▽1「立入禁止」の土地に入ってケガをした。所有者に責任は? | ぐーすけとりきのブログ

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 川井和巳は、50歳である。北海道の釧路市の出身で、中学
まで釧路で過ごし、その後、父親の仕事の都合で東京に出てきた。
現在は、不動産会社のオーナー社長として、東京都内各所に土地
を所有していた。


 ある日の朝、会社の5階にある社長室で新聞を読んでいると、
秘書が来客を告げた。確か、午前中は来客はなかったはずだと
思って秘書に尋ねると、
「はい、どうしてもすぐに会いたいとおっしゃるので、とりあえず
名刺だけお預かりして一階のロビーでお待ちいただいております」


その名刺には、「政治経済研究所 財務担当 中田士郎」と
太い文字で印刷してあった。どうせまたエセ右翼の「たかり」だ
ろうと川井は思った。名刺を返してお引き取りいただこうと
秘書に指示しようとして名刺の裏をチラッとみたところ、
「自由が丘にある空き地で私の息子が骨折をしました。その件で
お話があります」と書かれてあった。


 東横線沿線の自由が丘には、川井が所有する約100坪の土地
があった。バブルの最盛期にマンション建設の話があったが、
景気が悪くなってからその計画も頓挫し、いご空き地のままに
してある。


 空き地の周囲には、有刺鉄線を張り巡らした高さ3メートルの
鉄製のフェンスを設置し、立ち入り禁止の看板も5メートルおき
くらいにつけてあった。しかも、一ヶ月に一度は、新入社員の
研修も兼ねて、総勢50名くらいでその空き地の雑草を刈ったり
捨てられたゴミを集めたりしに行くほか、フェンスの破損部分
の点検や修理もこまめに行っていた。また、その空き地内には、
一切の機械や建築材料をおかずにいた。これを使って子供が
ケガをしたりしないようにするためだった。


 その空き地で、中田という男の子供がケガをしたというのか。
とにかく会って、話だけは聞いてみることにした。


 応接室で待っていた中田は、角刈りで眼光鋭く、なかなか
一筋縄ではいかないような人物だった。中田は川井に要件を
切り出した。


 「突然お邪魔して恐縮です。さっそっくですが、社長さんが
お持ちの自由が丘の空き地で、私の長男で小学3年生になる旭
が足の骨を折ってしまいましてね。診断書を見てください。「右
足首骨折、全治3ヶ月」とあるでしょう。社長さんになんとか
してもらいたいと思いましてね」
 「一体、どんなことをして骨を折ったんだね」
 「いや、うちの息子があの空き地の中で遊ぼうと、フェンスを
乗り越えようとしたところ、有刺鉄線が服に引っ掛かって、着地
がうまくいかずに骨折してしまったんですよ」
 「あの空き地は立ち入り禁止にしてあるんだから、違反して
入ろうとするほうがいけないんじゃないかね」
 「フェンスに有刺鉄線なんかつけるからこんなことになるんだ」
 「立ち入り禁止の空き地に入らないように指導しない親の
責任だよ。こちらに一切責任はない。お引き取り願おうか」
 「それじゃあ、やむを得ない。裁判にするぞ」


このような捨て台詞をのこして中田は応接室を出て行った。
川井に責任はあるのだろうか。