図書館でたまたま手に取った本だが、面白かった。

 

村上春樹氏の小説を読むのは『1Q84』、『色彩を持たない田崎つくると彼の巡礼の年』

以来の3作目であった。

と言っても、『1Q84』は2巻までしか読んでいない。

 

私はまだ彼の作品を、この1冊を入れて3冊しか読んでいないが、

彼の作品に対して毎回思うのは、クライマックスのあっけなさだ。

結局どうだったのか、どのような結果だったのか、というのを

はっきりさせずに意味深に終わってしまうところが、

なんとも言えない気持ちにさせられる。

そしてまた、なんとも言えない余韻を残してくれる。

 

この本は、彼にすれば珍しい短編小説集であった。

そしてどの物語も、クライマックスがはっきりしていなくて、

だからこそ、私は読み終わった後も非常に余韻に浸らされた。

 

そしてこの短編小説のどれも、”普通ではない”というか、

少しイカれチックな登場人物が登場する。

しかし、あまりに人間らしくて、どこか共感できるような感じがして、

とても良かった。

 

さて。

ここから1作品ずつ、私の読書感想文を少し書いていこうと思う。

 

 

 

『ドライブ・マイ・カー』は、亡くなった妻のかつての浮気相手であった男と

あえて仲良くなる主人公の家福が登場する。

職業が俳優である彼は、私生活でも”演じる”のである。

彼は、妻がずっと浮気をしていたことを知っていた。

それも、相手は常にいて何人か変わっていた。

しかし、何も知らないふりをして、妻と平和に生活してきた。

そんなの、私だったら絶対に耐えられない。

愛する人が、違う相手と寝ているだなんて、

そんな事に気が付いた時点でその愛は冷めてしまうだろう。

 

しかし家福は、俳優として気付かないふりを演じる。

やがて妻は病気で亡くなるが、亡くなった後、

彼女が最後に付き合っていたと思われる年下俳優に近付き、

なぜ彼女がその相手を選んでいたのかを探そうとする。

しかし、そのはずであったが結局なぜかその俳優に心を許し

飲み友達として仲良くなってしまう。

もちろん、私はこの時点でその感情が理解できないが。

 

家福のドライバーとして雇われた女性である”みさき”の最後の台詞、

『奥さんはその人に、心なんて惹かれていなかったんじゃないですか』

『だから寝たんです』

『女の人にはそういうところがあるんです』

『そういうのって、病のようなものなんです』

などという言葉に、私はなるほどなと思った。

結局、人間なんて他人の考えることなんていくら考えたって分からないのだ。

 

それにしても、村上春樹氏は、複雑で謎めいた女心を、

非常によく理解されているというか、知り尽くされているというか。

この本に挿入されている作品を全て読み終わった上で、私はそう感じた。

私自身、恋愛相談でもしてみたいものだ、と思ってしまうくらいである。

 

 

(②へ続く)