舞台演劇「物乞いのマルコ」
作者:小唄 楼

マルコ……女性(12)
花の精……女性(?)
少女……女性(8)
パン屋……男性(45)
町民A……女性(13)
町民B……男性(12)
町民C……女性(12)



○街中
照明をつける。
マルコがボロボロの服を着て、袋を引きずり一人歩いている。


町民A「物乞いのマルコが歩いてるぞ!」

町民B「きっとまたパン屋でパン屑をもらうんだ!」

町民C「卑しいやつめ!この町から出ていけ!」

町民ABC『出ていけ!出ていけ!』


○パン屋の裏口
マルコ「……すいません」


パン屋が登場。


パン屋「マルコか。ちょっと待ってておくれ」


パン屋が袋を受取り、パン屑が沢山入った袋をマルコに渡す。


パン屋「いつもも沢山木苺を採ってきてくれてありがとう。こんなものしか渡せ

ないが……」

マルコ「いえ、助かります」

パン屋「……そうだ、マルコにこれをあげよう」


パン屋が懐から花の種を取り出す。


マルコ「これは……なんですか?」

パン屋「花の種だよ。この鉢植えもあげるから、良かったら育ててごらん」

マルコ「ありがとうございます」


暗転。
パン屋が退場。


○公園
マルコが鉢植えを見ている。
照明をつける。


マルコ「何が咲くのかな……楽しみだな。おやすみ、お花さん」


暗転。
間を空けて花の精が登場。
マルコと花の精を照らす。


花の精「マルコ、起きて下さい」

マルコ「うーん……、君は?」

花の精「私はこの花の精です。私を植えてくれてありがとう。そのお礼に、マル

コの願いを何でも一つ叶えましょう」

マルコ「僕の願いをかい?」

花の精「はい。あなたが望めば大金持ちにもなれますし、不老不死の超人にもな

れます。さぁ、何を望みますか?」

マルコ「そうだな……」

花の精「遠慮する事はありません。なんでも言ってください」

マルコ「……やっぱり、いいです」

花の精「そんな、何をおっしゃいますか!」

マルコ「僕は特に欲しいものもないし、今の生活で満足してます。だからいいん

です」

花の精「そうはいきません!こちらも恩義を果たさなければ、花の精の名が廃り

ます!だから、何か!」

マルコ「……それじゃあ」

花の精「なんでしょう!」

マルコ「……友達が、欲しいです」

花の精「友達……ですか。わかりました」

マルコ「本当にお願いが叶うんですか?」

花の精「それはもちろん!目が覚めるのをお楽しみに」


暗転。
花の精が退場。
マルコが目を覚ます。
照明をつける。


マルコ「朝……か。あれは夢だったのかな?あ……花が」


鉢植えから花が咲いている。


マルコ「わぁ、綺麗だなぁ」

少女「わぁー綺麗!」


少女が登場。


少女「綺麗なお花!お兄ちゃんが育てたの?」

マルコ「え、うん。そうだよ」

少女「綺麗だねー」

マルコ「うん、そうだね。……実はね、この花には精霊が住んでいるんだ」

少女「精霊!?精霊さんが住んでるの?」

マルコ「うん」

少女「そのお話聞かせてー」

マルコ「いいよ。あのね……」


暗転。