2021年2月の読書メーター | 無精庵徒然草

無精庵徒然草

無聊をかこつ生活に憧れてるので、タイトルが無聊庵にしたい…けど、当面は従前通り「無精庵徒然草」とします。なんでも日記サイトです。08年、富山に帰郷。富山情報が増える…はず。

 2月のメインは何と言ってもシャーロット・ブロンテの「ヴィレット」。ブロンテを知る、至上の読書体験となった。ダンテの「神曲(地獄篇)」も長年の念願の書。リンダ・リアによる、「沈黙の春」の作者レイチェル・カーソン伝である「レイチェル」を再読できたのも嬉しかった。

 

2月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:5558
ナイス数:6113


ビッグ・サーとヒエロニムス・ボスのオレンジビッグ・サーとヒエロニムス・ボスのオレンジ感想
「1934年に『北回帰線』をパリで出版。その大胆な性描写ゆえにアメリカで発禁処分となった」ミラーだが、LAとサンフランシスコのちょうど中間に位置する風光明媚なビッグ・サーにある種の理想の地、40から50年代後半までのビッグ・サー一帯はほとんどが原生地帯だったようで、人影も疎らで、楽園を見出したのかもしれない。ジャック・ケルアックやリチャード・ブローティガンも訪れたことがあるとか。
読了日:02月28日 著者:ヘンリー・ミラー


くそったれ!少年時代 (河出文庫)くそったれ!少年時代 (河出文庫)感想
詩人ブコウスキーは、1920年ドイツの生まれ。真珠湾への日本軍の奇襲攻撃の臨時ニュースを聞くまでのほぼ二十年間が描かれている。誕生の記憶が冒頭に書かれているが、そのことにまず衝撃を受ける。三島由紀夫の小説と比べてみたいと一瞬思った。その後、一家でロサンジェルスへ移住。当時のドイツはヒットラーの時代。ドイツ人の一家がどんな偏見下にあったか想像が付こうというもの。
読了日:02月27日 著者:チャールズ ブコウスキー


古代出雲への旅 幕末の旅日記から原風景を読む (中公新書)古代出雲への旅 幕末の旅日記から原風景を読む (中公新書)感想
16年前に刊行。古書店で発見。幕末の旅に随行しちゃう! ということで読みだした。
「出雲国風土記」には、神社390社が載っている。出雲はやはり神々の国、神話の国だ。神在りの国だ。神社に大社に大明神が数知れず。歩き回るだけで神々を感じそう。
読了日:02月23日 著者:関和彦


仙界とポルノグラフィー仙界とポルノグラフィー感想
『ユリイカ』一九八八年一月号から十二月号まで連載された一連のエッセイから成る。書名はその中のエッセイの題名がテーマを一番現すと、著者が選んだ。アントナン・アルトー、ミルチャ・エリアーデ、カール・ケレーニイ、スーザン・ソンタグ、ゾラ、ジョゼフ・ニーダム、パノフスキー、アンドレ・ブルトン、ボルヘス、マルコ・ポーロ、カール・ユング、レオ・レオーニetc.らを参照していることで本書の性格が察せられるだろう。
読了日:02月21日 著者:中野 美代子


レイチェル―レイチェル・カーソン『沈黙の春』の生涯レイチェル―レイチェル・カーソン『沈黙の春』の生涯感想
今回は日に20頁から50頁ずつ、レイチェル・カーソンの困難な人生に寄り添うようにゆっくりじっくり読んできた。感想めいたこともしばしば呟いてきた。科学者の目と文学者の心を持つ稀有な存在。彼女の主著は、ストウ夫人の手になる『アンクル・トムの小屋』と共にアメリカにおける時代を画する著作と当時(も今もだが)評価された。
読了日:02月19日 著者:リンダ リア


昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー 671)昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー 671)感想
冒頭に一言。戦前の日本を理解する一端として、本書はお勧め。読みやすいし読んで面白い…というのは不謹慎かもしれない。旧陸軍や海軍の軍人官僚の狭隘な視野に愕然とする。ミッドウエーにガダルカナルにインパールにノモンハンに。唖然 愕然 陸軍も海軍も。最後は特攻という自爆攻撃。悲惨だ。でも、有識者もマスコミも国民も情けない限り。根拠のない自信。責任は回避。なるほど、敗戦の総括なんてやりたくないわけだ。公家の大臣や総理も唾棄すべき。こんな連中が指導者だったとは。軍人が閣僚に入ることの危険さだけは認識しておきたい。
読了日:02月17日 著者:半藤 一利


ヴィレット(下) (白水Uブックス)ヴィレット(下) (白水Uブックス)感想
先に、「常識的な小説の概念(吾輩の思い込み)を超えるというか、覆すような作品。自伝風だからなのか。でも、虚構作品のはず。ある種個性の強い…強すぎる主人公の女性とヴィレットという異国の町の寄宿学校の、主人公に負けず劣らず奇矯な教師との絡みが波乱含みの予感で、面白くはある。イギリス風のゴシック小説の気味も色濃くなって、ますます目が離せない」などと呟いた。偶然の出会い(再会)を露骨に使っていて、普通なら辟易するところだが、そこはシャーロットの過剰なほどの心情描写や情景描写に圧倒され、読者の疑心など圧倒される。
読了日:02月13日 著者:シャーロット・ブロンテ


日本の下層社会 (岩波文庫 青 109-1)日本の下層社会 (岩波文庫 青 109-1)感想
つい先日読んだ『女工哀史』に続くもの。明治から戦前の日本社会を理解するには必読の文献だが、しばしば書名を目にし、どこか読んだような気がしていた。日本人として読まないのは後ろめたい気持ちがする本の一冊。「女工哀史」は大正時代の紡績業に携わる女工の研究がメイン。本書は明治31年頃までに書かれた。富国強兵と中央集権、且つ人口が政府も困惑するほどに増え、本土から北海道へ、南米へと開拓民や移民が奨励され、戦争で民衆を死地に追いやる圧力があったような気がする。産業も貧困層を消耗品のように酷使する。
読了日:02月12日 著者:横山 源之助


神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)感想
仕事の合間に読んできたのが勿体ないような作品の数々。我輩としては、長編小説『タタール人の砂漠』でぞっこんとなった作家。「魔術的幻想文学の書き手として世界的に名高い幻想味のある作家というが、確かに、「われわれが無意識のうちに心の奥底に抱えている心象風景を、類まれな感性でえぐりだし、容赦なく突きつけ」てくれる。カフカ的不条理というほどではなく、読後読み手を震撼とさせるほどではない。ヒッチコック辺りが映像化したら面白いかもという娯楽的配慮も欠けてはいないという印象を受けた。
読了日:02月10日 著者:ディーノ ブッツァーティ


唐詩新選 (新潮文庫)唐詩新選 (新潮文庫)感想
陳 舜臣は、「本籍は台湾台北だったが、1973年に中華人民共和国の国籍を取得し、その後、1989年の天安門事件への批判を機に、1990年に日本国籍を取得している」「東洋史学者宮崎市定の門弟に師事、宮崎の孫弟子にも当たる」「初期の作品はミステリーが多」かったが、「1967年『阿片戦争』などから中国の歴史を題材にした作品を多く書き、日本における「中国歴史小説」ジャンルを確立し、多くの読者を持っている」とか(「Wikipedia」より)。
読了日:02月08日 著者:陳 舜臣


ヴィレット(上) (白水Uブックス)ヴィレット(上) (白水Uブックス)感想
自伝的要素の強いものだという。小説的なドラマチックな展開は期待外れ。尤も名もない地位もない少女の立身の物語として読めないことはないが、ややまだるっこしいかもしれない。心理分析の辛辣さと、下手すると陰湿とも誤解されかねない場面も多々見受けられる。それでも読み続けられるのは、折々の自己分析や情景描写に嗅ぎ取れる上質の孤独感だろう。あくまで己の知性と感性で考え尽くすその姿勢が、なぜそこまで孤立志向なのかと哀れの感を抱きつつも、稀有なる存在なのだと納得させられて、読み入ってしまうのである。さて、引き続き、下巻へ。
読了日:02月04日 著者:シャーロット・ブロンテ


神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)感想
面白いとは言いづらい。いかにもキリスト教(主にカトリックか)のイデオロギーに偏している。それ以上に、ダンテの偏見までは言わないが、教皇らへの怨念に満ちた復讐心や、キリスト教の教えに反する古代ギリシャ哲学者や思想家への懲罰せんとする執念が露わ。宗教面での思い(特に一部の教皇らへの憎悪)は、ボッカッチョの『デカメロン』でも共通している。が、ダンテは、ボッカッチョとは比較にならないほどに強硬で妥協の余地がない。疑問に思うのは、犯した罪に見合う罰はありえるのかという思い。
読了日:02月04日 著者:ダンテ

読書メーター