「象印歯磨」「タイガー歯磨」「キリン歯磨」──時代が今なら
魔法瓶やビールのメーカーが新しい歯磨きを出したのかと勘違い
しそうだが、これらは明治半ばに名の知られていた歯磨きブラン
ドなのである。
当時、創業者の名を採って「小林富次郎商店」といっていた「ラ
イオン」が「獅子印ライオン歯磨」を売り出したのもその時代、
明治29年のことだった。
同社の創業は、その5年前の明治24年で、当初は創業を支援し
てくれた商店の委託販売品が中心だった。
石鹸原料や、その頃、日本の一大輸出産業だったマッチの軸本、
塩酸カリ、赤燐などの商品である。
しかし富次郎は、原料販売では利益が出ないと考え、その後、
石鹸製品の製造へと乗り出していく。
石鹸メーカーだった同社が、さらに歯磨き製造に乗り出すのは、
クリスチャンだった小林が知り合いの北山巌(いわお)牧師か
ら米国の歯磨き粉の製造の話を聞き、歯磨き事業が将来有望で
あると考えたことがきっかけだった。
「ライオン」という名称も、「ライオンなら牙も丈夫だし、
歯磨きの商標としてうってつけではないか」と北山牧師に勧め
られ、小林もまた「百獣の王であるから縁起も良い」と考えて
採用したものだった。
「獅子印ライオン歯磨」のヒットで、小林富次郎商店は大正7
年に歯磨きメーカー「小林商店」に改組し、翌年これとは別に
石鹸事業を行う「ライオン石鹸」を新たに設立した。
その後、小林商店は「ライオン歯磨」に、ライオン石鹸は「ラ
イオン油脂」に改称され、昭和55年に合併して今日の「ライ
オン」となった。
アルファベット表記された「LION」ロゴの商標登録に当た
っては、この文字が逆さに見ると「NO17」ナンバー17に
見えるため、この「NO17」も登録されている。
同社は今日、歯磨き製品でトップメーカーになっており、化粧品
食品、医薬品分野にも進出している。