日本海軍よもやま話 第14回目は「海軍士官の隠語」のお話です。
海軍の映画やドラマで「ケプガン」や「インチ」、「レス」・・・などの言葉を耳にしたことがあるかと思います。
英語に由来する隠れ言葉が多い海軍ですが、海軍士官の間だけにしか通じないコトバの数々の紹介です。
太平洋戦争中の英語は敵性語として教育界、スポーツ界、当然陸軍側からも排除されました。
海軍の専門用語には英語そのものや英語を略したものが多いのをご存じでしょうか。
それでも太平洋戦争中はそのまま和訳に置き換えず使用していました。
それは英語でなく「海軍用語」として長年定着していたからです。
1872年(明治4年)に海軍省が設置され、それ以降はオランダ海軍からイギリス海軍を模範として英国人教官から教育を行い参考書等も一部は英語でした。
当然、軍艦の建造も大型艦は英国に受注していましたので操艦等のマニュアルは全て英語でした。
この頃は敵性語という言葉がない時代でした。
ちょっと前置きが長くなりましたが、それでは隠語の話に戻ります。
明治期の海軍士官の間に和製英語や日常会話にも英語の単語を使ったり茶目っ気もありました。
そのうち長い単語や和訳や英訳を独自に編み出し、一般人(娑婆の人)に分からない独自の世界を作り上げました。
それではいくつか例を挙げますね。
海軍士官が利用した料亭の隠語
スコ:水交社(海軍士官専用の社交場で旅館や喫茶店も併設)
レス:レストラン(レストランの略)
パイン:横須賀の小松(松は英語でパイン)
詳細は日本海軍よもやま話 第4回目「海軍御用達パイン」をご覧ください。
ロック:呉の岩越(岩は英語でロック)
フィッシュ:横須賀の魚勝(魚は英語でフィッシュ)
ホワイト:舞鶴の白糸(白は英語でホワイト)
アルファ:佐世保のいろは楼(「いろは」の「い」はギリシャ語のアルファベットの最初のα)
ゴーイング:横須賀のいくよ(行くよのgoingから)
女性に対しての隠語
ピーハウ:遊郭(遊郭、娼婦のProstituteのPと「ハウス」の略)
エス:芸者(SingerのS)
ホワイト:素人の女(しろうとのおんな)
ブラック:玄人の女(くろうとのおんな)
ナイス:美人(niceナイス)
エンゲ:婚約者(エンゲージの略)
ルッキング:お見合い
コーペル:お嬢さん、令嬢(娘 → ドーター → 銅 → copper → コーペル)
インチ:馴染みの芸者(親密:インチメイトから)
アフター:未亡人(後家から)
例、
〇〇大尉のエンゲは海軍省次官のコーペルでナイスでスコでルッキングしたそうだ。
訳すると・・・
○○大尉の婚約者は海軍省次官の娘で美人で水交社でお見合いしたそうだ。
単語での隠語
F:ふられる
M:もてる
N:のろける
BA:婆(ババア)
BU:ブス
KI:キス
KA:かかあ、妻
例、
〇〇少佐のKAは元アフターでBAでしかもBUだからKIなどしたこと無いそうだ。
訳すると・・・
〇〇少佐の妻は元未亡人で婆でしかもブスだからキスなどしたこと無いそうだ。
特に女性に対しては隠語を使い、街中で使っても一般人にはわからない暗号のようなものでした。
他にも多く海軍隠語があり、このブログ記事では掲載出来ない用語もありますので、そこは興味ある皆さんの方で調べてみてくださいね。
さて、今日5月27日は海軍記念日です。
1905年(明治38年)5月27日の日本海海戦の勝利を記念して昭和20年まで続きました。
次回は15回目、「日本海海戦のエピソード」についてです。
この日本海海戦でのエピソードをいくつか紹介したいと思います。
では次回まで・・・