しゃばけ

しゃばけ

畠中 恵



新潮社が一押ししていると思われる文庫が登場しました。

日本ファンタジー大賞優秀賞受賞作が、妖モノだったってコトに、まずビックリ。

主人公は人間だけれども、その主人公を助けるのが妖なのです。

妖怪と付喪神と人間が共存してます。

水木しげる氏並に優しくも微笑ましい妖怪がたくさん出てきます。

だからファンタジー。

つーか、江戸時代モノってだけで、私にはファンタジー(笑)

ギャンタジーはミッチー。


主人公は、何度も死にそうになっている程に病弱だけれども、頭の回転が滅法速い、通称「若だんな」の一太郎サン。

江戸有数の大店の一人息子で、もうじき十八歳。

元は廻船問屋だけれども、全国から体の弱い息子の為に取り寄せた薬がきっかけで、薬種問屋まで始めちゃう長崎屋って……。

色々な薬を身を以って試しちゃってる若だんなが、本家の店を継ぐ前に薬種問屋の店主になってます。


周りは皆、若だんなに甘い。

人間・妖問わず、若だんなを慕うモノは、例外なく若だんなに甘いのですよ。

幼い頃から人間の姿で手代として若だんなに仕えている白沢と犬神なんか、一に若だんなでその後はないし、両親に至っては「大福餅の上に砂糖をてんこ盛りして、その上から黒蜜をかけたみたい」と悪口を叩かれる程。


で、そんなラブラブ環境の中、嫌なヤツかと思いきや、若だんながイイヤツなのですよ。

周りの甘さに甘えきっていないトコロが良いのです。

手代の佐吉(犬神)と仁吉(白沢)もまたイイ味出していて、特に白沢である仁吉が、必殺仕事人の勇次を思い起こさせる感じでクリティカルヒット。

ちなみに、白沢とはこんな妖怪 です。

まさに薬種問屋の番頭にうってつけ(笑)


事件に巻き込まれる体質ではあるけれども、殺伐とした雰囲気を感じさせないのは、偏に若だんなの人望(?)故か。


シリーズ化しているので、今後も注目株かと思われます。

そんなしゃばけの公式サイト、しゃばけ倶楽部 は、絶賛公開中。

摩天楼の怪人

摩天楼の怪人

島田 荘司



所謂、ジャケ買いと言うか、著者名買いと言うか(笑)

「島田サンの本だ~」と、無条件に手に取った為、主人公がキヨシで驚きました。

てっきり、短編集か、単発ミステリだと思ってたからなァ。


舞台はアメリカ。

有名女優が己の死を前にし、高級マンションを舞台にした密室&不可能犯罪の告白をします。

既にアメリカの大学で助教授をしていた御手洗潔……この本ではキヨシと表記するのが正しいと思いますが、彼がその真相を覗くと言ったものです。
内容は、相変わらず奇想天外なトリック…と言いたいトコロだけど、何となく先が読める展開でした。

いや、それが悪い訳じゃないのです。

私が島田氏の作品で展開を読めなかったのは、『アトポス 』だけでしたし。

古き良き時代の匂いがする、優しく穏やかな河の様なミステリでした。

って、殺人事件で穏やかも何もないか(゜д゜;)


決して暴く行為ではないトコロがイイです。

そう言えば、御手洗の推理は暴く感じがあまりしないんですよね。

島田氏の作品が好きな理由は、そこにあるのかも。

隻手の声 鬼籍通覧4

隻手の声 鬼籍通覧4

椹野 道流


X文庫から出ると、こんな表紙になるんだね(・ω・)


と言う、見本のような本でございます。

私がこのシリーズと出会ったのは、講談社のノベライズ。

そっちは何処となくハードボイルドなニオイのする表紙だったんですけど、この表紙だけ見れば何だかBL系の本に見えるYO!

持ち歩き易いってんで文庫の方を手に取っちゃうのですが、ブックカバー無しでは読めません。


煌びやか(?)なイラストに反して、中身は法医学教室オカルト話です。

法医学教室に勤務していた経験を活かしてのリアル過ぎる解剖描写に、友人は一巻で挫折しました(笑)

グロ系が苦手な方は難しいんじゃないかと…。


オカルト話と言うくらいですから、勿論、ミステリーではなくオカルト現象が起こります。

法医学は、死者の声なき声を聞く職業と言われてますからね。

ま、つまりはそう言うコトです。

解剖した遺体が発端となり、その遺体にまつわる幽霊が事件を解決する鍵になると言うのが、シリーズの大枠。

明るめに描かれてる箇所もありますが、ストーリーはほぼ重く暗いです。



この巻のキーパーソンは、赤子でございました(/TДT)/



現在、X文庫では4巻、ノベルズでは5巻出てるのですが、その中では唯一救いがある感じなのがこの巻。

事件自体は暗いっつーか、うーん…と言う内容ですが、光明が差してる気がするんですわ。

いつも、正直「うぜぇ!」と思わないコトもない主人公とその親友が、珍しく良かったと感じたのもこの巻かも(笑)



脇を固めるキャラ(特に教室の秘書のオネエチャンと解剖助手)が結構イイ感じなので読めてる感はあり。

気合がそれなりに漲ってないと、読後に疲れちゃうなんてコトも……。


浜木綿子が2時間枠でやってるミステリ系の話じゃないので、そこだけはご注意を!

拝み屋横丁顛末記 7 (7)

拝み屋横丁顛末記 7 (7)

宮本 福助


祝、ドラマ化!

でも、配役を見てビックリ。

正太郎は置いておいて。

文世(大家)サンがうじきつよしって…!

三爺が玉川カルテットって…!(笑)

東子さんが、和希沙也だとぅ!?

徳光、ちょいと若過ぎやしないか?

小林役の川村雅彦って誰!?

ああ……*エンジェルはどうなるんだろう…。

少々不安。



拝み屋横丁と言う、かなり怪しげな下町の、雰囲気で言うならば江戸の長屋を舞台に繰り広げられるドタバタ時々オカルトコメディです。

普通、霊が出てくるマンガはおどろおどろしかったりするんですが、このマンガに出て来る霊たちはほとんど生身の人間と変わらない扱いと言うか、生身の人間よりも人間臭かったりします。

霊力は高いくせに霊感0の男子高生と、霊媒体質で幼馴染の美人女子高生の淡い恋の行方が主軸かと思いきや、それはほとんど刺身のツマ程度。

絶対にこの本の主役は、主人公の叔父である大家サンとその店子の方々。

いや…もしかしたら、災いを持ち込みつつもいつも美味しいところを攫って行く、先代大家かも知れないと思い始めました。


どの人物も良いキャラです。

その中でもワタクシのオススメは、矢張り、先代大家でしょう!

7巻の表紙の右側に立っている眼鏡老紳士です(笑)

隣はその息子で、現在の大家。

性格(性質?)の悪さは、絶対に遺伝子に組み込まれているものと思われます。



作者様も仰られてますが、全体的に登場人物の年齢層が高いと言うか、爺率が高いです(笑)

爺マンガバンザイ。



スバラシイ感覚をお持ちで、ワタクシお気に入りの作者様HP


*

エンジェルは、長屋に住み着いた(?)、霊力の高いオカマの幽霊です。

マッチョだけど、可愛らしいです。編み物は念を篭め過ぎて呪いに転じるくらい、愛情たっぷりに編んでくれます。

愛の伝道師、エンジェル。密かにオカマ好きとしてはたまらんキャラです。

リストランテ・パラディーゾ

リストランテ・パラディーゾ

オノ ナツメ


書こう書こうとすると、書けないのが文章。

もう少し気楽にやりましょうと思うと、更に遠ざかる更新(´□`。)

ノルマっても無駄だし~なんてやってたら、1つ目から2ヶ月過ぎてたYO!



久し振りに、何度も読み返したいと思うマンガに出合いました。

それがこの、『リストランテ・パラディーゾ 』。

老人と呼ぶのは失礼な位恰好イイ、老紳士の店員様たちが良いです。

しかも、皆、オーナーの意向で眼鏡(伊達アリ)をかけているのですわキラキラ

性別問わず妙齢の方たちの気品溢れる眼鏡姿にトキメク私としては、マジでツボ。


あ。萌えだけで成立した世界じゃないっすよ。

どの登場人物も、味があって良いのです。

主人公は若いオジョウサンなのですが、その子も全く邪魔じゃない。

全ての主要人物が、不器用で愛らしいのが特徴と言えるかも。

一冊の中に色々な愛情が存在し、色々な家族の形が存在します。

でも、決して盛り込みすぎじゃないところが更に良いのです。

殺伐とした感じがなく、読後にほんのりとした温かさを齎してくれます。

黒でも白でもなく、灰色って結構良いんだなぁと、思えてさえきました。


まさに、本当の意味でオトナのマンガって感じでしょうか。


銀座にお気に入りのBARがあるんですが、そこに行ったような気分になれる本です。

ちなみに、そこのバーテンダー様も老紳士でゴザイマス(笑)

伴野 朗
三国志 孔明死せず

『三国志通俗演義』を読んだ上で、歴史小説としてでなく、あくまでお遊びとして軽く流し読む一冊です。


子どもの頃から好きだったんだけれども、某社の三国志ゲームで再燃。

で、思わず手に取ってしまいました。


だって、ゲーム(私がやったのは3)で死ななかったんだもん(´∀`)


あとがきの著者のコメントの中にもあるのですが、「実は、あの五丈原で孔明は死んでいなかった」って言うのは、三国志における諸葛亮ファンの夢みたいですね。

ゲームの中の諸葛亮は、扇で刀や槍と対等以上にやりあうわ、ビームを出すわ。まるで妖怪大戦争。

そんな荒唐無稽の世界に身を置いていた為、あまり抵抗なく読めましたが、元の話をお好きな方には苦痛になるかも…。


冒頭、既に劉玄徳は危篤状態。

オイオイ…。

白帝城での有名な遺言から始まります。

「息子の劉禅に君主としての器があるなら、よく仕えてくれ。もし見込みがないのなら、お前が君主となれ」

うろ覚えで申し訳ないですが、確か、こんなような意味合いの言葉だったと記憶してます。

その言葉に感動しちゃった諸葛亮は、劉禅が三国を統一する事に命を賭けようと誓います。


……蜀、何気に熱いヒトが多いです。


五丈原では、死んだ振りして生きてるってヤツを見せてくれます。

もしかしたら某ゲームはコレを参考にしてるのかもって思うくらい、まぁ、見事な騙しっぷりです。

キーポイントは、『華陀の弟子を呼び寄せての延命』。

自分の死期を悟った諸葛亮が密かに手配した秘密兵器は、現在、水虫やいんきんたむしの薬として有名になってるアレです。

本当は死んでいるはずなの無理矢理延命しているので、やはり体はガタガタ。

マジでいつ死んでもおかしくない状態でありながら、ちゃんと小説の最後まで生きております。

ラストシーンは、NHK大河の武田信玄のラストシーンのよう…。

上杉謙信が毘沙門天と会話しちゃってる(つーか、どっか逝っちゃってる)のを思い出しました。


最大のハイライトは、霊媒体質な孫娘に呼ばれて黄泉の国からコンニチハした関羽(&関平)が、左慈の貞子的な攻撃から蜀を救うトコですかね。

いやはや、軍神は死後も魅せてくれますキラキラ


何でもありな世界なので、首を捻ったり、「待てよ?」と思う箇所が多々あるけれど、私は、勢いで読めちゃいました。

件のシーンは、稲川淳二の語り口を思い出しながらドウゾ。



しかし、日本って諸葛亮好きが多いのねんと、改めて実感しましたわ。