新生UWF第4戦、9月24日の博多スターレーン大会。
この日、俺の対戦相手になった内藤恒仁は当時はまだ珍
しかった逆輸入ファイターだった。彼はフロリダのマレ
ンコ道場で練習を積み、現地でデビューしたという。
マレンコ道場でコーチをしていた空中さんの推薦で参戦
が決まり、俺自身はあまり良い気がしなかったが、試合
前から雑誌で取り上げられていた。
内藤は試合の数日前に来日し、道場に来て練習に加わっ
た。しかし、スパーリングで手を合わせてみると、実力
的には大したことがない。
「早めに潰していいよ」
先輩の誰かが俺の耳元で、そう呟いた。俺としてもプロ
の試合として成立させるには、そうするしかないだろう
と感じでいた。
ヘタに試合を長引かせたら、彼の粗が目立ってしまう可
能性がある。俺との試合は内藤の査定マッチになるはず
だったのだが、道場で早々に結論が出てしまった。
この内藤戦も“プロレス”ではなかったと言い切ってい
いだろう。というより、こういった試合を含めて、“U
WFのプロレス”と言える。
俺はがむしゃらに前に出てくる内藤に対し、冷静に対処
したつもりだったが、試合後に神さんから「そんなんじ
ゃダメだ!」と雷を落とされてしまった。確かにあとで
映像を見返すと、説教されてもおかしくないほど張り手
もキックも雑だった。
このときのフィニッシュは、逆片エビ固めである。試合
中に咄嗟に出た技で、内藤の体が柔らかかったこともあ
り、思った以上に反り返った。
このシーンは博多スターレーンに集まったファンに大き
なインパクトを残したようで、以来、俺は「博多男」と
呼ばれるようになる。
また、逆片エビ固めも「シャチホコ固め」と命名され
現在まで続く俺の代名詞となった。
中野は、鼻の奥が切れやすく、すぐ、鼻血がでる。その
鼻血を「フンッ、フンッ」と巻き散らかしながら試合を
する。
観客が「俺は、中野が好きだーっ」
「俺も、中野が好きだーっ」と歓声を上げる。
まさに「博多男」の面目躍如といったところであった。
実際に、この内藤戦は会場の反応も良かったのだが、神
さんにダメ出しをされるようなファイトをきっかけに「
中野は博多で人気者になった」と言われるのは内心、複
雑なものがあり、試合内容については今でも納得してい
ない。
結局、内藤の新生UWF参戦はこの1試合で終わった。
空中さんは継続的に出場させたいようだったが、会社側
の答えは「NO」だったということである。