あらすじを読んで、
昔の恋人から手紙が届いた、という時点で
これは結婚前に婚約者がいるにも関わらず
昔の恋人と浮気するパターンの物語か、と思った。

しかし見事に裏切られた。

なぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去ってしまうのか。
セックスに愛はあるのか。
愛するから、結婚するのか。
相手が自分のことを本当に愛しているかなんて
一体どうやって解るのだろうか。
愛するとは、何なのか。

現代社会の恋愛において
残酷でありながらも、とても相応しい物語であった。

人は、愛した瞬間、初めて愛される。
もはや、“愛する”の意味もよく分からなくなるが。



「ほんどの人の目的は愛されることであって、
自分から愛することではないんですよ」

「相手の気持ちにちょっとでも
欠けているところがあると、
愛情が足りない証拠だと思い込む。
男性も女性も、自分の優しい行動や
異性に気に入られたいという願望を、
本物の愛と混合しているんです」

「それが愛でなかったとしたら、
どんな感情をそう呼べばよいのだろうか。」

「人は誰のことも愛せないと気づいたときに、
孤独になるんだと思う。
それって自分を愛していないってことだから」

「私たちは愛することをさぼった。
面倒くさがった」

「愛を終わらせない方法はひとつしかない。
それは手に入れないことだ。
決して自分のものにならないものしか、
永遠に愛することはできない。」


これらは私が、この小説の中で刺さった言葉達だ。
川村元気氏のこれらの言葉達は
愛することをさぼってしまっている
現代の我々にとって、あまりに残酷で
真実である言葉のように思える。