幼稚園の頃から中学生まで、9年くらい習っていた。
当時は本当に嫌々で、親にやらされている感じだった。
ピアノの練習を全然しなくて、レッスンに行って怒られて泣く。次は必ず練習しますと言って、またしない。というのを繰り返していた。
だが「ピアノやめる?」と聞かれると「やめたくない」と答えていた。

そんなピアノも高校受験を理由に、なんとなくやめてしまった。
そして大人になった今、通っているジムで当時のピアノの先生の偶然再開して、長年のブランクがありながらも再び通うことになった。

アップライトのピアノは家にあるのだけれど、近所迷惑になるから弾けない。ということで、ありがたいことに先生から電子ピアノを譲っていただいた。
電子ピアノは普通のピアノと音も全然違うけど、タッチが軽くて弾きやすくて、夜でも弾けるからたくさん練習できる。
おかげさまで、ほとんど毎日ピアノを弾いている。

子供の頃は「弾きなさい」と言われても全然練習しなかったくせに、今では家族に「うるさい」と言われるほど、自らせっせと弾いている。
あの頃と違って、好きな曲を自由に弾けるからかもしれない。
子供のうちは上手くなるために与えられた曲を弾かなければいけないけど、今は自分の好きな曲を選んで弾くことができる。
それが本当に楽しい。

新しい楽譜を見にいくのも楽しいし、次はどの曲を弾こう、と選ぶのも楽しい。
全然興味のなかった最近流行りの曲でも、ピアノで弾くとどんな感じになるのだろうと気になったりする。

大人になってからの趣味ほど贅沢なものはない。
もしも子供の頃ピアノを習っていなければ、今から始めてもここまで弾けなかっただろうなと思う。
そう思うと、あの頃は嫌だったものの、ピアノを習わせてくれた親には本当に感謝だ。

お酒を飲んでから弾くと、ぐちゃぐちゃになる。
晩酌をしてから、ぐちゃぐちゃのピアノを雑に弾いた翌朝、階段でこけて腕を骨折した。
しばらくの間、ピアノが弾けなかった。
もしもこのまま、一生ピアノが弾けなかったらどうしようと不安になった。
弾けないと、余計に弾きたくてたまらなくなる。
そしてわたしはこんなにもピアノが好きだったんだと実感した。

無事に腕が治った今、ちゃんと丁寧に、一音一音気持ちを込めて弾こうと思えた。
両手をつかってピアノを弾けるこの幸せを噛み締めて、誰かの心をぐっとさせられる演奏をしたい。