マティスの女 Blue Sky

 

 

 

 

20年くらい前に描いた絵です


私の絵の中で唯一マティスっぽい


絵だと思っています

 

 

 

 

 

 

マティスの女

 

 

 

 

私の若き日の話

 

市内中心部の電車通りで


実家は洋品店を営んでいて

 

メンズの常連客もいた

 

私の両親は人が好きで

 

夏ならば素麺


冬はすき焼きなどをして


常連の人達に振舞うので

 

週末の夜ともなると


わいわいがやがやと


人が集まり

 

迷惑と言えば迷惑


楽しいと言えば楽しい


そんな日々であった

 

近所のNさんもその中の一人で

 

弟の勉強を見てくれたり


弟を相手にトランプなどしたり

 

「桝井」の牛肉を片手に


ぶらり訪れたりしていた




 

ある時Nさんは取り急ぎ


書かないといけない手紙がある

 

君の部屋を1時間だけ


貸して欲しいと言った

 

(彼の家は旅館だったが満室で


騒々しいから.....と)

 

母も一時間ならばと承託し

 

そして


彼が帰った後


私の机の上に一通の手紙が


置かれていた

 



部屋を借りたお礼に始まり


それは


ラブレターで

 

「君はマティスの絵の女性のよう」

 

と書かれ

 

返信が欲しいと.....と

 

 

「 昨日またかくてありけり

 

今日またかくてありなむ

 

この命なにを 齷齪(あくせく)

 

明日をのみ思ひわずらふ 」

 

 

 

と藤村の詩で結ばれていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし私は返信を書かなかった

 

返信しないのが返事だと

 

 

 

 

後で思えば.....

 

それは随分と酷いことだった

 

それから彼の足は遠のき

 

ばったり来なくなった

 

 

 

 

 



彼が全く来なくなって半年くらい後


だったと思う

 

「僕はお見合いしました


結婚します...

 

今迄本当に楽しかったです


あの日々は忘れません


有難うございました」

 

 

母宛に手紙が来た

 

 

彼は思慮深く文学にもたけ

 

彼をググれば何でも答えられる

 

ような知識人だったし


人間的にも魅力のある人だった


 

 

然し何故か私は彼に恋愛感情が


湧かなかった

 

にも拘わらず

 

彼の結婚の話は虚しく

 

非常に寂しかった




私は返信もしない


結婚の意志もなく


彼を繋ぎ止めておきたい気持


何だったんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出のソレンツァーラ

エンリコ・マシアス

 

 

 

 

Matisse  赤い食卓

 

 

ところで


マティスの好きな彼の言った

 

「マティスのような女性」

 

後にも先にも人にそう言われたのは


一回きりだが

 

どんな女性だろうか?と思った

 

マティスの女性は沢山いて

 

 

 

 

Matisse  白い羽根帽子

 

 

 

でもこの方には全く似てないし



 

 

イヴオンヌ・ランズベール嬢

Matisse

 

 

 

 

この方のようにシャープでもないし

 

 

 

 

 

 

モール風衝立の前の娘達

Matisse

 

 

こんなハイソでエレガントでは


ないし



 

あ...

 

テーブルは私の家に全く


同じようなのがあります


 

外国航路の船の中で使われた骨董で

 

宇品港の船具屋さんで買ったものが.....

 

 

 




 

 


黒地の上の読書する女

Matisse

 

                                               こんな元気な方も違うし...

 

 

 

 

ルーマニア風ブラウス

Matisse

 

 

 

で.....

 

願望もいれて 笑

 

独断と偏見で

 

「たぶん.....この人」

 

 

と決め

 

わたしはあの日から

 

マティスの女になったのです

 

By

 

マティスの女

 

 

⁂初版より80%改訂版.....笑