いよいよ、岩槻にて重陽の節句イベントが開催されます。
そのイベント企画のうちのひとつが
「創作人形作家・秋の展示会」になります。
こちらに参加するわたくし、二人組カーロ姉妹を搬入してまいりました。
私のようなポンコツが一日にする体験として情報量が超過しすぎ、
あっというまに私のキャパを超えました。
ゆえにとりとめのない書き方になりますが
貴重かつ不思議な体験としてレポっておきたいとおもいます。


私が搬入したお人形は二体。
ワンピースにヘッドドレス姿の二人ですので
ぜひともお運びになってみつけていただきたいとおもいます。

うちの子たちがお世話になっていますのが今回の搬入先
「人形の東久」様です。

人形の東久公式ホームページ
http://www.tokyu-doll.co.jp/
人形歴史館が併設された老舗になります。

その歴史館の館長が福田 東久先生ですが。
この日店舗で職務にあたっておられた先生、
私が搬入して人形をいじくっている間、
ず~っと背後から色んなレクチャーをしてくださいました。

「喋るマスターがいる」というのは噂にはきいていたのですが
本当に喋ります。
そのお話がなにげにお値打ち!
色々きかせていただいたのです。

まず、マスター東久は人形師です。
人形作家なのです。

店に近づくと入口のところにある大柄な和装の男子が目に入り
なにごとかとたじろぎますが、
これは桃太郎でマスターの作になります。


頭だけで3か月かかった、とのこと。
土台は木でできています。
そのうえから胡粉でしあげている。
近づくと、桃太郎と視線を合わせることができる。

 

 

めっさ、目があう

 


すごくなつっこいかんじの桃太郎。
いわゆる、たらしというのですか?
鬼退治にいったら、談合していいかんじに話をまとめてくれそうなかんじ。
鬼のほうに協調の姿勢がなかった場合、
そこで改めて腕力に訴えます。
勝ちますね。なんせでかいですし!
桃太郎は屈強ながら小柄な少年をイメージしていましたので
少し衝撃を受けました。
色がとても白く肌が綺麗。
爺様婆様からはとても大事にされているのだなとわかります。

衣装の色合いなどは私のイメージどおり。
地の色が松の緑で刺し色が朱赤オレンジ。
御供に連れている雉や猿犬もとても引き立っています。

そう、マスターは、私の憧れの職業

「山車の上にでっかい飾り人形を作る作家」でもあるのです。ひゅー!

そんなことで、人形の東久様、マスター作の看板息子桃太郎に迎えられて
ワンダーな店内にはいるのです(まず、靴を脱いでください)


店にはいったら左折、すぐ左手のところのショーケースに
秋の展示会が開催されています。
私の展示は下段にさせていただいています。

 



立派なケースで恐縮。

さらに奥にもまだケースがあるのですが
中には沢山のお人形です。
どこからみたらいいのか、大勢のお人形がひしめているのでした。

 

よーくみたらはじっこほうで盛り上がっていた3人組

 

 

きめこんでます

 

平安につくられた最古の人形、東Qマスターの手による復刻中

 

 

 

 

張り子!

 

羽子板の飾りがたくさんならんでいましたが

その途中、お人形遊びしているお人形がさりげなく鎮座

 

 

 

 

凄く楽しそうなおぼっちゃん

 

 

ちなみに、毛は伸びません。数百年前の人形。

(具体的にきいたのに失念)

めちゃくちゃ味のある人形。造型的にも印象的。

髪形おしゃれ。
 



これらのお人形は、
マスターのコレクションと、マスターの作品。
キメコミもあれば、張り子もあり。
そう言葉で言うのは簡単なのですが、それぞれの技術を
1人の人形師が極めている、と考えるとそれはとても凄いことです。
造型する、塗る、磨く、キメコミ、毛を貼り、彩色する、衣装を作る、着つける。
しかも、マスターはフニャっとしていてそんなテクニックの鬼にはみえないのです。
しかし発言の端々に、「この子、デキる!!!」という片鱗をのぞかせているのでした!

仕事中なので、マスターはたまにふらりとどこかへいかれてしまいます。
すると私がひとり展示部屋に残って作業することになるのですが
あるタイミングではっ、ときづいたら
部屋の中央あたりにおかれた机のところに、
ひとり誰かが座っているではないですか!

 

 

ごごごご挨拶遅れてすみませんでした

 


私、ご挨拶もしていない、とあわてて駆け寄ってみれば
なんとこちらもマスターの作品。
まだ作っている途中の「孫の節句に喜んで赤ちゃんを抱きよせている婆様」です。
雛人形などの段飾りの近くに、この婆様も添えて
雛飾りに奥行を出すためのしかけとしての人形になる予定。
今は着席してうつむいている、店番をしてくれているようにみえます。

自分は少女人形ばかり作っている、老婆人形に興味がないとおもっていたのですが
「色はあんたが塗っておいてよ」とマスターより指名していただき、
俄然興味がでてきました。もしかして、私たちコラボるかもしれない。

3月の節句も5月の節句もただのイベントだと私は思っていました。
でも歳をとってみると、自分を祝ってくれる人がいることも、
自分が誰かを祝えることも、それはとても幸せなことなのです。
どうでもいいようで廃れない、節句はやはりスペシャルなことだからです。
人形にする、というカタチでそれをとどめている。
不思議ですが納得できることなのだと改めて思いました。
そんな節句を数えきれないほど支えてきたマスターならではの発想で
婆様ドールが作成されています。出来上がりが楽しみです。
ただ、これは人形になってしまってはだめ。
雛人形を飾るための人形。飾りとしての人形。
このさじ加減。マスターのセンスがしのばれます。

そのあと、奥のケースの中をみていると
とても古いお人形。数百年も昔のものです!
少し御髪が乱れているわけですが
これは人毛ですか?と尋ねると、違う、とのこと。
おそらく、絹。もしくは麻の糸を髪にみたててあります。
なぜなら、人毛は、人形の髪にするには太すぎるから。
世の中に、人形、というとすぐに「毛が伸びる人形」「お菊人形」といって
ホラーに仕立ててくる人がいるのですが
なんでも人毛と思わないでいただきたい。
人形と髪の太さのバランス。人形師はこういうことも考慮にいれてこその職人なわけで。
絹糸や麻糸が伸びてもそれはそれで不思議ですが
怖がるほどのことではないな、とおもったりおもわなかったり。
昔ながらの手法で復刻にも力をいれているマスター。
お人形界への貢献は計り知れません。確かな技術と知識あってのことです!
というか、知識は技術と一緒にあってはじめて意味があります。それがマスター。


さて、店の二階には立派なお雛様があるというのでみせていただきました。
秋篠宮眞子様のお雛様です。
皇室から依頼をうけてマスターが腕を振るいました。
現在、メンテナンスのために東久様に御里帰りしているところです。
依頼書も一緒に展示されています。

 

御着替えつき



お雛様は職人が作りますので製作は手作業。
同じお顔は二つとないのでどのお雛様もそのお嬢さんだけの世界に一つの
特別なお人形です。
眞子様のお雛様は超特別なお人形ですね。ですよね。



みていいですよ、と許可をいただいたので
このあと 念願のお人形歴史館に足を踏み入れるわたくし。

長くなったので続きは待て次号。