Gerd AltmannによるPixabayからの画像
今日は文春オンラインからの記事です。
2021/6/26
今年4月30日に亡くなったジャーナリスト、評論家、知の巨人として知られる立花隆さんが東大の立花ゼミを70歳で退官する際、最後のゼミ生に向けて6時間に及ぶ講義を行った内容を記事にしたもの。
60代を終えて70歳の誕生日を迎えた正にその時、80代、90代の地平が広がっているかと思いきや、そうではない。
不定型の死が広がっている。
そこで初めて20代の若者に何か残したいと思った。
70年を改めて振り返ってみるのはつい最近のこと。
大まかな人生のベクトル分析ができる。
20代という年齢の持つ危うさが目に見えてくる。
取り返しのつく失敗と取り返しのつかない失敗。
思い込みによる取り返しのつかない大失敗を犯しやすい年代。
そして準備ができないうちに大きな決断を迫られる時が何度となくやってくる。
準備不足は人生の常であり、また失敗も同様。
適切な失敗の積み重ねが無ければ、成功も無い。
考える順序の問題と先決問題の議論。
何度も早すぎたり遅すぎたりの繰り返しで適切なタイミングをつかめる。
そして70歳になって95歳の母が生命維持機能である腎臓の相当部分が機能しなくなり、自分にもそのうち同様の日がやってくると感じる。
母はクリスチャンだから神のもとへ行けると思っているが、俗人である私(立花隆さん)は順番に機能が停止し、死を迎えると思っている。
死を恐れるのは人間の本能。
70歳になると周りの人が死んでいき、そのまま生きていると知っている人が一人もいなくなると当たり前のことが分かる。
若者にとって死は非日常そのもの。
だから死は衝撃を与える。
私(立花隆さん)が衝撃的だったのは安保闘争における樺美智子さん、三島由紀夫さんの死。
三島さんと共に死んだ森田必勝さんもよく知っていた。
ある雑誌で盾の会が何たるかを取材していたからだ。
三島さんの死に方はショックだった。
自ら切腹した上で、森田に介錯させ、自分の首を斬らせるというあの死に方は、人の想像を絶した。
報道する側にも抑制がかかり、現場の様子がリアルに出たのは10年後週刊フライデーにて。
その写真は警視庁公安部右翼担当部員が保存していた。
公安部員は、どんな重大な事件に遭遇しても、それに直接介入しない。
ただひたすら、事の成り行きをじっと見ているという習性がある。
普通の人なら必ず目を背けるに恐ろしい場面でも、じっと見続けることをよしとする職業倫理がある。
この話をする理由は、若者がどれほどものを知らないかを教えるため。
大学生はこの世の中ではまだヒヨコの存在。
メディアの報道をいくらカバーしても本当の社会で起きている事象の大半は分からない。
重大事件の情報量は爆発的に増えるが、伝えられない、伝えきれない事実も爆発的に膨れ上がる。
実際ダークサイドは驚くほどたくさん散らばっている。
これから社会に出ていく学生が決めなければならない重要なことは社会の表裏のどこに入っていくかということ。
どこに身を置くかによって社会のダークサイドと一定の関係を持たざるを得なくなる。
日本のGDPの結構な部分がダークサイドの交易関係で生み出されている。
日本では1割程度、海外だと2~3割闇世界に侵食されている国もある。
表世界だけでは世界の現実はほとんど分からない。
週刊誌の仕事を長くやっていると、断片的なダークサイドの情報をたくさん聞く。
しかし、記事にできるところまで持っていけるのはほとんど無理。
裏付けが取れない情報が山のようにある。
怪しい話を安易に信じるのはマスコミ界では脱落者。
マスコミ中堅幹部以上はみな騙されてきた。
大マスコミ程中堅層の厚みがあるから間違いを犯さないで済んでいる。
世の中のことが分かってくるのは社会に出て10年経ってから。
「田中角栄研究」をやったのは34歳の時。
約20名の取材班を引っ張っていった。
上司には30代後半の担当デスク。
46歳の編集長、大ベテランの取材班もいてなんでも相談に乗ってくれ、信頼性確保に役立った。
チームの仕事はチーム全体の経験値の集合量で決まる。
大学を出て文藝春秋で2年半、その後フリーになり同時に哲学科の大学生となる。
その後文藝春秋の週刊誌、月刊誌、講談社で週刊誌2誌、月刊誌1誌と雑誌の世界の経験量は誰にも引けを取らない。
人間に何ができるかは仕事の量と質両面の関数値である。
詳しくは記事をご覧ください。
以上、おわり
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