「坂の上の雲」のクライマックスの1つ、旅順攻防戦、
司馬氏は乃木将軍をはじめ第三軍司令部を無能呼ばわりするが
要塞攻撃を世界史的視野から俯瞰すると、はたしてどうなのだろう
か?
乃木無能説の根拠としてよく指摘されるのが、旅順攻防戦
における彼の戦術のまずさである。ベトン(コンクリート)
で覆われた金城鉄壁の旅順要塞にいたずらに肉弾攻撃をしかけ、
最初の総攻撃失敗に飽き足らず、なんどもなんども馬鹿の一つ
おぼえのように同じ攻撃を繰り返しては同じ失敗を重ね、6万人
のも死傷者を出した。最初に203高地を目標に攻撃していれば
一回の攻撃で済んでいたのに、彼らを犬死させてしまった。
こういう批判である。
しかし、この批判は、詳細に分析すれば全くの的外れである。
まず、最初の肉弾攻撃説であるが、肉弾攻撃というと何かまるで
敵のベトンと機関銃に向かって、歩兵が闇雲に突進していく
ような印象を与えるけれど、実際には強襲法といって、数日間
にわたり味方の砲兵の火力で敵の陣地を徹底的に叩いて制圧
した後、歩兵が突撃して敵の陣地を奪取するという、極めて
近代的な戦法である。旅順要塞攻防戦には西欧列強諸国の
観戦武官が参加して戦訓を詳細にチェックしたにもかかわらず、
その後の第一次大戦では各国が乃木と同じ戦法を採用し、さらに
大量の死傷者を出している。