綺麗な物が好きなのです | 横浜市白楽・妙蓮寺〜くすのせピアノ教室〜

横浜市白楽・妙蓮寺〜くすのせピアノ教室〜

神奈川県横浜市白楽・妙蓮寺のピアノ教室

128日、クリスチャン・ツィメルマンのコンサートがありました。


サントリーホールは、いつ来ても、ウキウキ、ワクワク、特別な気分にさせてくれる場所です。

丁度、華やかなクリスマスの飾り付けがされていました。




プログラムは、知的なバッハから始まり、何とも美しいブラームス、圧巻のショパンへ。

ピアノとピアニッシモに、こんなに色彩豊かな音色があるのでしょうか。

神々しいような空間に身を置くことができて、ただ幸せでした。


アンコールは一切ありませんでした。

けれども、物足りなさは感じませんでした。

一人の芸術家が身を削るような思いで魅せてくれた世界の余韻に浸りながら、帰りの電車に揺られていたのです。



思えば昔から綺麗な物が好きでした。

ステンドグラス、ビー玉、ピンクのネグリジェ、絵本に出てくるお姫様や輝く湖、雪。


もう少し大きくなってからは、母が(何を思ったのか)買ったであろう、"世界の一流品" という分厚く立派な本を、飽きもせず眺めていました。


洋服、アクセサリー、バック、食器。

そんな物ばかりのページを何度もめくる、変な子どもでした。


不思議なことに、何年経ってもそこに載っているファッションは、古臭くならなくていつまでも素敵なのです。

流行は確実に移り変わって行っているのに、何故かしらと子ども心に思ったものです。


やがて大人になって結婚して家を出て、いつの間にかなくなっていた、あの私の愛読書。


その後、一度もシャネルのスーツを身にまとうこともなく、時折りふと、あのずっしりと重い本が懐かしく思い出されます。



さて、もう一つ忘れられない思い出があります。


高校生の頃、祖母の法事がありました。

座敷に入ろうとした時には、母や叔母はすでに奥の方に座っていました。

私は何も考えず、側にあった、純白の分厚くフカフカの絹の座布団に、吸い寄せられるように腰を下ろしたのです。


その座布団が、一枚しかなく、他の座布団は普通のよくあるタイプの物だったという認識もなく、ただそこに、綺麗で座り心地の良さそうな物があったから、自然と座ってしまった、という所でしょうか。


ふと気づくと、奥の方から母と叔母が、私に向かって、横に行けと必死で手を振っています。


私は、あー、横にズレれば良いのね、と理解し、座布団ごと横に移動しました。


すると、また母たちが何やら騒いでいます。

何だろなーと呑気に座り続ける私に痺れを切らした母がやって来て、一言。

"その座布団はお坊さんの!

早く降りなさい!"


その後何回も、集まると話題に出された私の武勇伝()


だって綺麗な物が好きなんだから仕方ないじゃないの、とブツブツ心の中で呟く私。


あれから何十年。

美しいものを追い求めて、音楽を聴いて、ピアノを続けて、思うように弾けないことが情けなくて、でも、生徒さんたちに美しさを伝えたくて・・・。


そんな変わらぬ自分に呆れながら、日々過ごしています。