・「新聞の~」レビュー・日本の金融と役所の規制 | ぐーすけとりきのブログ

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日銀が金融機関に対して貸し出しを行うときの基準金利である公定歩
合は今やないも同然だ。

しかし、政府はいまだに公定歩合のあった時代のままの金融政策をと
っているように思えるし、財務省も依然として命令すれば銀行は何で
も言う事を聞くだろうという姿勢だ。

財務省の体質をどうとらえるかは別にしても、世界と戦うには頭が古
すぎる、と著者はいう。

しかも、日本の銀行に意気地がない。

長銀は政府出資が50%入っていたのを返上したのだが、その時の頭
取は「きみたち、喜び給え。きみたちも頭取になれるようになった」
と行員に言った。

大蔵省からの出資を全部返済したから、頭取になれれるように皆し
っかり頑張りなさいということだ。

頭取の話に皆は、ありがたき幸せと頭を下げたのだが、著者は後で
その頭取に「頭取が大蔵省から来ようが、どこから来ようが、立派
な頭取のもとで働きたいのです」と言った。

出身にかかわらず、バンカーとして優秀であれば関係ないからだ。


ここで、小噺をひとつ…

多摩大学に野田一夫さんという学長がいた。

立教大学から多摩大学に新設の学長としてきた人だ。

この人は痛快な人だったから、野田さんが学長になるなら見物しよう
と思って、多摩大学に行き、たっぷり堪能したという。

その話の一つに文部省が全国の大学の学長を何十人も呼んで説教を
垂れる会合があった。

文部省の人は「これからは子供の数が減り、大学は冬の時代ですか
らこの対策を真剣に考える必要があります。文部省としては大学の
新増説を抑えていくつもりです。大学が多過ぎると倒産しますから
倒産しないために文部省の指示に従ってください。まず……」とあ
れこれ指示をした。

野田学長は文部省の人の話が終わると手を挙げて、「今、おっしゃ
ったことを全部実行すれば、大学の倒産はなくなるとおもいますか
?」と質問した。

すると、「まったくなくなるということはないと思いますが、そう
いうときはご相談に乗りますから、どうぞいらしてください」と答
えた。

野田学長は、さらに次のようのに言った。

「相談に行くと何をくれるんですか。

人とカネ、それに口出しでしょう。

それで倒産がなくなりますか、なくならないでしょう。

文部省が人を派遣し、カネを出し、口を出して、その結果がやはり
倒産だったら、これは大変な問題ですよ。

文部省の責任問題になります。そんなことはおやめください。

少なくともわが多摩大学は絶対にご相談に行きません。

潰れるときは黙って潰れますから、ご安心ください。

だから、このような会合にも、もう呼ばないでいただきたい」

サラリーマンと実務者には、モノを言える範囲が違っていた、と
いうことだ。


前章で「足の長いお金が無くなったのが問題だった」と述べた。

著者のいた長銀も含めて長期信用銀行が設立され、名前にも長期信
用が付けられた。

だが、実は長期信用というのは名前だけだった。

たとえば、お客さんが5年間お金を貸してくれと言ってやってくると
「はい、では5年間貸します」とは言うものの、「しかし分割返済で
すよ」と釘を刺す。

つまり、返済は1年据え置くけれども、2年目からは少しずつ返済し
れもらうのだ。

お客さんとしては、正味5年間借りられると思っていたのに、実際
には1年後にはもう返済が始まってしまう。

それでも、お金を借りたいというお客さんがいっぱいやってきた。

返済猶予1年間で、あとは元利払いの返済ということだ。



国家と金融機関の関係について言えば、日本のバブル崩壊、アメリカ
のリーマン・ショック、ユーロ危機などでは大きな金融機関が巨額の
負債を抱えて倒産の瀬戸際に立たされることになったのだが、国家は
そうなった金融機関が倒産しないように公的資金を投入することがよ
くある。

これは国民生活や金融市場に悪影響が及ぶので仕方がないとはいえ、金融機関はうまくいっているときには自分の儲けにするのに、失敗したら国民の税金で助けてもらうわけで、国民にはすこぶる評判が悪い。

しかも負債が大きいほど助けてもらえるため、アメリカにも“Too
Big Too Fail”(大きすぎて潰せない)ということわざがある。

リーマン・ブラザーズが公的支援を受けないで倒産してしまったこと
に金融関係者はむしろ驚いたくらいだ。

日本にも三大メガバンクがあるので、将来、大きな金融危機があれば
、また同じ問題に突き当たる可能性がある。

「大きすぎて潰せない」ということを繰り返すようでは能がないのだ。

それを防ぐには何よりまず、権力が集中したシステムをつくらないこ
とが大事だ。

多極分散で自由競争にしておき、巨大銀行は絶対許容すべきではない。

本来、三大メガバンクも解体しなければならない。

100倍大きな銀行は作れるが、100倍賢明な経営者はつくれない
からだ。

したがって、すべてを無尽組合や共済組合、昔で言えば相互銀行、
信用金庫にしてしまうとよい。

大失敗による大無駄がなくなる。

外国と張り合うような巨大な金融機関が必要なのは戦争するときだ
けだ。

戦争しないときに大きな金融機関はいらない、というわけだ。


また政府の立ち位置については、以下のように述べる。

著者の立場は、政府は何もするな、政府は小さくなれ、というもの
だ。

大きな政府だけでは無駄ばかりになってしまうからだ。

どうすれば政府が小さくなるかについてのいちばんの名案は、キャ
リアと呼ばれる役所の幹部になっていく国家公務員Ⅰ種の採用を半
分にへらすことだ。

国会公務員の総人口から10万人減らせといったことではなくて、
一つの省でこれまで毎年キャリアを10人とっていたとしたら5人
に減らせばよい。

そうすれば自然に政府が小さくなる

国家公務員が毎日せっせと働いているのは公団や公社など先輩のポ
ストをつくるためで、20年間くらい国家公務員Ⅰ種を減らしてい
けば、天下りさせる人も減るので、国家公務員の仕事が減って小さ
な政府になる。


また、役所は企業に対して上から目線で対応し、こっちのいうこと
にはなんでも言う事を聞くと思っている。

日本の役所の横槍やお節介を蹴飛ばそうと思ったのは、ソニーを
創業した盛田昭夫さんだった。

1986年から92年まで務めていた経団連副会長のとき役所の行政
指導を改める行政手続法の制定を実現した。

行政指導は役所が企業などに対して行う指導、勧告、助言である。

本来は従う法律上の義務はないのに、日本の企業は後で役所から意地悪されるのを心配して、しぶしぶ行政指導に従ってきた。

それが、1994年からは行政手続法のお陰で、行政指導の場合、
役所にそれを書面で出させることができ、裁判に訴えて判断してもら
えることになった。

このとき盛田さんは、ソニーがこの行政指導法発動の第一号になる
つもりだったという。

それで会社の幹部たちに「役所は企業に対してこの法律を使わせない
ように嫌がらせするだろうから、最初にソニーが使わなくてはならな
い。

役所からワケのわからない指図が来たら、必ずそれを書面にしてくれ
るように要求し、書面が出てきたら裁判所に訴えるつもりだ」と言って
いた。

ところが、役所も盛田さんの意図を感づいたらしく、ソニーにだけ
は行政指導がこなかった。

盛田さんも拍子抜けしたのだが、同時に「お陰で、ソニーは今、や
りたいことは何でもできる。役所は口出しも足を引っ張ることもで
きない」と喜んでいたという。

これが国にぶら下がらず、自立していくということだ。


盛田さんの時代は業績だけでなく組織としても元気が良かった。

盛田さんがいなくなると、とたんに弱くなってしまった。

ソニーも過去の先輩の意志をよくよく考えるべきだ。


以上の他にも

・BIS規制での時価評価が日本の銀行の破綻原因となった

・戦前の鈴木商店を教訓にできた長銀

・間違ったグローバリズムを正すことから始めるべきだ

・お金が預金をするなら銀行が担保を出すのは当たり前

など、珠玉の発言集、読むべし。

          「新聞の経済記事は読むな、バカになる」

                 日下公人・渡邉哲也 共著