「ぼんぼん」今江祥智でB29が墜落している場面にて | ぐーすけとりきのブログ

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「ぼんぼん」は戦争を少年目線から見た物語である。

「長い坂」とか「少年H」とか「少年時代」とか

そういった系譜の小説である。


場面は大阪空襲で街が焼け野原になったところから抜粋である。


「久宝寺にB公が落とされとるいうでぇ」

洋次郎は洋と佐脇さんに、見に行こ…と声をかけた。

B-29が撃墜された言うてはる…。

墜落現場は黒山の人だかりだった。

とりかこむ人々が口々に大声でののしっていた。

まるでその輪のまんなかに生きたアメリカ兵でも

いるみたいに、誰かに向かってののしっているのだった。


洋は、小柄なのを武器に、人々の脇をかきわけて

泳ぐようにして囲みの中へ潜り込んでいった。

洋の目の前に予想以上に巨大な発動機がくすぶっていた。

プロペラは巨人の力でねじまげられたかっこうだったが、

発動機の直径の大きさが、洋を驚かせた。

しかし、それも一瞬だった。

洋は、目の前の大人たちが、掛け声とでもいうように

え、ちくちょう!

こンにゃろ!

ほんまにもう!

どなりながら、なにかの上に乗り

足踏みしているのに目を奪われたのだ。


そこらに落ちていたらしい鉄の棒で、横からつつくのがいた。

つばを吐きかけるのがいた。石をぶつけるのがいた。

何人にも踏みにじられ、まるまった黒いものが…

人間の屍体であり、落ちた米機の搭乗員のものだとわかった時、

洋の鼻に、あのいやーな匂いがずんと突き刺さった。

(屍体を踏んづけてはるのや…)

焼け焦げた緑色の軍服の布切れから、肉塊が押し出され

踏みにじられ、ちぢまり、はじけた。

茶と黒と土のいろしかないあたりに、

そこだけあざやかなピンクの肉塊がはじけ、

こまかな骨が突き出た。

骨と細さと白さが、洋の目に突き刺さった


「ぼん。そこのぼん!」

威勢のいい声が、洋をふりむかせた。

どこかのご隠居さんに見えるとしよりが呼んでいた

「ぼんも行かんかい。けとばしたらんかいな。

うちの孫を焼き殺しよった、にくい鬼畜生や」

生唾と黄色い感じの液が胸からかけ上がり

のどでふくれ上がった。

お腹の中のものみんなを吐きそうな気がしたのに

口からでたのは、ほんの少しのつばのかたまりだった。

「つばをかけたったんか、ようやった、ぼん…」

としよりの声が水の中の声のようにかすんで聞こえ、

洋は折れ曲がったプロペラを支えにやっと立っていることができた。

 

アメリカの無差別空襲で犠牲になった日本人は数しれないが

B-29の搭乗員で墜落死した米兵も3000人近くいたという

アメさんも怖いのだ。

しかし、なんの罪もない非戦闘員を巻き込んで空襲することなど

許されるはずもない

戦争は負けてはいけない。

しかしあれから70年、同盟国として付き合っていくなんて

誰がおもっただろう。

そしてアメリカも「世界の警察官」であることをやめようとしている

この先どうなるのだろうか

誰も予測はつかない。