トトやんのすべて

トトやんのすべて

猫写真。
ブンガク。
および諸芸術作品への偉そうな評論をつづっていくブログです。

桑野ミッチーのスチールとなると買ってしまう。

 

スチールだのブロマイドだの買いあさっていると、

たまに「これは複製だろ……」というのをつかまされることもあるが……

 

これは睫毛の一本一本まで写りこんでいて、逸品。

複製品ではない。

よい買い物をした。

 

ただ……弁護士の格好よりも

女學生姿……あの制服姿のミッチーなら何倍も良かったのに……とおもう。

(「新女性問答」お姉さんの川崎弘子が藝者さんになって、桑野通子の妹の学費を出して弁護士にする、とかいう話)

(偶然というか、何というか、NHK朝のドラマ 日本初の女性弁護士なんとかかんとかいう話らしいですね)

 

桑野ミッチーグッズ

増えていくけれども、可愛いけれどもキレイだけれども――

これだ! という一枚にはなかなか出くわさない。

 

軍事慰問葉書の桑野ミッチーはどういうわけか軍人コスプレをしていたりするし。

(画像をご覧になりたい方は何回か前の記事をご覧ください)(いつだったかは忘れた)

 

次。

戦前のホテルニューグランドのパンフレット。

 

ホテルニューグランドに関しては

「ホテル・ニューグランド50年史」

「ホテル・ニューグランド八十年史」

という立派な本が出ていて、どっちも購入済みなんですが、

戦前の様子についてはいまいちよく分からない。

 

(50年史、八十年史、なんで数字の表記が統一されていないのか? トマスのミスではない)

 

ので、買ったのですが、

これも良かった。

 

というか、戦前のホテルニューグランドを調べるには

こういう戦前のグッズを集めて行くより他なさそうです。

 

まあ、わたくし以外にそんなことに興味を持つ人が はたして幾人いるかわかりませんが。

 

紙質がしっかりしていて、

大切に保管されてきた、というのもあるでしょうが、とても綺麗。

 

今の……現代のわれわれにとって ホテル・ニューグランドというと

「伝統の……」「シックな……」「質実剛健……」「歴史ある……」

というイメージですが、

 

戦前パンフレットで使われている形容詞は

「チャーミングな……」「ラブリーな……」

というもので、

南国のリゾートホテルでも紹介しているイメージです。

 

その違いがおもしろい。(まあ、出来たばかりだから歴史も伝統もアピールしようがないのだが)

 

パンフレット、機会があればこまかく紹介しようとおもいますが、

「鎌倉に近いです」とか「東京からも近いです」というアピールもしており、

このあたりも現代の感覚とは違います。

 

さいご。

戦前にばかり浸っているわけではないぞアピール。

 

「デューン パート2」みました。

 

パート1のほうが良かったかな。

 

ただし……パート1は TBSラジオの「アフターシックスジャンクション」でちょっと情報を入れただけの状態で見たんですよね。

それに対して 今回パート2は がっつり原作読み込んでから行ったので……

 

原作はガーニイ・ハレックが ポール・アトレイデスのママの命を狙うシーンがあるんですが、

そのあたりばっさりカットされてたりして……

その他いろいろ原作と違うので……

 

「原作との違い」にばかり注意がいってしまったので

あまりよく映画が見れなかった気がします。

 

「原作通りにやれ」というのではないです。

「デューン」みたいな、あんなモンスター小説。原作通りに映像化できないのはわかりきっているんですが……

 

ただ映画館で アイマックスでちゃんと見れたのは良かった。

あいかわらず古い本をあさっております。

 

「サンデー毎日」昭和12年11月21日號

まず……デカい。

 

↓↓右隣の水色の冊子の大きさがA4なので……

B4かな。戦前サンデー毎日は。

 

当時のアサヒグラフも同じサイズです。

 

カラー印刷ですが、

「カラー写真」ではなくて「印象派の絵画」ですね。このタッチは。

 

ちなみに江川なほみさんという方。新興キネマの女優さんらしい。

 

内容。

水久保澄子の離婚について触れてまして……

というか、これ目当てで買った。

 

最近の有名な野球選手の結婚とかにはまっっっったく興味がないのだが、

小津安二郎が惚れていた女優の離婚問題はすごく気になるわたくし。

 

水久保澄子と赤ちゃん、そして元ダンナ。

こんな写真ははじめて見ました。

 

不届きなダンナはタンフッコとかいう野郎らしい。

(フィリピン人である)(日本帝國に醫學の勉強に來ていたんである)

この名前も……はじめて聞いたかも。

 

こやつとはダンスホールで会って知り合った由。

フィリピンの大金持ちとかいう触れ込みだったのだが、

いざフィリピンに渡ってみたら掘っ立て小屋同然の家だったという。

 

小津安っさんがもうちょっと頑張っておれば、こんな結果にはならなかったはずだ。

が、彼はあまりにシャイすぎたのだ。

 

まあ、この話題は興味がある人もいるかもしれないから

あらためて記事を書くかもしれません。

 

お次。

「映画ファン」昭和28年3月号――

 

これはジャケ買いです(笑)

淡島千景さま目当てで買った。

 

15~6年のカラー印刷の進歩が見えます。

戦前の「サンデー毎日」は印象派の絵みたいでしたが、

戦後はちゃんと「カラー写真」になってます。

 

髪型は完全にサザエさん(笑)

 

ジャケ買いだったが中身も凄くて……

 

というか、日本映画の黄金時代で、凄くない訳がないわけで……

 

デコちゃん。(高峰秀子)

いかにも「カラー写真」用の衣装という気がする。

 

ひたすらに可愛い香川京子ちゃん。

 

(「切に自重を望みたい」って偉そうなコメントは……???ですが)

(スキャンダラスな子なら分かるが、香川京子に??)

 

岸恵子ちゃん。

と、ビッグネーム揃い。

 

(この写真は背景の模様が若干気味が悪い)

(モノクロ写真の感覚で撮っているんだろう)

(そういう目で見ると、薔薇の色はルージュの色と揃えた方が良かった)

(その点 ↑のデコちゃんの写真はうまくいっている)

 

記事。

「お茶漬けの味」はけっこう流行ったらしい。

まあ、こうスター揃いでは流行るのは当たり前か。

 

小津監督の次回作は「東京物語」という作品らしいです。

皆樣、期待いたしましょう(笑)

 

となりの写真は小津組とは関係なし↓↓

 

さいごに

日本織物出版社「和服のスタイルブック」(1951)(昭和26年)

というのも女優さんの写真勢揃いで凄かった。

 

やっぱり綺麗な淡島千景さま。

 

↑表紙、誰だろう。

原節ちゃんにしてはふくよかすぎるし……

 

今年は前半とても忙しいので

放っておくとブログの更新が止まりそうなので

 

とりあえず外食の記録を書いておこうとおもいました。

 

ゆり坊はとても元気です。

 

まず 某日。

水戸へ免許の更新に行った帰り。

茨城大学近くの スリランカ料理店「コジコジ」へ。

 

まずラッシー。

カレーがとにかく辛いので、頼みます。

いや、水ももちろんいただけますが、ラッシーの甘さが必要になります。

 

辛さに強いあなたは必要ないかもしれませんが、

辛さに耐性のないあなたは頼むべき。

 

来たぁ。

金属の容器に入っているのカレー。

 

色々ごちゃ混ぜにして食べる。

「ナン」はない。スリランカ料理なので。

ひたすらおいしく、ひたすら辛い。

 

ごはんの上に乗ってるのは ライスクッキー? おせんべいみたいなもので、これまたおいしい。

おいしい、しか書いてないが、おいしいのだから仕方ない。

 

一年ぶりくらいに来たが、甘い系の食材が多くなっていた気がする。

↓↓9時の方向あたりにあるのはパイナップル。

↓↓3時の方向あたりのあるのはさつまいも。

 

カレーは 左側、タコのカレー 右側、鮭のカレー

 

追加で頼んだチキンのカレー。

辛い辛い。

 

わたくし、消化器系あまり強くなく、あと、口の中も……ちょっとしょっぱいもの食べるとすぐに荒れる。

(スナック菓子とか食べると荒れる)

だから辛いモノ あまり食べないようにしてますが。

なのですが、

コジコジのひたすら辛いカレー。

どういうわけか、お腹やられないし、口の中も荒れない。

不思議。

 

たぶん質の良い辛さというのはそうなのかな。

 

 

食後、マサラチャイを必ず頼む。

これまた いろんなスパイス入りのミルクティで……

 

説明のしようがない。

↑↓ノリタケの食器も好きだ。

 

以上、コジコジ。

定期的に行きたくなる場所。

水戸は道がごちゃごちゃしてて嫌なのが欠点。

コジコジ近辺も道が狭い。

あと学生が多いので運轉には注意。

 

コジコジ行った次の日。

正反対ベクトルの食べ物を食べる。

 

ご存知、神田まつや。

数年ぶり。

 

まず焼き鳥(塩)

 

ごまそば。

シンプルイズベスト

コジコジとは正反対だ。

 

自分は ごまそば+焼き鳥 という外道な(?)食べ方が好きです。

 

まつやに行くと「並木藪とどっちがおいしいだろう?」と思い、

並木藪に行くと「まつやとどっちがおいしいだろう?」と思います。

 

双璧です。まあ、誰もが言ってることでしょうね。

 

不思議な事。

数年ぶりに行ったのですが、

僕の記憶の中のまつやは ↓↓このサイズの2~3倍の大きさでした。

でも建て替えたという話は聞かないし……

なぜだろう。

吉祥寺の支店の記憶とごっちゃになってるのかな??

 

んで、その日。夕食は 上野・黒船亭。

 

記事のタイトルに書いたのですが、客層が悪いので

どうしたわけか、二回に一遍は ヘンな奴のとなりに座るので……

 

怖々行ったのですが、時間帯が早かったのが正解だったのか、(5時半ごろだったとおもう)

両隣、上品そうなマダムで助かりました。

 

まず。オーガニックジンジャーエール。

 

黒船亭ウィンターコース というのを頼んだ。

 

T子さん 一皿目 クラムチャウダー

 

わたくし オードブル盛り合わせ 手前カモ肉おいしかった。

 

二皿め わたくし カニコロッケ。

単品で頼むと蟹のハサミがくっついて可愛いのだが、

残念ながらコースにはついてなかった。

 

でも濃厚でおいしい。

 

T子さん。

エビ&カキフライ

 

三皿目は 二人とも 海老とホタテのグラタン。

濃厚なダシがたまらん。

 

美人のウエイトレスさん曰く

「わたしはグラタンが一番好きです。おいしくみえるように撮ってくださいね」

(トマスの野郎がバカでかいカメラで マニュアルフォーカスで撮っていたりするので……)

 

このウエイトレスさんは、

トマスが頭痛薬を飲もうとしていると「お湯をお持ちしましょうか」と言ってくれたり

すばらしかった。

 

この記事、「黒船亭は客層が悪い」といっているのだが、これからそのことを書こうというのだが。

味は素晴らしいし、従業員の方たちは素晴らしいし、

ほんと黒船亭は素晴らしいんです。

 

三皿目についてきたパン。

 

パンはねえ、ホテルニューグランドという絶対王者がいるのでねえ。

あと、T子さんは 黒船亭の濃厚グラタンより

「ザ・カフェ」のドリアのほうが好きらしい。

 

まあ、どこかで読んだ知識によると(合ってるかどうかはわからんが)

日本の洋食の二大系統は 「ホテルニューグランド」系か「帝國ホテル」系だというのだが。

 

僕はニューグランドのドリアはちょっと薄味な気がして

黒船亭の濃いのが好き。

このあたり好みが分かれそうです。

 

最後はジュエルケーキ。

テイクアウトもできます。

 

今日はみはしのあんみつを買う予定だったので諦めた。

 

□□□□□□□□

で、本題。黒船亭さんには申し訳ないが 客層が悪い。

だが、要因は別にもあって……

 

・トマスの野郎があまり喋らず、人の話を聞いたり観察しているのが好き。なおかつ人の好き嫌いが激しい。

・黒船亭、となりの席との距離が近い。

 

というのはあるとおもう。

以下の画像は去年9月……真夏みたいな暑さだった9月の画像なんですが、

斜め隣の「先生」が酷かった。ひどかった。

 

今でも、あいつは あの「先生」は何者だったのか? とたまに話題に出るのだが……

 

・五十代男性(自分でしきりに「五十五の俺が」と言っていた)

・声がデカい。

・声がやけにとおる。

・まわりは「先生」と呼んでいる。

・とにかく偉そう。

 

僕は斜め後ろだったので外見はあまり見ていないし、見たくもなかった。

 

「先生」は、二十代~三十代の女性 三人に囲まれて 接待の様子だったが、

今考えてもよくわからないのは 「先生」の相手をするのはひたすら一人の女性で

(こいつも声が甲高くてうるさかった)

あとの二人は二人で大人しく会話をしていたところ。

となると、接待ではないのかもしれない。

 

先生。

ウヰスキーの「山崎」を偉そうに頼んでいた。

「俺みたいな五十五のジジイが言うのはなんだけどさ」「五十五」「五十五」

「そりゃあ仕事は成功している。金はある」

……のだが、あまり人間関係はうまくいってはいないような感じではあった。

 

まあ、とにかくうるさかった。

一体 何の「先生」なのか? そこだけは興味があったがけっきょく最後までわからなかった。

 

今から考えると、

「あの先生は何者だったのか?」

とおもしろくはあるのだが……

 

食事の現場ではおもしろくもなんともない。

 

黒船亭ではモンスターみたいな奴に出くわす確率が妙に高く……

 

武漢肺炎パンデミック直前。横浜の客船でどうこうやっていた頃、

・爪の長い魔女みたいな女(五十代?)

・東京マラソンが中止になること。東京オリンピックは問題が起こることは

わたしのオラクルカードの予言に出ていた、等大声で喋る。

 

こまかくは書かないが、なんかすごい女と隣り合わせになってうんざりしたことがあったっけ。

 

すみません。

「上野」という土地柄なのかな?

黒船亭さんはほんと何も悪くないんです。

スペースは小さいから、座席の間隔を広げる、とかできないだろうし。

 

今回は両隣上品で良かったのだが……

帰る間際 行列に並んでいたのは

五十代男性(五十代に何か恨みでもあるのだろうか(笑))+キャバクラのお姉ちゃん

の組み合わせで……

(トマスが勝手に想像してるんじゃなくて、キャバクラ云々の会話をしているんだもの)

んー、そうなんだよな。そういう土地なんだよな。

 

以上です。

「だから、もう黒船亭なんか行かない! プンプン!」ということじゃないんです。

通い続けます。通い続けますが、こういう店なんだよ、という不満を書いてみたわけです。

戰前女學生の制服の変遷とかは、まあいくつか資料があって

いつ頃セエラア服が流行り始めたか? とかいろいろ手持ちの資料でもわかるのですが……

下着、となると何がなんだかわからない。

 

わたくしの疑問を整理してみると――

以下の3点にまとめることができるとおもいます。

 

疑問①ブラジャーの着用率はどの程度だったのか?

(ブラジャー・乳バンド、どちらの用語が一般的だったのか? という疑問も付随します)

疑問②ズロースはどんなものであったのか?

(これは家庭で自作するものなのか? またパンツという言葉も目にするが、その棲み分けは??)

疑問③靴下(ストッキング)はガーターリングで留めるのか? ガーターベルトを使うのか?

 

それぞれについて補足しておくと・・・

①……ブラジャー・乳バンドですが、

河出書房新社の「女學生手帖 大正・昭和 乙女らいふ」という本を読むと

戦前の女の子にとっては ブラジャー=胸が大きくて困っている人がする矯正器具

という認識だったのではないか?

と思える節があるから、謎なのです。

(女学生向けの雑誌のお悩み相談コーナーに「おっぱいが大きくて困っているが乳バンドをつけるべきか」という悩みが寄せられたりしている)

 

しかし、以下にみるように映像作品に出てくる女優さんはブラジャー的なものをしているように見えるので・・

謎は深まるばかり。

 

たとえば、「隣りの八重ちゃん」(1934)の逢初夢子。

シュミーズの紐とは別の紐がみえるのでブラジャーをしているんだろうとおもう。

ただ、これはリアリズム描写だったのか?

 

「女優さん」はブラジャーをしていたが、「女學生」はあまりブラジャーはしなかった、

ということもあり得るんじゃないのか?

……わかりません。

 

 

②……ズロースですが、

広告をあまり見たことがないので、自作していたのかな?とおもうわけです。

また映像作品にしろ、スチル写真にしろ、シュミーズに隠れてしまって、

どんなものだか見えない場合が多く、謎です。

③……ようは現代のパンストとかタイツとかがなかったわけです。

そして今のように便利な伸縮性のある素材はないので

リングで留めるか ガーターベルトで吊るか ということになるわけです。

 

えー、この3つの疑問を以下、

い、文学作品

ろ、映像作品

は、雑誌等

にわけて、見て行きたいとおもいます。

 

□□□□□□□□

い、文学作品

 

そもそも……ですね。

吉屋信子先生がきちんと女学生の下着事情を書いていてくれればこんなことにはならなかったとおもうわけです。

 

「わすれな草」は、金持ちわがまま娘・陽子が

主人公・学者の娘・牧子を、むりやり自分のお気に入りの格好に着替えさせるというシーンがあるが

(池田理代子「お兄さまへ…」の御苑生奈々子×信夫マリ子の関係にすごく似ている、元ネタか?)

見事なまでに下着描写は省略されている。

そんなお下品なものは書きたくなかったのだろう(?)

 

下着が描写されている作品。記憶にある限りだと

 

 そして、ようやく眼ざめたまゆみは、煤けた柱の一つ家の中に木綿のお蒲団の中にシュミーズだけを着たまま寝せられて居た自分を見出した。

(ゆまに書房、吉屋信子少女小説選「紅雀」221ページより)

 

というくらいのもので(もしこれ以外にありましたら教えてください)

ズロースは? ブラジャーは? 靴下は? という疑問には答えてくれない。

 

一方、現代の作家だと、今野緒雪先生「マリア様がみてる パラソルをさして」で、

福沢祐巳ちゃんのお着替えシーンがあるので、何を着ているかがわかるし

(ちなみに祐巳ちゃんは「シュミーズ」ではなくて「スリップ」を着る)

(「パラソルをさして」では「ショーツ」と書かれているが、「長き夜の」では佐藤聖さまは「パンツ」という)

 

氷室冴子先生の「クララ白書」では、女子校の寮で、下着をどうやって干すか?

という問題が出てきたりするのですが……(氷室先生はひらがなで「ぱんつ」と書く)

ようするに吉屋信子にとっては下着問題は書くに値しなかったのだろうと思います。

 

男の作家だと……思い出すのは

谷崎潤一郎「青い花」(1922)

横浜の婦人服店での若いカップルの買い物シーンですが……

 

「そのくらいは構わないよ、此れから帽子や靴を買って来て、此処で着換えさして貰いたいんだ。洋服は始めだもんだから何も分からないんだけれど、下へ着る物はどんな物を揃えるんだろう?」

「よござんす、みんな店にありますから一通り揃えて上げます。――此奴を一番下へ着てね、(と、番頭はガラス棚からするすると絹の胸当てを引き出して)それからその上へ此れを着けて、下へは此れと此れを穿くんです。こんな風に出來たのもありますが、此奴あ此処が開いて居ないから、此れを穿くと小便が出来なくってね、だから西洋人は成るべく小便をしないようにするんです。此奴は不便だから此の方がいいでしょう。此れなら此処にボタンがあって、ほら此れを外せばちゃんと小便が出来ます。……此のシュミーズが八円です、此のペティコートが六円ぐらいです、日本の着物に比べると安いもんですが、此れだって、こんな綺麗な羽二重ですよ、……それじゃ寸法を取りますから此方へ入らっしゃい。」

(平凡社、モダン都市文学Ⅳ「都会の幻想」39ページより)

 

このおはなしのヒロインの「あぐり」は女学生じゃないんですが、18歳という設定なので

年齢的には近い。まあ、参考にはなるかな。

大正11年当時、女性が洋服を着ようとすると、まず下着一式から揃えないといけないし、

それがまあけっこうお金がかかった、というのがわかります。

あと、ズロース的なものなのでしょうが「こんなものを穿いておしっこをどうするんだ?」というのが

当時の日本人の感想だったのだろうということもわかります。

 

つづいて

我らが久生十蘭先生となると、「心理の谷」(1940)

これまた平凡社・モダン都市文学所収なんですが

ビルの屋上で礼奴(れいぬ)という変わった名前のヒロインが逆立ちするシーン。

 

 しばらくの後、両手の指の隙間からおそるおそるその方を眺めて見ると、礼奴は、両足の爪先をキチンと揃えて空へおっ立て、シンネリと逆立ちをしていた。

 襞の多い、薄沙(ダンテール)のついた朱鷺色の下着(シュミーズ)が、カトレヤの花弁のように優しく四方へ垂れさがり、その中心から、薄黄色の絹靴下に包まれた二本の足が、長い雄蕊のようにすんなりと伸び上っている。その大きな蘭の花がひとつそこに咲き出したようにも見えたのである。

(平凡社、モダン都市文学Ⅱ「モダンガールの誘惑」307-308ページより)

 

このヒロインもまた女学生ではない。

あとあまりにエレガントすぎて、なにがなんだかわからない。(カンカン踊りの描写みたいな気もする)

――谷崎潤一郎にしろ久生十蘭にしろ、

男の作家が女性の下着を描写する時は、どうしても(?)性的なニュアンスを帯びてしまうようにおもえる。

対して

氷室冴子、今野緒雪の下着描写は民俗学的なんですよね。

最近読みました、長谷川時雨「旧聞日本橋」(1935)も……

これは明治の洋装下着事情ですが……民俗学してます。

 

 しかし、その時分のモダンは、四布(よの)風呂敷ほどの大きさの肩掛けをかけたり、十八世紀風のボンネットや肩に当ものをしたり、お乳にもあてものをして、胸のところで紐を編上げたりするシミズを着て、腰にはユラユラブカブカする、今なら襁褓(おしめ)干しにつかうような格好のものを入れて洋服を着ていた時代である。

(238-239ページより)

 

シュミーズではなくて「シミズ」ってのがいいです。

「紐を編上げたり」というのは今週の「葬送のフリーレン」15話で

フェルンちゃんが着ていたようなあれだろうか??

 

…‥‥というか、これはコルセットか?

もとい、

長谷川時雨の少女時代(明治)はブラジャー的なものはなかったというのがわかります。

あいかわらず(?)ズロースに関しては答えてくれません。

 

ズロースにはっきり言及されるのは……

獅子文六の「悦ちゃん」(1936)で、主人公悦ちゃんは10歳の女の子ですが……

 

やがて彼女は、ドレスを脱ぎ始めた。クリッパーも脱いだ。最後に、おズロも脱いでしまったのは、まァ子供だと思って、大目に見て頂きたい。

(ちくま文庫、獅子文六著「悦ちゃん」30ページより)

 

ズロースを「おズロ」と呼んでいます。

今だと「おパンツ」「おパンティ」と呼んだりするのと一緒か。

 

……とまあ。長々あっちこっち引用しましたが、

女学生の下着事情は、さっぱりわからない。

という現状です。

 

もし、詳しく書かれた文学作品ありましたら、教えていただきたいです。

できれば女性作家のほうがいいかな。

男の作家が書くと余計な願望とか欲望とかが混じりそうで……

 

□□□□□□□□

ろ、映像作品

 

映像作品も、まあ肝心なところははっきり写してくれませんので

あてになりません。

 

あてにならないし、以下紹介する三作品とも男性監督の作品で、

男中心の世界が生み出した作品なので、

余計な「願望」「欲望」が反映されている可能性もある。

ただ、映画という大衆的メディアなので あまり突飛なイメージは押し付けてこないだろう、

その点、或る程度のリアリズムは担保されているとみていいのではあるまいか?

 

というわけで、あてにはならないのですが……

まずは「隣りの八重ちゃん」(1934)の逢初夢子。

お隣の美少女は高杉早苗。

 

 

楕円の鏡、というのがエルンスト・ルビッチっぽい、と思ったのですが、

次にご紹介する「玄関番とお嬢さん」にも楕円形の鏡が出てくるんですよね。

単に流行っていただけか??

 

どちらも松竹作品だから

同じ鏡を使いまわしている可能性もあるな。 

 

 

 

 

 

 

これはこの記事の最初に出した画像↑↑ですが

以上の着替えシーンからわかること・わからないことを書き出すと

 

・ブラジャー・乳バンド的なものをしているようだと推測される。

・ズロースを穿いているっぽい。

・シュミーズ・ズロースどちらもシンプルなデザイン(レース等は使っていないようだ)

・靴下に関してはなにもわからない。

 

ただ、上記のようにシンプルな……清楚な下着、というのは作り手の願望が混じっている可能性もある。

 

お次。

「玄関番とお嬢さん」(1934)の水久保澄子ちゃん。

ブルジョワ、わがままお嬢さんという設定。

 

こちらのシュミーズは

八重ちゃんのとは違ってセクシー要素があります。

逢初夢子→コットン

水久保澄子→シルク

かな? なんにせよ薄手の生地。

 

やっぱりブラジャー・乳バンド的なものをしているような気がする。

 

 

あらためて見て……

はじめて このネズミに気づいた↓↓

本題とまったく関係ないですが……

 

映像作品最後は

エルンスト・ルビッチ「陽気な中尉さん」(1931)

 

日本の女学生の下着事情とはまったく関係ないが、30年代当時の最新の……

ア・ラ・モードの下着事情は何かしら伝えてくれるだろうとおもいます。

 

まずミリアム・ホプキンスの、ひざ下までくるズロース。

 

クローデット・コルベールのは太股が丸見え。

 

ミリアム・ホプキンスはどこかの王家の姫様で

権力を使って イケメン・プレイボーイのモーリス・シュバリエと結婚するんですが、

シュバリエにはクローデット・コルベールという ミュージシャンの恋人がいる。

 

細かいあらすじは忘れたが、クローデット・コルベールはシュバリエを諦めて

ミリアム・ホプキンスの姫様に現代風のお洒落を伝授する、というシーンです。

 

捨てられ、焼かれるミリアム・ホプキンスのズロース。

なんともフロイト的な。

 

で、エロく完成した「ジョージア・クイーン」こと、ミリアム・ホプキンス。

まあ、ルビッチはホプキンスに惚れていたらしいから、

単にこういう恰好をさせたかっただけという可能性もある(笑)

 

本題に戻ると……

・やはりシュミーズ(これはスリップか)に隠れてしまって肝心なところはわからない。

・ブラジャーはしているのかわからない。

・ズロース、パンツ的なものの形状もわからない。

・靴下(ストッキング)をどうやって固定しているのかもわからない。

(たぶん、ストッキングはいているとおもうのだが)

 

わからないことだらけですが、

ハリウッドの最新形態、最新下着はこんなものだったようです。

(あるいはローレン・バコールの自伝とかを読みなおせば、詳しく書いてあるかもしれない。バコールはモデルさんもやっていたし)

 

□□□□□□□□

は、雑誌等

 

手持ちの戦前雑誌をひっくり返します。

 

まず「少女畫報」 畫は「画」の旧字です。

昭和三年十月号。これは「女学校新流行語集」目当てで買ったのですが、

(とても高かった)

(表紙は高畠華宵先生である)

 

下着関係の広告はなかった。

かわりといってはなんだが「ビクトリヤ月経帯」の広告。

十月号なので秋っぽいイラストです。

 

ちなみに戦前の女性向け雑誌には各社の「月経帯」の広告が多いです。

これは自作できるものではなかったからか。

 

次。

昭和十二年 婦人俱楽部六月号付録 

これは桑野通子が表紙だというので買ってしまったのだが、

実物は カラー印刷が気持ち悪い感じのシロモノ。

(まあ、たしかに桑野ミッチーではあるが……なんか北朝鮮のポスターみたい(笑))

 

だが広告はおもしろかった↓↓

・「乳バンド」「乳房バンド」ではなくて「ブラジャー」と書いている。

・やはり、ズロースに関してはわからない。

・コルセットにストッキングを吊るすパーツがついている。

 

ズロースはやはり家で作る物なのか??

あと「ブラジャー」ですが、

現代の広告でも「ショーツ」「パンティ」などと書かれるが、

実際に口にする場合は「パンツ」だったりする。

つまり、「ブラジャー」はファッション業界の用語ではあったのだろうが、

一般的にどの程度普及した言葉だったのか? そこらへんもわからない。

 

お次。

前回の記事でも登場した

昭和十二年五月特大号の「主婦之友」

(ちなみに姉妹雜誌「少女之友」はこの時代、中原純一の表紙でめちゃくちゃ高い。とても手が出ない)

 

巻末の主婦之友の通販コーナーみたいなところに

「夏の下着」が特集されていて興味深い。

 

〇婦人女學生用新型スリツプ……八十錢

胸の線が美しくでるやう特別の工夫がこらされてゐる今年の新型です。キヤラコ製で衿にはレースの飾りをつけてあります。丈は二尺七寸、八寸、九寸の三種ございます。

〇婦人女學生用新型シユミーズ……五十五錢

本年は特に保ちのよい極上メリヤスを選び入念に仕立てました。伸縮のきく上等地なのでそれは着心地のよいものです。どうかお試し願ひます。

〇特選乳バンド

絹ポプリン製……五十五錢

ベンベルグ製……八十五錢

掛け具合のよい點や仕立の入念なところをぜひ見ていただきたいと思ひます。お洗濯も充分ききます。

 

そもそもスリップとシュミーズの違いだが、ググってみると

スリップ→ドレスの下に着る。

シュミーズ→普段着の下に着る。

ということらしいが、「マリみて」の祐巳ちゃんが「スリップ」を着ていたように、

一般にはそんな厳密に使い分けているわけではない言葉ではあります。

が、昭和12年当時はきちんと使い分けていたのかもしれない。

 

スリップ・シュミーズはコットン製

乳バンドはシルクもしくはベンベルグ(高級な化繊?)

にしても、谷崎潤一郎の「青い花」の下着が滅茶苦茶高価なものだというのはわかる。

「羽二重」というからもちろんシルクで、しかも外国製品だったから高かったのでしょう。

 

乳バンドはサイズは特に書いてないのが謎。

ワンサイズ・フィッツ・オールか??

 

つづきを見て行きます。

 

〇新案ズロース

厚地メリヤス 一枚五十七錢 二枚一圓十錢

夏向メリヤス 一枚四十五錢 二枚八十五錢

新案パンツ

(スムース織)一枚四十錢 二枚七十五錢

どちらも脱がずに用便をたせる新型です。布地をたっぷり使つてあるので、丈夫ですし、格好もよろしうございます。以上の送料は各三枚まで内地十錢、植民地四十二錢。

〇特選コルセツト

八吋幅 實用型一圓十錢 特製一圓五十錢

十吋幅コルセツト 二圓五十錢

ゴム質を特に吟味して特製したもので、ガーターの具合も充分試驗濟みです。よそではこの程度のお値段では到底購められぬ格安品です。『十吋幅コルセツト』は自由に坐ったりかがんだりできるやう中央に特別のゴムが入れてあります。

 

今迄あまり登場しなかった「ズロース」「パンツ」が登場します。

「パンツ」は我々がお馴染みの形をしているやつで 「ズロース」は太股あたりまで覆うものでしょうか??

やはりおしっこ問題が問われております。

コルセットで、「ガーター」うんぬんと書いてありますから

上記のKMコルセットと同様の形状なのでしょう。

 

わからないのはコルセットは「吋」インチ単位なのですよね。

 

お次。

エロティック・シネマ・アルバム

という謎の本。

 

出版社、出版年月日不明。

おそらくアメリカの出版物を丸パクリして 日本の女優さんの写真をちょっと付け足したものではあるまいか。

収録されているメンツから判断するに

20年代終り~30年代初めの本だと思われる。

 

んーしかし男性視点な感じで

よくわからない。

 

ガーターベルトを調節しているようにもみえるし、リング、バンド的なものをいじっているようにも見える。

 

「陽気な中尉さん」のミリアム・ホプキンス同様、

丈の長いズロースは履いていないようです。

といって、どんなものを……

現代の「ショーツ」にあたるものはどんなものなのか? わからない。

 

日本の女優さんのページもいちおう見ておく。

五味國枝さん。

 

峯吟子さんは戦前のセクシースターだったというが、

下着事情は何もわからない。

 

ルパン三世の峰不二子の苗字はこのあたりから来ているのか??

 

長い記事。

ようやく最後です。

おなじみアサヒグラフ 昭和三年八月一日號

 

海外の漫画を紹介しております。

端艇競漕を見物なさる御婦人

……實に盛大な光景だつしやろ……

 

まあ、1928年当時の下着事情はわかるか、と。

 

皆さんズロースをはいておられますが、

靴下(ストッキング)の固定方法は人それぞれだというのがおもしろい。

(というか、いちいち描き分けているのがすごい)

 

ガーターベルトかコルセットみたいなもので吊るす人もいるし、

リング・バンドで留める人もいる。

 

以上、長い記事だったですが、

結論は「わからない」という一言につきます。

 

お分かりの方、ご教授願いたいです。

えー禮子さん。

「禮」は「礼」の旧字です。

そこをはじめに説明しておかないといけない。

北見禮子さん=北見礼子さん

 

もとい、

前回の記事で 慰問用絵葉書の↓↓

この面長美人の正体がわからない、と書いたのですが、

hiki-take40 さんにいただいたコメントで正体がわかりました!

ありがとうございます!

 

手持ちの

文藝春秋「ノーサイド 1995年9月号 総特集キネマの美女」

の北見礼子さんの写真と 例の写真を並べてみる。

 

・洋装―和装

・微笑んでる―おすまし顔

と、ぱっと見別人に見えたのですが……

 

鼻の形がまったく同じ!

鼻・唇・頬のあたり、同じ!

目の形といい、眉の具合といい、顎の曲線といい、同じ!

 

北見禮子さんで決まりでしょう。

 

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次。花柳小菊さん。

これは自力で解明しました。

 

この慰問用絵葉書のロリ顔のお姉さんの正体がわからなかったわけです。

んーなんとなく田中絹代っぽいけど……

絹代ちゃんより目がぱっちりしてる気がする……

 

あと……妙な色気は何だ? 一体……

 

国防婦人会のブロマイドでも多数、この謎の人。

 

下の二枚の写真、悪名高い「千人針」持ってますね。

戦場だとノミだかシラミだかの巣になるとか。

 

おもしろいのは割烹着着ても、この人、主婦っぽくないのよね。

 

さて、誰なのか。

 

それが……

「主婦の友」昭和12年5月特大号を読んでいたところ、あっさり判明。

 

↓↓下の写真をみて、すぐに「あ。慰問用絵葉書の謎の美女だ」と思い出した。

 

小菊姐さん。

「ノーサイド」の記事によると、ロリ顔に似合わず(?)背の高い人らしい。

 

あと妙な色っぽさは芸者さんだったからなのか??

「其れ者あがり」ってこういう人を言うのか。

 

昭和12年の「主婦の友」はこんな感じです。

 

「原節子と高杉早苗の表情合戦」というおもしろそうな企画に惹かれて買ったのですが……

それ以外にも色々面白かったので、

これはこれで後で記事を書くかもしれません。

 

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続いても古本。

こんなオシャレな表紙の写真集。

横浜を中心に、鎌倉、江の島、箱根の写真もある。

 

「第二十回関東東北医師大会 記念写真帖」

 

お医者の集まりが横浜であって、で、その時の景品みたいなものなのか?? と推測する。

 

写真はこんな感じです。

大さん橋。

 

夜の伊勢佐木町。

 

たぶん、今の有隣堂のあたりだと思うのだが……

右手のビルが野澤屋(のちの松坂屋)じゃないかとおもうのだが。

野澤屋のならびに「カワイクツテン」があるはずで、写真に「カワイクツテン」の看板があるので。

 

ただ、「近江屋」も野澤屋、カワイクツテンの並びにあるはずなのだが

写真の左側に「近江屋」

両サイドに店があったということなのか?

 

とにかくわからないことだらけ。

しかし、1930年当時の賑わいがわかります。

 

愛しのホテルニューグランド。

このアングルからの写真は初めて見たかも。

 

しかし、雰囲気は変わらないのはさすがである。

ホテルニューグランドは開業から2,3年。

山下公園は出来上がったばかり、という時代だとおもう。

 

写真はしかし、総じて絵葉書的で……

僕個人としては、人々の生活が垣間見れるようなのが見たかったかな、と。

アサヒグラフに出てくるようなスナップ写真ね。

 

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さいご。

書物はかび臭い古本ばかり読んでますが――

 

テレビは配信のアニメばかり見てます。

というか、アニメ今まであまり見てこなかった反動が今になってきているのか?

 

「葬送のフリーレン」

あと、ネットフリックスで「ヱヴァンゲリヲン」(今頃??)見てます。