夢みし頃 Blue Sky

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラス越しに消えた夏

★鈴木雅之

 

 

 

 

 

 

トマトのお姉ちゃん

 

たぶん私が生まれてからずっと

 

明確な記憶は三才の頃から

 

近所に父娘の家庭があり

父親は大工さん

娘さんは20代後半で

ふたりに

私は随分可愛がってもらった

 

実家はその大工さんが建てた

と母に聞かされた

 

その娘さんをトマトのお姉ちゃんと

呼んでいたが

トマトが沢山植えてあったのか

お姉ちゃんが丸顔だったからか

定かではない

 

 

 

 

 

幼稚園から帰るとお姉ちゃんは

連日私をトマト宅に連れて帰る

 

歌を歌ったり本を読んだり

おやつのチョコレートなどが

用意されていて

 

居心地のいい温室のような

トマト家であった

 

その内弟が生まれ

我儘を言って母に叱られると

 

私はトマト家の方へ向かって

大声で泣いた

 

するとトマトのお姉ちゃんが

疾風のように飛んできてくれた

 

 

その頃私の相手は大人ばかりで

幼稚園と従姉以外では

近所の子達とは殆ど遊ばなかった

 

それは小学校三年位まで続き

ある日突然

 

「明日からトマトの家には

行っては行けない」

強く母に禁止された

 

その理由が何故なのか

聞くはずの性格なのに

 

聞かないままに

それには何故か触れなかった

 

学校の往き帰りに

トマトの家の前を通ると

 

 

 

 

 

 

 

 

窓ガラス越しにトマトのお姉ちゃんが

こちらを見ていることがよくあった

 

その内お姉ちゃんは養子婿を迎え

その頃としては遅い結婚をした

 

 

 

 

 

高校生になってから母に

何故出入り禁止令を出したのか

はじめて聞いてみた

 

母は

「甘えさせて躾が出来ないし

子供は子供と遊ぶべきだし

あなたの為よ」

と言った

 

 

 

ふんふん

その時代に甘えの構造が

身についたのか

もともとの性格なのか

....笑

 

 

それから何十年も歳月は流れ

母が亡くなった年

 

トマトのお姉ちゃんは

道に迷いながら嫁ぎ先へ

私を訪ねて来た

 

「逢いたかったよ

大きくなったね」

 

子の親である私にそう言った

 

 

 

 

Blue Sky風  おむすび

 

 

又すぐに会いましょう

 

季節の変わり目

体調崩さないでね

 

By Blue Sky