新世界の名物は『串カツ』だ。
串カツ屋は新世界だけで50軒あまりもひしめく。
大阪名物の串カツだが、逆に新世界以外ではあまりお目にかかれない。
梅田あたりにも串カツ屋はないではないが、かなりお上品になる。
二度漬け禁止の新世界の串カツは局地的フードだ。
それゆえに店に入るにはちょっとばかし勇気がいる。
まず二度漬け禁止のルールが理解できない。
山のように盛られたざく切りキャベツの使用法がわからない。
間違った食べ方をしたら店の人に怒られそうだ。
本日は串カツ初心者の心得をひとつ。
まず『串カツ』だ。
串カツは串カツであって、断じて
『串揚げ』
ではない。
串カツを串揚げと呼称するのは『東京者だ』
ふっ…なんや東京からの観光客か…
と店の人から値踏みされるに違いない。
メニューに
『串カツ』
とあったらそれは
『牛肉のカツ』
を指す。
あるいは牛肉とタマネギを交互に刺したカツのことである。
この牛串カツの仲間をすべて
『串カツ』
と称するのである。
最近のトレンドはネタに一工夫された創作串。
値段は新世界価格で一本90円~
さらに衣は小麦粉を溶いたものではなく
『米粉』
を溶いたもの。
パン粉は極細か挽きのものを使う。
ソースは一般にウスターソースを和風ダシで伸ばし、デーツという異国の果物で甘味をつけたものを基本に各店、独自のブレンドを行う。
加えて、材料によって、コーンスターチを使ったふわふわ衣。螺旋に衣をまとった職人の技あり衣。
カステラ粉を使ったしっとり衣など、最近は創作系が主流だ。
ではまず店の選び方から。
① ざく切りキャベツを置いてない店には入らない。
ざく切りキャベツは食べ放題である。
あの特製ソースがキャベツの甘味にベストマッチ。
串カツの揚がる間ハムハムと食べるべし。
このキャベツは二度漬け禁止のソースをすくって串カツにかける際に使う。
おっと、箸でキャベツをつまんではいけない。
きちんと手指を使うべし。
それがマナー。
ところでキャベツは天候具合によって仕入れ価格の変動が激しい。
フリーキャベツだと利益の出しにくい店も多い。
よってキャベツを千切りサラダにして供す。
もしくはキャベツそのものをやめる。
このような不埒な考えの店には断固として入るべきではない。
② ソースはステンレスの角ポットで。二人でひとつ
申し訳ていどに、二つに分かれた薬味皿に最小限のソースを入れられては、あの
『ドプン』とソースに串カツをくぐらす醍醐味を味わえない。
第一、申し訳ていどのソースでは二度漬けもへったくれもなかろう。
なに?
残ったソースを営業後、漉して翌日使ってるんだろう?
って。
それがどうした。
そんなの気にして、100年継ぎ足してタレを使う老舗のウナギ屋や焼鳥屋に行けるか。
よって『二度漬け禁止』なんじゃ!
次にカウンターのみの店を選ぶべし。
100人以上入れるファミレスタイプね店も多いが、とかくマスプロ化されて面白みに欠ける店が多い。
きちんと
対面でマスターに
『本日のオススメ』
を聞ける店がよい。
そして次が大事である。
② イケメンマスターのいる店を選ぶべし。
新世界の串カツ屋はほとんどチェーン店である。
しかも本場。
激戦区であるがゆえ、どの店も腕、話術、ルックス三拍子そろったエースクラスが配属されている。
あなただって小汚いオッチャン、おばちゃんの接客はイヤだろう。
さらに呼び込み。
大阪の飲食店は呼び込みが命だ。
呼び込みの人間の良し悪しで店を選んでもよい。
とかく不人気店は従業員の人間関係がギスギスしている。
『おい。あの新入り、使えねえ奴だな。お前なんか呼び込みでめしとけ』
となる店はよくない店だ。
イケメンやかわいい女子店員の呼び込みには
『おい。うまくのせられちゃったよ』
とうまく騙されてちっとも構わない。