目を閉じている。

暗い視界の端に、
何かがひらひらしている。


記憶の切れ端か、
悩みごとの端っぱか。



ひらひら、ひらひら。



気になるから引っ張ってみると、さっきまで眠っていた間に見ていた夢の内容を思い出す。
ああ、夢であの人に会ったんだったな。



また違うひらひらを掴む。



昨日の祭りで、主人を慕う古い後輩に会ったな。
彼は主人に偶然会って、とても嬉しそうだった。



…ヨソじゃあんなに慕われる人だったのか、うちの旦那は。うちん中じゃあ可哀想だな…






ひらひらは次から次へと、暗い端に見え隠れし…眠れない。
朝日が昇った。


セミが鳴き始めた。





ひらひらは、明るみと共に消え去った。