ハリネズミカフェの扉の前には「休業中」と書かれた紙が貼られている。
コンコン
というノック音がハリネズミの耳に聞こえた。
ハリネズミが「はい。どちらさまですか?」と訪ねると、
「ナマケモノだよ!ハリネズミの嫌がる事はしないよ!
僕はハリネズミの友達だよ。僕は、働けなくて、お金が無くて美味しいお菓子を買ってこれなかったけど、いつも向かいのメイドカフェをなぜかライバル視して通常営業してるハリネズミが休業するなんて心配で。」とナマケモノがハリネズミに言った。
ハリネズミは扉を開けて、「ナマケモノ、ありがとう。まあ、とりあえず、中に入ってよ」とハリネズミカフェの中へナマケモノを迎え入れた。
ハリネズミは「ナマケモノが来てくれたんだから、紅茶とケーキを用意しなきゃ。
ナマケモノ、ちょっと待っててね」と言ってキッチンへ向かおうとした。
するとナマケモノは「いいよ。皆、働きすぎなんだよ。
皆、そんなに頑張らなくてもいいんだよ。
ハリネズミも、いつも頑張りすぎなんだよ。今日くらい休んでよ。」とハリネズミに優しく言った。
ナマケモノは「ハリネズミ、最近、元気なくない?どうかしたの?」と聞いた。
ハリネズミは元気が出ない理由を言おうかどうか悩んで、うつむいた。
ナマケモノは「ナマケモノで良かったら聞くよ。聞く事ぐらいしか出来ないけど。」とハリネズミに言った。
ハリネズミはナマケモノになら自分の弱さも見せても大丈夫かもしれないと思って、
「好きな人が大人になってしまったんだ・・・。
大人になってしまった○○さんなんて、本当の○○さんじゃないんだ・・・。
お金のために接待なんてしてる○○さんなんて本当の○○さんじゃない・・・。」とハリネズミは、つぶやくように言った。
ナマケモノはハリネズミの言った事を聞いて、
「別にさ、本当じゃないといけないなんて、ないんじゃないの?
正直で居て辛かったなら、嘘ついてもいいって僕は思うよ?
人間だから誰にでも損得を考えたりする醜いところは、あるよ?
嘘からの行動でも、その人が幸せで居るなら、それでいいんじゃないの?
だって、ハリネズミ、その人が好きなんでしょ?
皆が皆、まっすぐに好きな事だけ出来るほど強くないよ?
その人 命にかかわる危険な仕事してるわけじゃないなら、それでいいじゃん。
ハリネズミは、考えすぎなんじゃないの?
誰だって、大人になるよ?
落ち着いてよ。その○○さんって人 死んだわけじゃないんでしょ?」と言った。
ハリネズミは「うん・・・。でも○○さんが本当の○○さんじゃなくなった事は、
○○さんが死んじゃった事に近いんだ・・・。」と暗い顔で言った。
ナマケモノは、いつもの百倍は暗いハリネズミに、
どう接していいか分からず「そ、そっかそっか・・・。」と言って、
「ハリネズミ、テレビつけていい?気分転換にテレビでも見ようよ」とハリネズミにたずねた。
ハリネズミは元気なく「うん」と返事をした。
ナマケモノがテレビをつけると、
テレビの中では化け物に支配されて変わり果てた主人公に、
ヒロインが「○○君!私、○○君は本当は優しい人だって知ってるよ!
もとの○○君に戻って!」と泣きながら叫んでいた。
ハリネズミは「皆、現実という化け物に支配されて変わらなければいいね・・・」と、
あいかわらず暗い顔でつぶやいた。
ナマケモノは「やばい」と思って、「ち、違う番組見ようか」と言って、
チャンネルを変えた。
次の番組ではズーラシアンブラスが紹介されていた。
ナマケモノは「ズーラシアンブラスだ!打楽器奏者にナマケモノが居るんだよね!
僕もナマケモノだから、うれしいよ!」と喜んだ。
ハリネズミは「そうかい。ハリネズミは居ないんだね。でも、私もズーラシアンブラス好きだから、チャンネルは、そのままにしておいて。」と言った。
ハリネズミは「人間だから誰にでも醜いところがあるから、そこを嫌だって言ったら、
誰とも仲良くなれないかもしれない・・・。
私は、誰とも仲良くなれないかもしれない・・・。
こんな私と友達になってくれる人間なんて、居るわけがない。
今度のバンドサークル休もうかな・・・」と言って考え込んだ。
ナマケモノは「ハリネズミ、それは、良くない思想だよ。
人と関われば傷付いたり、傷付けたりする事ってあるよ。
皆と完璧に仲良く出来る人なんて居ないよ。
だって皆違うんだから、何をしてもらえたらうれしいかも、何をされたら嫌かも、
何が好きで何が嫌いかも、皆違うんだから、皆と仲良く出来る人なんて居ないよ。
皆と仲良く出来る動物も居ないよ。
だけど、ハリネズミ、自分から独りになろうとしちゃいけないよ。
諦めて孤独になろうとしちゃいけないよ。」とハリネズミに言った。
ハリネズミはナマケモノに「ありがとう。ナマケモノ」と言って、
「もう一回 バンドサークルに行ってみるよ」と言った。
窓の外の空には虹がかかっていた。
ハリネズミは「ナマケモノ!空に虹がかかってるよ!」と窓の外の空にかかる虹を指さした。
ナマケモノは「綺麗だねえー」とつぶやいた。