3月4日、たった一人で、帝国ホテルでの茂木健一郎のディナーショーに行ってきた。孤独ではあったが、楽しかった。
一番印象に残ったのが「最も価値ある涙とはどんな涙だと思いますか?」
という話だった。
氏が言うには、悲しい涙、嬉しい涙、涙にもいろいろあるけれど、そもそも涙は自分では受け止められないぐらい大きなものを受け止めた時に出てくるものだそうだ。
また“真実に触れた瞬間にも涙が出る”とも言っていた。
例として、TV番組「プロフェッショナル」の相手方キャスター住吉美紀さんの話をされていた。彼女は、“吉兆”の料理人、徳岡さんが炊いたご飯を口にした瞬間、感動して涙したそうだ。
その上で、再度、同じ質問。「最も価値ある涙とはどのようなものか?」
僕は、迷わず「ものごとを成し遂げた達成感に伴う涙」と心の中で答えていた。しかし、案の定、彼の答えはそれを上回っていた。
「それは、人生のパズルの最後の一枚がカチッとはまった瞬間、流す自分だけの涙です。」
みんなが、“?”と首をかしげている様子に満足しながら、彼は続けた。
「一番分かりやすいのが、清原選手が西武に入団し、2年目に、日本シリーズで巨人を破って優勝する9回守備に見せた涙です」と。なるほどと思った。
極めて個人的で、達成感があり、しかも、偶然が重なった時、まさに人生で1回きりの涙は、その人にとって最も貴重なものかもしれない。
うまいこと表現するなあと感心した。
その上で、果たして自分は一生に一度でもそんな涙を流したことがあるだろうか?この先、そんな涙を流せるだろうか?と考えた。
おそらく“Hepatology”にonline submissionするときに溢れ出た涙は、それに近いと思う。
僕が、開業する前に、研究グループ10人ほどで、お祝いパーティを開いてくれた。僕は、スピーチで、 “Hepatology”の時の涙を紹介し、あんな涙を、後2、3回、流せたら僕の人生は幸せだったんだろうなと言えると思います、と締めくくった。
今もその気持ちは変わっていない。
「人生というジグソーパズルがカチリとはまったときだけに流れる涙。他人にとってどんな意味があるか、そんなことは知ったことではない。ただ自分にとってはかけがえのない価値があることは分かっている」
そんな涙を一生に一度でも流せたら、その人はきっと幸せなんだろうと思う。