これまで幸いにも大きな病気はせずに過ごしてきました。
会社の健康診断も定期的に受けていますが、特に大きな問題は指摘されたこともありませんでした。
ウェイトオーバーと、それに伴って尿酸値が上がり気味。産業医の方にはいつも言われます。
「もう少し減量しましょう。今はいいですが、成人病になるかもしれませんよ。」
まあ、痩せたいのは当たり前ですが、それができれば誰も苦労しないわけで・・・
とまあ、比較的平穏な日々を37年間過ごしてきました。
2013年が明けたころ、週に一度くらい鼻血が出るようになりました。頻度が高いわけでもないし、止まりにくいということもありませんでした。
「空気も乾燥しているし、鼻の粘膜が弱ってるんだろう。」
勝手な判断で医者に行くのを面倒くさがっていました。ところが、7月になろうとする頃、時折、鼻づまりするようになりました。
幸運にも、アレルギーとは無縁の体質で、花粉症でもありませんし、蓄膿症といった鼻のトラブルもありませんでした。
「なぜ鼻が詰まるんだろう?」
人間の性か、気になる鼻によく指を突っ込んで触っていました(って私だけか)。そしてある時、鼻の穴の感触が左右で異なることに気が付きました。
右の鼻の穴が明らかに狭くなっている」
これはおかしいと直感で感じましたので、すぐに近くの医者に駆け込みました。
時に7月初旬、鼻づまりが本格的に始まってすぐだったと思います。今思えば、我ながらよくぞ病院に駆け込んだと、過去の自分をほめてやりたいと思います。そしてこれは幸運と言ってよい、優れた先生方との出会いの始まりでした。
「罹患者数が少ないと新薬開発にブレーキがかかる」と前回書きました。何故でしょうか?
・・・
正解!皆さんが思った通り「儲からないから」です。
「命に関わるのに!」「困ってる人をどう思うのか!」「社会貢献として必要だ!」色々な意見はあると思いますし、製薬企業の社員も同じ気持ちです。が、そう簡単にできないリスクが新薬開発にはあるのです。
新薬を作るには、「薬の基(化合物)の発見」→「臨床試験(治験)」→「新薬承認」というプロセスをたどります。では、どの程度の期間・費用がかかるのでしょうか。
恐らくどちらも予想と異なるはずです。諸説ありますが、以下のように言われています。

新薬開発期間:10~20年、開発費用:数百億円~数千億円

どうでしょうか?とんでもない期間とお金をかけることになります。しかも、成功率は極端に低い。ほとんどの場合は臨床試験前に中止(つまり動物実験レベルで中止)になりますが、臨床試験まで実施しても成功率は10%以下です。失敗してもそこまでかかった費用は返ってきません。
サラリーマンとして考えると、ほとんどの創薬研究者は、定年まで研究し続けて、一度も薬を作れずに退職になります。そんな仕事ですが、「薬を作りたい」と情熱をもって研究している人がたくさんいます。私もその一員として誇りだけは持っているつもりです。命ある間に、薬を作れれば良いのですが。
ちなみに、2013年度に世界で最も売れた薬は「ヒュミラ」という抗体で、世界売上げ約110億ドル、つまり1兆円を超えます。言い換えれば、製薬会社は、「一等数兆円・一枚数百億円」といった宝くじを買っているようなものです。一等賞金の見込めない宝くじ(病気)に対しては、誰も手を出さないことになるのです。
この話題についてはきりがありませんので、このあたりにしておいて、いよいよ私の闘病記に入ろうと思います。
癌治療の一角を占める抗がん剤治療。
抗がん剤に対する様々な見方があるのは事実ですが、重要な治療法の一つには違いありません。
では、「抗がん剤の開発」とはどんなものでしょう?
皆さんはこう考えませんか?
今まで効かなかった癌に、新しい薬が開発される
その通り。何も間違ってはいません。
ただし、それがすべてではありません。実はもう少し複雑です。
以下に大まかなパターンを挙げてみます(あくまで私が思いつくパターンです。ほかにあればor意見があれば是非コメントをください)

1.今までにない新薬が開発される
これはもっとも皆さんが思い浮かべ且つ、重要なステップです。現在も、分子標的薬や抗体といった新たな抗がん剤が続々と開発されています。
今までの治療薬と併用することでより効果が上がったり、治療抵抗性と言われる癌に効く可能性があります

2.既にある治療薬の改良版が開発される
既存の薬とにた物ではあるが、何らかの利点を持って新たに開発される場合です。
単純に薬効が強かったり、副作用を軽減させたりということになります。
ただし、この場合は既存の薬が効かない癌に対しては無効の可能性が高いことになります

3.新たな治療法が開発される
目立ちませんが、非常に重要なステップです。実は、同じ抗がん剤を使っているにも関わらず、「その使い方」によって効果が大きく変わることは良くあります。
数十年前に開発された抗がん剤の「優れた使用方法」が開発され、治療効果が劇的に上昇することもあります。
「大量に投薬して、しばらく休薬」「少量ずつ長期にわたって服用」「他の薬と併用」「効果的に副作用を抑制する」など、大量の使用例によって積み上げられた情報が最も活用されるパターンです。

4.新たな剤型として開発される
主成分は変わりませんが、あらたな剤型工夫が凝らされる場合です。
徐放製剤と言われる徐々に放出され、長期の薬効が期待できる剤型であったり、代謝酵素をブロックする薬剤とともに錠剤にする(合剤といいます)ことで、血中濃度を維持する薬剤などがあります

以上のようなステップを経て、日々、新薬と言われる薬が開発され、患者さんの闘病を助けることになります。希少疾患ではすべてのパターンにブレーキがかかりますが、悲しい企業倫理が働くことにもなります。次回はそのあたりを少しだけ紹介します。
鼻腔癌患者は非常に少ない。
これは、どうにもならない事実です。ではどんなことが起こりうるのか。
以前にも書きましたが、以下のような問題が考えられます。

1.治療できる病院・医師が限られる
見たこともない、話でしか聞いたことのない病気を診れる医師は殆どいません
というより、(特に命に係わる病気の場合)無理に診察・治療することは無責任です

2.病気に関する標準治療法が定まっていない可能性がある
癌治療は日進月歩です。ただ、どんな場合にも標準治療法が重要になります。
「標準治療がある」は、多くの知見(治療例)により、証拠に基づく治療法が確立していることを意味します(EBM(Evidence Based Medicine)といいます)。
日々、新たな治療法の開発、新薬の登場等により標準治療はアップデートされ、患者の状態に合わせて最適な治療が行われます。
希少疾患の場合、このアップデートサイクルが遅いだけではなく、疾患によっては標準治療法すら存在しない場合があります。
言い方は悪くなりますが、数少ない治療医の勘違いにより、最適の治療が実施されない可能性すらあります。

大きく上記2つの問題が、医療サイドから考えられます。ただ、2について少し補足が必要かもしれません。
癌治療は「80%に効いた」となれば、かなり成績の良い治療法です。ただ、個々の患者でみれば「80%に効く良い治療法」を行っても、「20%の効かない場合」もあり得ます。
試した時に効かなければ、実際に治療した医師にとっては「効果の小さい治療法なのか、たまたま効かない場合なのか」の判断がつきません。
そうなれば、その方法が実際は良い治療法であっても、もう一度試すのは困難です。
そのようなことが起こらないように、大規模に症例を集め、客観的なデータから治療法が確立されてゆくのです。

これらは、実際の治療に関する問題点ですが、薬を供給する側、つまり製薬側にも問題は存在ます。
現時点までの治療記録や感想を綴る前に、鼻腔癌及び、癌治療一般について私見を述べようと思います。
前回触れたように、医療関係者の端くれとして、少しでも有意義な情報を残したいですし、
同病の方・支える周りの方の一助になるためには、まずは病気の情報からと考えるからです。

「鼻腔癌・副鼻腔癌」という検索キーワードから飛んでこられた方はお分かりだと思います。
一般的な癌情報ページ以外にはほとんど情報がありません。
下手をすれば癌情報ページに記載すらないor何十年も前の情報しかない状態です。

「せめてブログの情報だけでも・・・」と検索してみます。
犬や猫といったペット動物の闘病記が山ほど引っかかります。
鼻組織の発達した動物では比較的多い癌腫のようですが、
「今はそれどころじゃ無い」というのが患者・周りの人の本心かと思います。
(決してペットを軽く見るわけではありませんので、誤解はしないでください)

そこで、私自身が調べた情報をまとめておきます。

鼻腔癌

頭頸部癌(耳鼻咽喉科)の一部ということになりますが、
頭頸部癌が全癌の4~5%を占めるにすぎません。
更に頭頸部癌の90%は口腔、咽頭、喉頭癌で、約10%が副鼻腔・鼻腔癌です。
更に更に、副鼻腔・鼻腔癌のうち75~90%を上顎洞癌(副鼻腔癌の一種)が占め、
10%弱が鼻腔癌と言われています。

正確な数値は分かりませんが、まぎれもなく希少癌の一種になります。
鼻の癌の大多数を占める上顎洞癌が年間1000人程度の罹患者数ですので、
鼻腔癌の罹患者数は年間数百人レベル。
国立がん研究センター・がん情報センターが平成26年3月にまとめた
希少癌対策ワークショップ報告書によると、
鼻腔・副鼻腔の上皮性腫瘍の推定罹患者数は、10万人あたり0.89人となります。
拠点病院データで補正すると、鼻腔癌罹患者は多めに見積もって10万人あたり0.3人以下

あくまで推定ですが、ここまで罹患者数が少ないと、医療サイド、製薬サイドともに問題が生じます。
鼻の癌の情報に加えて、この点をもう少し掘り下げたいと思います。