踊る大捜査線の手引き -2ページ目

踊る、ファイナルに向けてインタビュー 1

■15年演じ続けてきた青島と室井の関係

Q:お二人がツーショットでインタビューを受けるのは、今までなかったことです。


織田裕二(以下、織田):これが初めてですよね。

柳葉敏郎(以下、柳葉):初めて。いずれどこかであったら面白いなって、構えて待っていましたけど(笑)。逆に今までなかったのが、役を務める上では良かったかなと思いますね。

織田:柳葉さんもきっとそうだったと思うんですけど、僕と柳葉さんは現場ではずっと役の関係のままでいないといけない気がしていたんですよ。青島と室井は、ドラマの縦軸でしたから。

柳葉:僕も織田くんとして見ていないですからね。少なくともこの作品で一緒にいる時間は、織田くんではなく青島。だからその辺は、お互い口にしなくても、室井が青島を、青島が室井をしっかり感じながら現場は進んでいたと思いますね。

Q:その関係を15年間続けるのは大変ではなかったですか?

織田:柳葉さんが来られる日はスタッフの緊張感が違うんですよ。今は柳葉さんと言いましたけど、それは室井さんの日だからなんです。室井さんがそこにいる。「正しくないことをやったら斬(き)るぞ」みたいな緊張感を「おはようございます」の瞬間から持っていらっしゃる感じで。

柳葉:俺がとんでもないヤツみたいじゃないか(笑)。

織田:とんでもなくないですよ(笑)。僕にとっては当たり前の話だと思っているんです。柳葉さんが現場でいきなり監督に「ここが気になる」という話をする。すると現場に緊張感が走る。いい意味での緊張感。僕自身も青島側だけで考えていたら気付かなかったことに気付かされる。スタッフも想定していたものとは違う準備をしなければならない。それに瞬時に反応する。緊張感も含めて、本気でぶつかっているからこそ素晴らしいシーンが生まれると思っているんです。

柳葉:僕はテレビシリーズが始まったとき、あの湾岸署の、青島を中心としてみんなでにぎやかにやっているのが、もううらやましくて仕方なかったですよ。

織田:わかります(笑)。

柳葉:僕もあの中に入りたいって。でもセリフは「……」でしょ(笑)。

織田:むしろ非情な感じでしたもんね、最初の頃は特に。

柳葉:そう。僕はね、針のむしろの上に置かれているような心境で。でも、できるだけあの中に入らないようにして室井をやっていこうとそのときに思った。それが多少うまくいってくれたのかもしれないですね。

あの場面①

the final

日本実写映画興行収入記録を樹立した、人気シリーズの完結編「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」が4月18日、都内でクランクアップを迎えた。



この日、主演の織田裕二が15年にわたり演じ続けてきた青島俊作刑事が、警察手帳、手錠、拳銃を取り上げられ警察をクビになり、一般人に戻ることになるという重大なストーリーの一部が明らかにされた。



昨年12月、「踊る」シリーズの生みの親、フジテレビの亀山千広映画事業局長は今作について「前作で青島くんを係長にしましたが、やっぱり現場で動かざるをえない。降格はしないけれど、もっと暴れられる事件を用意しなければ。警察手帳を捨ててでも、自分の信念を貫く青島を描こうと思う。そして、組織をつくっているのは現場の力だということを訴えたい」と語っていた。その言葉通りのストーリーが、完結編に用意されていた。

ファイナルカットは、青島と深津絵里扮する恩田すみれが会話を交わすシーン。丁寧に積み重ねてきた15年間があったからこそ成立するテンポの良い掛け合いが展開され、だからこそせつなさが際立つ場面だった。



撮影後には、スタッフ全員がバラの花を一輪ずつ織田らキャストに手渡し、互いをねぎらう姿が、数々の金字塔を打ち立ててきた国民的シリーズの終えんという事実を関係者の心に知らしめた。

感慨無量の面持ちの織田は、連続ドラマがスタートしたころのことを「みんながアイデアを出し合って、実験的なことをしたり好きなことをやって、スタッフ、キャストの手作りだったものがお客さんにも受け入れられ、いつの間にかバケモノみたいな作品になったように感じています」と述懐。そして、「『踊る』は終わりますが、またいつか、これを越える作品をつくれたらいいな……。いや、作れる。作ろう! 作るんだ! 本当に長い間ありがとうございました」と話した。



スピンオフを含む、劇場版5作の累計観客動員約3127万人、興行収入約427億9000万円という数字の裏には、数々の名シーンが生み落とされ、多くのファンの心を鷲づかみにした。織田にとって、今シリーズは「僕の人生から切っても切り離せないもの。これから出合えないと思えるような作品」と言い切る。


それだけに、今回のクランクアップは前作までとは「全然違います。終わりですから。このコートを着ること、ないですし」とつぶやき、同シリーズを支えてきた人々へと思いを馳せた。