日本橋三越の真正面のビルの地下一階に赤坂に本店がある『ざくろ』の室町店があった。

この『ざくろ』は、関東で最初の“しゃぶしゃぶ”の店として知られる。
若かりし頃は、人形町の『今半』と並び牛肉が食べたい時の憧れの店であったが、今では牛肉を食べたいとも思わないのですっかり忘れていた。

行燈に『ざくろ』とかかれたものを見て、懐かしさを覚え入ってみることにした。

2時を過ぎていたので、店内は客が少なく仲居さんのほうが目立っていたが、広い空間なので落ち着いた雰囲気がある。

定番の「すき焼き定食」を頼み、壁には版画が数点かけられていたので見渡した。
忘れていたが、この店のオーナーは棟方志功が大好きだったのだ。
『ざくろ』と棟方志功はセットになっていて赤坂店にも掛けられていたっけ。
朱印が押されサインもあったので、価値ある刷りのようだ。

前日飲みすぎていたので感受性が鈍く、棟方志功の絵に感動するまでには至らなかったが、絵に囲まれての食事は“ほっこり”する。
若い頃は、牛肉もさることながら棟方志功の絵に感激したような気がするが、鈍くなれば鈍くなるものだ。

(写真)ざくろのすき焼き
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すき焼きはビールのつまみとし、ご飯と赤出汁だけを先に食べたが、この赤出汁が美味しかった。化学調味料を使っているのか使っていないのか良くわからなかったが、ダシのコクがたっぷりとでていてこれだけでご飯が食べれた。

すき焼きは伝統的なすき焼きで可もなく不可もなかったが、やはり私には無縁に近いものになっていた。砂糖が入ったすき焼きが食べたかったあの若かりし頃のご馳走が今ではご馳走ではない代物になっていた。

味的には子供が喜ぶ味だが、値段がちょっと問題なので、すき焼きはいずれ消える運命にあるのだろうか?
或いはすき焼きを売りにしている日本料理店が消えるのだろうか?
懐かしい行燈とザクロと棟方志功の絵は残って欲しいなと思いつつ、ロビーでタバコを一本吸ってから銀座に向かった。