▽1 豪雨で河川が決壊し、家が呑み込まれたら、どうする? | ぐーすけとりきのブログ

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 夕方から降り始めた雨は、ますます雨足を強めていった。
気象庁は、長崎県全域に大雨洪水警報を発令し、厳戒態勢に
入っていた。


 寺西耕二は、経営する「寺西酒店」を早々に店じまいして帰宅
することにした。この店を手伝っている妻の志保は、店の
シャッターを閉めながら言った。
「お父さん、ラジオじゃ大雨洪水警報とやらが発令されたんで、
厳重な警戒をしてくださいといっているけれども、いつも大した
ことないし、厳重な警戒をしてくれっていわれたって、いったい
何をすればいいんだろうねぇ」


 同じようにこの店を手伝っている長男の充も、配達用の
バイクを片付けながら、
「仕事なんかさっさと切り上げて、早く家に帰れっていうことじゃ
ないの」
と気楽な調子で答えた。


「今晩はこんな雨じゃ、お客も来そうにないし、なにか妙に疲れた
から早く帰って寝るとするか」」
耕二もそういって手早く店じまいの準備にかかった。


 充の運転する車は土砂降りの雨の中、ワイパーをせわしなく
動かしながら、耕二と志保を乗せて堤防沿いの道を走っていった。
川の水かさは多少増えてはいたが、とくに異常な増水は見られな
かった。5時間後にこの堤防が決壊することなど、誰も想像だに
していなかった。


 耕二の家は、この堤防のすぐ近くにある一戸建て。付近には
20戸ほどの住居があったが、どこの家も雨戸をしっかりと閉めて
いたため中から漏れてくる光はまったくなく、漆黒の中、ゴーッ
という川の流れる音だけがあたりに不気味に響いていた。


 午後10時になっても、雨足は一向に衰える気配がなかった。
テレビニュースでは、2時間に300ミリという記録的な
集中豪雨となっていて、河川の急激な増水な増水のため一部
地域では、住民に避難命令が出たことを報じていた。


「お父さん、うちは大丈夫だろうねえ」
不安げな様子の志保に耕二は
「大丈夫に決まってるだろ。堤防が決壊しない限り、ここは
安全なんだよ。あの堤防が決壊するようじゃ長崎中が水浸しだ。
と答えていたものの……。


 午後11時、耕二の家の周囲が急に騒々しくなってきた。サイレ
ンの音、拡声器の音。
「こちら消防署です。この付近一帯に避難命令がでました。河川
の急激な増水により、堤防が決壊する恐れがあります。最小限度
の荷物を持って、今すぐ公民館に避難してください。繰り返して
お願いします。今すぐ、公民館に避難してください!」


 耕二たちは、半信半疑で貴重品や身の回りの物を持って、土砂
降りの中、公民館に向かった。そして、川の様子を見て、一同
息を飲んだ。ついさっき見た川とは様子を一変させている激流で
あった。猛り狂った竜が、その牙で堤防を削り取っているかの
ようだった。


 午後11時20分ついに堤防が崩れるようにして決壊した。
激流が一気に住宅地に流れ込み、ひとつの流れを作って、各家を
ひとつまたひとつと呑み込んでいった。耕二の家も例外ではなか
った。


 耕二は国に損害賠償を請求できないか?