警察庁のトップは国家公安委員長ということになって
いるが、防衛大臣と同様しょっちゅう交代している。
実際2年おきに交代していることから、実質的には
警察庁長官が組織のトップとしてすべてを把握している。
警察庁組織には、内部部局として長官官房と生活安全、
刑事、交通、警備、情報通信の5局、さらに附属機関と
として鑑識技術などを研究している科学警察研究所などがある。
また、これら内部部局と並立して地方機関として東京都を
所管する警視庁、北海道警察本部、さらには東北、関東、
中部、近畿、中国、四国、九州の7管区警察局で構成されている。
警察庁長官と警視総監はどちらが偉いというわけではなく、
現場警察のトップが警視総監で、警察庁長官は行政職の
トップという格好だ。
この場合、警察庁長官という名称は職名であり、階級ではない。
一方、警視総監というのは職名ではなく階級のひとつになって
いる。ランクとしてはどちらも拮抗しており、比べることは
できないというのが正しい見方だ。
実際の人事を見てみると、警視総監をしていた人が
警察庁長官になることはなく、その後は第二の人生として
外郭団体の理事長になって、現場から離れていくのが
一般的なコースといえるだろう。
組織体系としては、警察庁長官の下には次長、さらに
その下に局長がいる。次長ポストは実質的に「次期長官ポスト」
で、時期が来るとトコロテン式に長官に任官するケースが
ほとんどだ。
警視総監の一つしたのポストは副総監だ。こちらもトコロテン式
で、このポストにつくことは、次期警視総監になるという
意味合いをもっている。
この副総監というポストは警務部長を兼務することが多い。
警務部というのは、簡単に言うと軍隊の「MP」に相当する
部隊だ。
つまり警察官たちの目付け役という役割を担うものだ。
警務部長になると、すべての警察官の勤怠・不正に目を
光らすことになり、警察官にとっては非常に怖い存在と
いうことになろう。
長官、あるいは総監への最短コースにあたる次長、副総監
になるためには官房長に就任することが定石だが、これも
人事の妙があって、「部下が手ひどい失敗をした」
「マスコミで取り扱われるような事件を起こした」などと
いうことがあると、他の局長が官房長を飛び越して次長
ポストに就いてしまうしまうこともある。
人事は最後まで水物で、特に明確な決まりがあるわけではない。
官房長や局長あたりにまで出世するとだれもが、自分の
在任中に大きな問題を起こさないようにと神頼みをする
毎日になる。
警察庁の幹部職は一般にキャリアと呼ばれる人達で、彼らは
入庁後、見習いで各警察署に配属され、ベテラン警察官の
横について、実務のOJTをする。
もちろん、警察庁にいる人すべてがキャリアというわけでは
ない。各道府県の警察署から出向したものも多く含まれている。
生え抜きの事務官や技官といった人たちもいる。技官と呼ばれる
人たちの多くは、科学警察研究所という全国の鑑識の親玉部局
に集まっている。
ごく希なケースではあるが、各道府県から警察庁に集まって
きた警察官の中で、特に頭が切れて年齢も若く、階級も
警視以上の有能な人材は、警察庁から別の道府県の県警に
キャリアと同等の権限を持って出向させられることもある。
将棋で言えば「歩」だったものが「ト金」になったような
ものだ。それまでは派遣先の県警所属だったものが、ト金
になった瞬間から、警察庁の所属に変わってしまう、
いわば地方公務員だったものが突然、国家公務員になって
しまうこともあるのだ。
警察庁の中にも捜査課があるが、これらに所属する人は
事件の捜査をするというよりも、むしろ捜査の調整を
する役割だ。
オウム事件を例に取ってみよう。
これは全国各都道府県にまたがる一大テロ事件だった。
こういう場合、都道府県の警察本部の連携をまとめる
必要が出てくる。
この役割を担うのが警察庁の刑事局捜査第一課で、
全国でも事件捜査を指揮する。言い換えると、警察庁捜査課
に所属する人たちは、地方警察本部の捜査部局を中央集権的に
取りまとめるのが役目ということになる。
実際に事件が発生しても、前線に出ることはなく、後方で
現場の様子を眺めているという感じで、被疑者と格闘し
血だらけになりながら、逮捕するというのは、いつも
現場の刑事たちの仕事なのだ。