いよいよ本格的な鮎釣りシーズンを前に「こちら。川底三丁目クリニック」はこれにてお終いとなります。
長らく、お付き合いくださりありがとうございました。
ヽ(;▽;)ノ
実は、毎年なくならない川の事故がどうかなくなりますようにとの思いと、哀しいかな亡くなられて残された方の癒しになればと思って書きはじめました・・・。そして、毎日を大切に、楽しい日を過ごせますように・・・と。
それでは、最終回です。
お暇な方限定ですよ~( ´∀` )
〇川底三丁目クリニック新館集中治療室・室内
人間のベッドの隣にクベース型のベッド、中に横たわる点子ナース。
ショウタ先生「いいのか、本当に。思いが弱かったら君は星になってしまうんだそ、点子君。」
点子「はい、大丈夫です。私、本当はずっと前から人間のことが知りたくてたまらなかったんです、人間になりたい。あの人間の記憶データを見てさらにその思いが増しました。人間になって鮎釣り師になって色んな事を考えてみたいのです。絶対。」
ショウタ先生「わかった、では君の幹細胞もとりだして、人間にプラナリアと同時に移植するよ。いいね。」
点子「了解です、幸い、あの人間は、人間界でナースをしていたみたいですね、記憶データによると・・・」
ショウタ先生「ああ、そうだ、でも大丈夫だ、入れ替わり再生が成功すれば、全てが以前のまま、恐らく本人も気が付かない。君もね、川底三丁目クリニックのことは全て忘れているはずだよ。」
点子「・・・そうでしたね、今まで、本当にありがとうございました、みんな・・・。ありがとう、本当に。お元気で・・・。」
〇石がごろごろした川原。夕暮れ
数人の鮎釣り師が流れ着いたメス鮎釣り師を取り囲んでいる。全身ずぶ濡れのメス鮎釣り師。
鮎釣り師「大丈夫か!!」
メス鮎釣り師「はい、、、良く覚えてないんです、気がついたらここに・・・。私、いつも人一倍気を付けたのにどうして・・」
鮎釣り師「でかい鮎釣ろう思うて立ちこんだんじゃないんか?・・・川は何が起こるかわからんでな、よかったのお、助かって。近くに温泉があるで入りんさい、寒かろおに」
メス鮎釣り師「はい、・・・ありがとうございます、ありがとうございます。」
〇川底三丁目クリニック・室内休憩室
ぼんやりと窓の外を眺めながら水煙草をふかすヒゲ先生、常勤になったサツキナースが珈琲を片手に近寄ってくる。
サツキ「あら?水煙草。ずいぶん前におやめになったのじゃありませんの?」
ヒゲ先生「(ばつが悪そうに)いや、どうも鮎釣り終盤のあの騒動で、色々ありすぎたから落ち着かなくてな、つい。」
サツキ「本当に色々ありましたよね…でも点子さん、まったく違和感なくて、元人間だったなんて誰も気が付かないわ」
ヒゲ先生「あはは、そりゃそうだよ。我々だけの秘密だよ。仲良くやってくれよ。」
サツキ「もちろんです!で、鮎釣りシーズンも終わったし、暇だし、今日はもう早上がりさせてください。点子とコンパに、あ、いや、お食事に行く約束がありますので。」
ヒゲ先生「そうか、構わんよ、楽しんできたまえ。」
サツキを見送って、もう一本、水煙草に手を出すヒゲ先生。独り言が泡になって流れていく。
~人間になった点子君よ、元気かい?
~仲間の鮎釣り師に危ないことをするなと伝えているかな…みんなに川や自然の大切さを伝えているかな。
~家族や友達と楽しい時をすごしているか・・・。
~かけがえのない日々を大切にして、生きて…生きているだろうな・・・。
プクプクプクプクプクプク・・・泡は水面まで流れていく。
夕暮れの陽がさして茜色に染まる川底三丁目クリニック。どこまでも澄んだ水が流れている。
水面に落ちた枯葉の影が川底を通り過ぎていく。
「本日休診」の看板を掲げてクリニックを後にするヨシノボリの吉野。
吉野「やっと、しばらくはのんびりさせてもらえそうだな、平和がいちばん。フフフ。」
~完~

