具体的に問題となるのは、公職選挙法の定める戸別訪問禁止
規定が合憲かどうかという点である。
この点、判例等は戸別訪問は買収や利益誘導の危険性がある、
情実によって投票がなされる危険性がある、無用・不当な競争に
伴って資金的余裕がある者のみが戸別訪問ができるため、
実質的な公平を阻害する、更には有権者の私生活の平穏を
攪乱するなどの理由から合憲としている。
しかし、これら合憲説の弊害は十分な根拠がない。
買収や利益誘導の危険は、そもそも戸別訪問以外の
場面でも十分行われる可能性があるし、何度も訪問して
くれた人に情が移ってついつい投票してしまうという情実
による支配との理由は、あまりにも選挙民を馬鹿にした
考え方であると言える。(訪問が、あまりにもうっとおしくて
敬遠する場合もあるだろう)
また、余分な費用がかかるという点についても、ほかに
規制の仕方は有り得る。また、私生活の平穏の攪乱の
点も、回数や日時を制限すれば済むことである
このように選挙運動の自由に大きな比重を置きつつ、
選挙の公正との間の調和を図るという立場からすれば
目的の正当性の審査の他に、その目的を達するために
より制限的でない他の緩やかな規制手段があるかどうかを
具体的実質的に審査することが必要であろう。
判例によれば、戸別訪問禁止規定は合憲であるが
学説によれば、戸別訪問の一律全面禁止は
違憲という結論になる。