元日の早朝、突然電話が鳴った。
父からだ。
体調が悪くて
救急病院へ行くと言う。
お正月だからか、
タクシーがつかまらない。
父に救急車を呼ぶように伝え、
私は夜明け前の闇の中、
走って病院へ向かった。
我が家の方が病院に近かった為、
救急車より先に病院に着いた。
冷え切った待合室に一人、
父の到着を待った。
お母さんお願い。お父さんを守って。
大丈夫!大丈夫!
心の中で繰り返した。
しばらくして、
一組の御夫婦と車椅子に乗った
お婆さんがやって来た。
お婆さんのおでこには、
大きなガーゼが貼ってあった。
看護師さんとの会話では、
入所していた施設で転んで
頭を打ったらしい。
ごめんなさいね。
ごめんなさいね。
処置室に運ばれながら、
何度も何度も看護師さんに言うお婆さん。
娘さんだと言う奥さんが
待合室で突然泣き出した。
私がお母さんに会いたいなんて思ったから、
こんな形で会うことになったんじゃないかな。
寄り添い慰める旦那さん。
それを聞いて私もドキッとした。
私も離れて暮らす父を常に心配し、
支えたいと思っていたからだ。
余計な心配がこんな現実を
引き寄せたのかもしれない。
奥さんの気持ちが痛いほど分かった。
私が居ようが居まいが父は大丈夫。
父は強い男だ。心配無用。
父は父の人生を、
私は私の人生を全うするだけだ。
そう心の中で繰り返した。
検査の結果、幸い異常はなかった。
原因が分からないままだが、
その後体調に異変が出る事はなかった。
そして、3日の今日。
ビニールシートで感染予防対策をし、
我が家でお雑煮を一緒に食べた。
母から引き継いだ味を父は喜んでくれた。
以前、同居話を持ちかけた事があるが、
まだ大丈夫!とその時は笑っていた父。
この距離でいいのかもしれない。
バイクにまたがり、後ろ手に手を振る
父を見送りながらそう思った。
絶対大丈夫。
父も。私も。
お互い強く、
元気に生きていこうね。![]()
ヘルメットに反射した日差しが
眩しかった。