潜水艦の勤務はもっとも過酷、というのが古くから海軍のなかで
常識だった。
たとえば、西ドイツ映画「Uボート」(1981年公開)にも
描かれた第二次大戦の潜水艦Uボートは、全長が67メートルで、
幅が6メートルあった。単純計算すれば、高級ホテルのツインル
ームが約20室は並ぶ広さになるが、そこに燃料になる重油や食料
真水(まみず)魚雷が大量に積み込まれると、人間のために残され
たスペースはごく限られたものとなった。
しかも、艦内の温度は35℃にも達して蒸し暑い。それなのに、
真水は超貴重品なので、水分補給もままならない。汗でベトベトし
た体も、たまに飲み水の余りで拭くだけなので、艦内には44人も
乗り込んでいたクルーの体臭がこもった。
また、食べ物も、生肉や野菜、果物は長くもたないので、乾パン
保存食、缶詰に頼る事になる。不潔な体にビタミン不足もあって、
皮膚病が蔓延するのが常だったという。
さらに、出航から1ヶ月を超えると、疲労に酸欠、気圧変化など
が加わって、クルーたちは耳鳴りや吐き気に悩まされ、4~6時
間の勤務を終えると、倒れこむようにしてベッドに横たわったと
いう。
しかも、Uボートには、軍医が乗り込んでいなかった。潜水艦
クルーの生還率の低さを考えると、貴重な存在である軍医を乗り
こませて死なせるわけにはいかなかったからである。
というUボートの時代と比べると、現在の原子力潜水艦は、まる
で「天国」のようだ。原子炉で発電した電気をふんだんに使える
ので、冷房や空調は完備。淡水も海水から豊富に造られているので
シャワーや洗濯機を使うこともできるし、冷蔵庫や冷凍庫のなかに
はジュースやアイスクリームなどが常備されている。
ただし、ひとり当たりのスペースが狭いのは、昔と同じ。一般
クルーの簡易ベッドは、ほとんど人間一人分の幅で、高さもない
ので寝返りは打てない。