私が中学生の頃ですから昭和49年だったと思います。
自動車整備業をしている知人から、自動車の排気ガスをクリーンにする装置の商品説明会があるから一緒に来てくれないかと、親父に電話がありました。
当時の我が国に於ける自動車排気ガス規制は、アメリカのマスキー法ほど浸透してなく、各メーカーとも適応車種の開発中でした。
親父は仕事だったので、母と私とその知人で行くことにしました。
 
会場は商業ビル内の小さな会議室でした。
室内には年輩の人や主婦、労務者など自動車産業にはまったくと言っていいくらい無関係な人達で満員でした。
やがて開始時間になり商品会社の人が商品説明を始めました。
商品名「APOマークⅡペーパーインジェクター」と言うものです。
商品は梅酒を漬ける位の大きさのガラス容器と専用チューブから成り立っており、これを自動車のキャブレターとガソリンタンクの間にセットし、専用の添加剤(省エネ用液剤)と水道水を混ぜ、更にその混合液とガソリンをキャブレターに送る装置です。
これにより排気ガスがクリーンとなり燃費も向上するというものです。
 
 
(ネットより)
 
 
商品説明が終わると、アメリカでいかに「APOマークⅡペーパーインジェクター」が使われているか映写による宣伝が始まりました。
映写ではアメリカ(ロスアンゼルス?)の車の殆どがこの装置をつけている場面です。
この装置を付けた車は、リアウインドウに専用ステッカーを貼るようになっています。
だから映像には、このステッカーを貼った車ばかり走っていました。
それでアメリカでは既に採用されているんだな~と私は思いました。
数年後、このステッカーは車ではなく私のエレキギターに貼ってました。
 
一通りの商品説明が終わると、その販売方法と会員制の説明がありました。
商品は親会員から購入するので自動車部品屋にはありません。
親会員は入会した子会員に商品を販売し、子会員はそれを孫会員に販売して収益を得るわけです。
会員は商品を一般の人に売るか、更に会員を増やし商品を販売すれば、また、親になればなるほどマージンが入ってくるという訳です。
すなわち子会員が増え孫会員もひ孫会員も増えれば増える程莫大な利益になるのです。
1セット10万円の商品ですから。
この話を聞いて算数のわかる方ならもうお判りですね。
一種のネズミ講のようなものです。
算数のねずみ算式計算をすれば、会員の増え方がたちどころに地球人口を超えてしまう結果になってしまいます。
 
やがて数名の会員が壇上に並びました。
一人一人が「APOマークⅡペーパーインジェクター」を販売し、何人の子会員や孫会員が増えたか説明し始めました。
毎月の収入が〇〇万円もあると自信高らかに説明するのです。
でも、誰一人として「APOマークⅡペーパーインジェクター」の性能や低公害について話す人はいません。 私はその性能について一番聞きたかったのです。
その頃の私は高校進学として工業系か商業系か決めかねてた頃です。
特に機械系には興味がありました。
私はこの説明会で二つの疑問点がでました。
一つはアメリカでは既に「APOマークⅡペーパーインジェクター」を取り付けた自動車が走り、排気ガスクリーン化に貢献しているのに、日本の通産省(当時)や各自動車メーカーは推奨したり導入しないのか?
二つ目はガソリンに専用添加剤と家庭の水道水を混ぜた混合気をエンジンに送り込んでも大丈夫なのか?
この二つの疑問は、数年後にわかることになるのですが・・・・
 
この頃のガソリン価格をネットで調べました。
東京の小売価格で1リットル当たり昭和48年は65円、49年は100円でした。
僅か一年足らずでかなり高騰したかお分かりだと思います。
その後、親父も知人の勧めで1セット10万円で買わされました。
「APOマークⅡペーパーインジェクター」は市内の指定整備工場に車を持ち込んでエンジン付近に取り付けました。
ですが、排気ガスがクリーンになっているのかわかりません。
また、車の燃費が良くなったとう話は親父からは聞いていません。
 
その後もAPOジャパン社は会員を増やし業績も伸ばしていきました。
しかも自動車レースでは、スポンサーとなり「APOマークⅡペーパーインジェクター」のシールを貼った自動車が 登場するようになりました。
 
 
(ネットより)
 
 
次回は「マルチ商法に参加して(悲劇の高校生)」です。