ウィーンの環状道路と世紀末芸術.02 | 旅行、美術館、書評

ウィーンの環状道路と世紀末芸術.02


    「乱暴な言い方をさせてもらえれば、ウィーンのリンクでは
    公共建築までが
ハプスブルグ時代の古めかしい
    コスチュームで仮装舞踏会を舞い続けているのである」

                          by ウィーン 旅の雑学ノート

こんな状況ではクリムト などの新しい時代の芸術家が怒りだすのは至極当然な
流れです。 当時、展示会場をもっていたのはクンストラーハウス(kunstlerhaus)
という保守的な芸術家団体であったこともあり。
 以前は世紀末芸術は単に、世紀末独特の不安感によるものなのかと思っていました


クリムト_哲学 Klimt-medizin   クンストラーハウスを脱退したクリムトらがユダヤ人ら
  の支援を得て建築することができたのが、
  ウィーン分離派館


  ここにある、クリムトのベートーヴェン・フリーズは
  彼が依頼うけた 『哲学』 左上、『医学』左下、『法学』の3部
  からなるウィーン大学の天井画を 哲学、医学ともに
  人間の知性の勝利を高らかに歌いあげる
  「闇に対する光の勝利」
  という依頼元のテーマに反し、ようはエロっぽいだけと
  抗議され、大論争になり、結局契約を破棄した一件の
  筆による反論という背景があった、

  ということは知りませんでした。
  
 







  この3枚の絵はナチスにより没収され、その後、焼失し
  てしまっていますが、「医学」はリンク先で高解像度の
  写真をみることが
  http://de.wikipedia.org/wiki/Bild:Klimt-medizin.jpg
  できます。 迫力があります。惜しいですね。








Klimt_hygeia

  上の「医学」の部分図ですが、健康の維持や衛生を司る
  ギリシャ神話のヒュギエイア が苦しむ人々に背を向け、
  偉そうにしているのは、「医療万能」もよくありませんが、
  大学の医学部向けには厳しい構図です。

  法学 Jurisprudence はこちらです。
  http://www.abcgallery.com/K/klimt/klimt87.html

  医学のドラフトはこちらです
  














Adele Bloch-Bauer I Gustav Klimt
皇帝フランツ・ヨーゼフ1世のユダヤ人に寛大な姿勢もあり、
東欧からのユダヤ人の移住者も多い、
一方、ユダヤ教が偶像崇拝を禁じていることもあり、通常、絵画などには出資しないようなのですが カール・ヴィトゲンシュタイン  
は19世紀オーストリアにおける芸術家のパトロンとしても著名。

哲学者ルートヴィヒ・ヨーゼフ・ヨーハン・ヴィトゲンシュタイン の父
であり、 娘たちの肖像画をクリムトに依頼しています。
その後、ヒットラーの登場ですから、
この作品はその娘ではありませんが
「アデーレ・ブロッホバウワーの肖像」(クリムトの恋人のひとり?)
がこれまでの最高金額でオークションで落札 され、
現在のアッパー・イーストのNEUE GALERIE へと遷るわけです。
 
何年か前にベルベレーデ上宮でこの作品はみましたが、
クリムトの作品のなかではこの作品を一番、時間をかけてみた
と思います。 NYの方がもしかしたら似合っているかもしれませ
んが、あまりユダヤ人の印象を良くするお話ではないようにも
思います。


下のスライドの2,3枚目が Secession です。下図をクリックするとスライドショーが
開始されます。たまたま見つけたのですが、このスライドショーはすばらしと思います。

ウィーンスライド


[ 参考 ]
カーレンベルク山からウィーンのミュージアムと建築
 分離派(セセッション)とクリムト
  http://www.ma-museum.com/z-uminosoto/wien/30-bunriha.htm
ユダヤ  フロイトの旧居は現代美術のギャラリーに
  http://www.ma-museum.com/z-uminosoto/wien/70-judea.htm

権吾の美術展ブログ(別館)
 http://ameblo.jp/kengonagai/entry-10048020394.html

ぴあの猫のらくがき in Wien

クリムト「アデーレ・ブロッホ=バウワー像」をめぐる裁判の結果
http://kyoyoshi.exblog.jp/3038800/

エッセイの卵 / グスタフ・クリムト
http://www2.plala.or.jp/Donna/klimt.htm

くろねこ図書館 「ベートーヴェン・フリーズ」
http://www001.upp.so-net.ne.jp/kuroneko/Klimt/Beethoven1.htm


バックナンバー               * Google Map ではこのあたり
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.12
 カールス教会 と歴史博物館
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.11  シュテファン大聖堂
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.10   分離派館の地下のベートーヴェン・フリーズの展示室2
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.09   分離派館の地下のベートーヴェン・フリーズの展示室1
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.08  分離派館
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.07 ケルトナー通り Karntner Strasse
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.06 ホーフブルク王宮
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.05 右に 自然史博物館、美術史美術館、左に 新宮殿
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.04 ブルク劇場のクリムト
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.03 Cafe
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.02  クリムト 天井画
ウィーンの環状道路と世紀末芸術.01  環状道路(リンクシュトラーセ)の沿線には