陸上競技の競争では「位置について、用意」という合図が用い
られている。昔はいろいろな合図をしていた。たとえば明治16
年、東京大学と大学予備門の陸上運動会でのスタート合図は、
「いいか、ひ、ふ、み」というものであった。
すなわち、このときのスターターはこうもり傘を手にし、「いい
か、ヒー・フー・ミー」といって傘を振り下ろしてスタート合図を
した。
大正2年の第一回陸上競技会でのスタートの合図は「支度して
用意」。大正6年に東京で開催された第3回極東選手権大会では
「オン・ユア・マーク、ゲット・セット」という合図が用いられ
この英語の合図は「位置について 用意」に変わるまで、一般
に広く使われた。
その「位置について 用意」だが、それが懸賞公募の当選作で
あったことはあまり知られていない。
昭和2年、日本陸上競技連盟が競技用語の邦語化を決定し、
従来用いてきた英語のスタート合図に代わる日本語の合図を
一般に募集した。その当選作が「位置について、用意」であった。
その言葉を応募したのは、当時、東京の神田に住んでいた山田
秀夫さん
そのころはクラウチング・スタート(肩幅の長さだけ離して
両手を地につけ、両足を前後に開いて、かがんだ姿勢から両足
で地を蹴ってスタートする)が一般的で、スタートの際、選手
たちがスタート位置にある土をスパイクで掘って脚に合わせる
姿を見ていたら、自然とその言葉が浮かんできたそうである。
国際競技会でのスタート国際競技会では、スタート合図は英語、
フランス語、または競技会の開催国の言語で行なうことが義務づ
けられていた。しかし、2006年の競技規則改正によって、世界陸
上競技選手権大会とオリンピック、IAAF陸上ワールドカップでは
英語でスタート合図をすることになった。これに合わせ、日本の
教育現場や競技大会でも、国際ルールに慣れる意味合いも込めて
英語でのスタート合図をするのが標準化されつつある。
短距離走にカテゴライズされる400m以下の競技の場合、スタータ
ーはまず「On your marks(位置について)」の言葉で選手を
スタートラインに並ばせる。その後「Set(用意)」の合図で選手
はクラウチングスタートの姿勢になり、ピストルの合図でスター
トするというわけだ。