…望んだ事がきっかけで生まれた。

それを材題に

「瓢亭の 朝がゆすすり 

松に吹く 風の音聞けば 心すがしも」

と詠じたのは誰か?

 

 

 

「瓢亭(ヒョウテイ)」の発祥は

南禅寺の腰掛茶屋、

料理屋として400年以上の歴史を刻む。

 

「瓢亭玉子」など名物料理の中には、

粋なきっかけで出来たものもある。

 

 

ある夏の日、

祇園にて宵越しで遊んだ旦那衆が、

朝を迎えて芸妓を伴い酔い覚めに出かけた。

円山を越えて南禅寺辺りまで歩み、

「瓢亭」の前に。

早朝の事で店は閉まっているが、

「何か食べさせて」と無理を頼む。

主人はあり合わせで、

さっと料理して旦那衆に出した。

それは、

粥に濃い目の葛あんをかけたもの。

それが「瓢亭の朝がゆ」

として口伝えに広がり、

やがて店の料理としても出される様になる。

 

 

 

それが、

谷崎潤一郎や吉井勇ら

近代の文豪にも食された。

「瓢亭の 朝がゆすすり…」を詠じたのは、

明治から昭和にかけての歌人で、

祇園を愛した「吉井勇」である。