▽「県境を越えれば、追ってこない」の真偽
警察は縄張り意識が強い組織だと言われる。実際警察には
各都道府県警や所轄署ごとに、それぞれ管轄区域が設けられ
ており、別の管轄の事件に首を突っ込むことは「御法度」と
されている。
「交通違反でパトカーに追いかけられていても、県境を越えれば
警察は追ってこない」なんてうわさも、こうした警察独自の縄張り
意識からうまれたものと言えるだろう。
もっとも、いくら縄張りがあるとはいえ、本当に県境でパトカー
がピタリと追跡をあきらめるなんてことはない。
というのも、どの警察が捜査を行うかは、「事件の起きた場所」
で決まるからが。
たとえば、東京都で発生した事件の被害者が、神奈川県に
住んでいたとしよう。この場合事件を捜査するのは東京都の
警視庁になる。したがって、被疑者を逮捕するために、警視庁
の刑事が神奈川県へ出向いて捜査しても何の問題もない。
つまり、自分たちの管轄で発生した事件であれば、県をまたいで
自由に捜査することができるというわけだ。
ただし、実際に捜査するとなると、土地勘のある人間の協力が
あれば効率がいいのは確か。そのため「捜査協力」という形で
その区域を管轄する警察に情報などの提供を依頼する、
というのが一般的なようだ。
こう書くと「縄張り争いなんてなさそう」と思うかもしれないが、
問題となるのは複数の県にまたがって犯罪が発生した場合
だ。こうなると、どこが捜査の主導権を握るかで、各都道府県警
による綱引きが行われる。事件が重大であるほど、解決に
導けば「お手柄」となるだけに、こうした主導権争いはより熾烈
(しれつ)なものになりがち。どの警察も「自分たちがホシを
挙げたい」という思いは一緒なのだ。
また、事件の種類によっては、都道府県間だけでなく、警察の
部署間による綱引きも発生する。有名なオウム真理教の事件
では、地下鉄サリン事件の発生した警視庁と教団本部のあった
山梨県警だけでなく、刑事部と公安部による綱引きも事実あった
のである。
もちろん、ひとたび捜査が始まれば、団結して捜査に当たるのは
当然のことだ。
たとえ不満があっても、犯人逮捕という目的のためなら協力を
惜しまないというのが、現場の捜査員たちの偽らざる本心では
ないだろうか。