堤防から家まであなたは送ってくれた。天気は晴れ。あんなにきれいなスカイブルーは他に記憶がない。
僕は20インチ、あなたは26インチ。
サイズの違う自転車だったけど、ゆっくりあなたは家まで送ってくれた。
とある子供が遊ぶイベントがあって、早朝から近所の子供たちもたくさん参加して
堤防沿いの広場で遊んでいた。
そのときまだ9歳。朝9時を過ぎた頃帰りたくなり、もう帰ると親に伝え、
帰ろうとした。そのとき、「私が一緒に帰ってあげる」と声をかけてくれた人がいた。
それがあなただった。
いつも怒ることはなく、優しくて、笑うと目が細くなる女性だった。なにより優しい声も。
そこから自宅までは自転車で10分くらいの距離。
坂もなく平坦で、途中に交通量の多い
国道があり、そこを心配してくれたのかもしれない。
何を話をしたか覚えていないが、その時の気持ちは覚えている。
「ゆっくりすすまなきゃ」「遠回りしたい!」生意気にも「このまま家まで着かなきゃいいのに」なんて
あなたと一緒に二人で過ごした時間はそれが最初で最後。きっとあなたは僕より大きかったので
好きな人もいたでしょうね。
でも、僕にとってあのドキドキ感はあなたが教えてくれたものです。
短気な僕もあなたがそばにいてくれると笑顔しか出なかったものです。
いまさらあのときに戻りたいとかそういう気持ちでこんなことを書いたのではない。
自分の子供たちもきっと同じ気持ちを感じるときが来る。
また、うまく表現ができなくてイライラすることもあるだろう。
誰もが辿る思い。そういったことを乗り越えて今がある。
たった10分だけの思い出だけど、ずっと覚えてることもある。
他人にどんな影響を与えているかは計り知れない。
きっとあなたはまさか自分が僕をそんな気持ちにさせていたとは思っていないだろう。
それでよかったんだよ、9歳の僕へ。