現在ではほぼ見ることがなくなったS2です。


前述のS3より少し前、X10発売の少し後に販売していたモデルです。
S4の初期バージョンとほぼ同時に発売された様に記憶しています。
 
こちらは写真の様に、S3、S4とは異なり、X10を彷彿させる筐体形状を採用しています。
サイズ的にはX5より短く、X20と同等くらいの大きさです。
(上からX20、S2、X5)
 
そのため、装着感についてもX10やX5と同様、ストレスのない良好なものになっています。
 
ケーブルの材質はX10と同様のものですが、こちらの方が多少太くなっている様な気がします。
 
コネクタ形状はL型でケーブルへ繋がる部分の処理はX10などと同等。
 
重量は筐体素材がプラスチックなので軽量でX20の様に自重で徐々に抜け落ちてくる様なこともありません。
 
タッチノイズについてはX10同様と言ったところです。
 
ビルドクオリティは当時の値段(¥6980-)としては申し分なく、X10などと形状が似ている事もあって十分満足できるものとなっています。
 
さて、そのサウンドは、弾む様な低域とクリアでハッキリと主張する高域、それでいて埋もれない中域と言う、おおよそ文句のつけどころの無いクリプシュサウンドとなっています。
 
特に低域の表現はとても特徴的で、「弾力のある」低域をとてもわかりやすく表現します。
 
よくklipschのスピーカーはロック向き、などと言いますが、この機種においても同様で、レスポンスの良いキレのある低域表現は、ロックやハイテンポのJazzとの相性が抜群でハマると離れられなくなる様なサウンド。
 
低域に負けず劣らず高域の表現も特徴的。
X10に見られる様なとてもクリアでちょっと刺激的な、いかにもクリプシュと言うサウンド。
 
これら高域、低域が特徴的で、主張するのですが、自分を中心に広がっていくサウンドイメージや、高低に負けずに前面に出る中域はしっかりと維持されていて、聞いていて不満を感じることがなく、とても楽しいサウンドです。
 
低域と高域のコントラストがとてもはっきりしていて、今聞き返しても満足感の高いサウンドですね。
 
 
さて、このS2と言うモデルは、約1年後にS3が発売されたタイミングですぐにディスコンになっています。
故に、今現在では新品はおろか中古市場でもほぼ見かけず、入手はほぼ不可能な状況となっています。
原因を推察するに、恐らくはS4との棲み分けが上手くなかったのかなと思われます。
 
実際、S4と本機の聞き比べを行うと、そのサウンドは驚くほど似ています。
各製品に対するメーカーの志というかブレのなさにはおどろかされます。
詳細に比べれば、ドライバーの差(S4の方がサイズが大きく、S2がシングルコイルなのに対してS4はデュアルコイル)からくるサウンドの余裕感だったり、余裕からくる解像度だったりに差異はありますが、並べて比べなければわかる人は少ないでしょう。
 
形状からも、S2はXシリーズのエントリー機、S4はダイナミックドライバーの新機軸とメーカー側は考えていたのかもしれません。
 
しかしながら、両者には使い分けできるほどのサウンドの差は無く、明確なのはデザインの差のみで値段は1.5倍ほどと、ユーザー側からはチョット
選び辛いモノでした。
その様な状況下で、きっとダイナミックドライバー型はS4基軸で売っていく様に戦略が変わったのでしょう。
 
そこで出来上がったのが、S4とデザイン上からもシリーズ感が明確で、S2のために作ったドライバーの流用で低価格版としたS3が登場すると言った筋書きが透けて見えます。
 
S3の記事で散々ディスりましたが、S2で完成されたサウンドは筐体を変える事で正直台無しになってしまいました。
 
と、そんな予想から、それぞれを聴き比べると、S3かわいそうな子、的な考えになってしまいますが、型式上同一ドライバーであってもS2とS3はビックリするほどサウンドが違います。
S2は超高級と言うクラスを知らなければメイン機に据えてもいけるのでは?と思うサウンドです。
 
奇跡的にどこかで出会ったなら、手に入れてみるのも面白い機種かなと思います。
 
最後に、こちらのモデルは「パワフル」「エネルギッシュ」と言ったサウンド傾向で解像度はそこそこと言った感じなので、組み合わせるプレイヤーはクール系で解像度の高いモデルとの組み合わせがいい感じです。
私のところでは、AK100やグランビートがマッチする様です。