前から気になっているのだが、
どちらも睡蓮が密集し過ぎていて、
より一層「モネの庭」には程遠いものになっている。

水生植物は一見自然と協調性があるものと思いがちだが、
人工で作られた池では手入れをマメにしなくては、
とんでもない事になってしまう。

そんな思いで南禅寺の牧護庵まで足を延ばす。



山門に着くや否や雨が降り出した。






睡蓮の池は炎天下より曇り、
雨が降っている方が雰囲気があるが、
心配通り浮き草が密集状態となっていた。



牧護庵は非公開寺院なので
山門からしか池は観る事は出来ないが、
見渡す限り浮き草に覆われている。





カメラを最大望遠で見渡すと、
ようやく一輪が窮屈そうに咲き出していた。



三蜜どころかこれでは十蜜!!
ひょっとして基本水生植物は繁殖力が旺盛?
そう言えば3年前の大沢池の蓮の繁殖は凄かった。
三分の二以上覆い尽くされ、確か小倉池も!


侵略的外来動物の弊害についてはよく取り上げられているが、
現在更に侵略的外来水生植物の浸食が各地で問題になっている。
共に南米産のナガエツルノゲイトウ、オオバナミズキンバイ。

湖沼や河川などの水際に生育する水陸両生の多年生植物で、
「地球上で最悪の侵略的植物」と言われるほど繁殖力が強く、
岸辺から広範な水面を占拠し、在来植物を駆逐、
漁船などの航行障害や水害を引き起こしたり、
水の流れを阻害し水質汚染、悪臭の原因となったり、
水田に侵入し稲作を阻害するだけでなく、
そのハイブリッドの水陸両生がさらに陸上にも容易に進出し、
農作業にも影響を与えと云う、まさしく最強の侵略的水生植物。
共に小さな可愛い花を咲かすのだが!

日本にも各地に「モネの庭」をお手本とした池があるそうで、
唯一本家フランスから認めた「モネの庭」が高知県にあって、
睡蓮の生育は勿論の事、その絶妙な配置、隙間のバランスを取るのに、
庭師の手間暇惜しまない努力があるらしい。

ともかく睡蓮を楽しむのは相当の努力が必要。

 


京都で私の知る限る、
平安神宮の中神苑の睡蓮が手入れが行き届いている。












これは3年前の杜若がまだ咲いている頃。












水面の浮かぶ空に吸い込まれそうになる。













南神苑には花菖蒲が咲き誇っていた。













このほど良い隙間が良い。









もう一つは大覚寺大沢池の

 


日本自生のヒツジグサが絶妙なバランスで浮いていた。









牧護庵の山門を後にして、更に水路閣まで足を延ばす。



水路閣ほど良い隙間の楓が風に棚引いていた。