$ぷんぷん臭う糞みたいなロック
・恐悪狂人団/邪悪自伝-上巻-

殺害塩化ビニール社長、CRAZY-SKBが中学生の時に始めたバンド、恐悪狂人団のベスト盤、上巻。こちらは86年以前にリリースされたシングルテープ等の楽曲から構成されたベスト盤で、定価10万円で3枚だけ制作された幻のシングルや、ライブでの非売品バラマキテープ等からの音源が収録されており、実質、世界に存在しているのかすら怪しいような音源からの収録となっている。つまり新曲みたいなものだ。

90年代の後期の音源はインダストリアルの要素を打ち出した整合感あるハードコアサウンドで、それはそれで面白かったのだが、この頃は強烈なノイズ・ハードコアサウンドを鳴らしており、当時は「蝉の音」と形容されたノイズコアのギターサウンドそのままなのであった。

それでありながら当時ノイズコアの先端を行っていた九州勢のGAIやCONFUSEとも違ったサウンドで、強烈なノイズでありながらもスピードだけにこだわらず、ミドルテンポの曲にこそ味があったような気がする。

特にライブ音源として収録されている「PERVERTED SOLDER」はひたすら同じビートを叩き続ける単調なドラムと、同じく反復リフを刻み続ける爆音ベースに、呪詛のようなボーカルが乗る異様な曲。ただ、何故か長尺にも関わらず飽きないから不思議である。

もしかしたら、既にこの頃からSPKやNeubautenのようなインダストリアルミュージックの影響を打ち出していたのかもしれない。その他にはわけのわからない叫び声をあげていたと思っていたら、サビで急に「マスターベーション!!」と叫ぶ、曲名そのまんまの「MASTURBATION」なんかも凄いインパクトだ。恐らく、ロクでもない事を歌った歌なのだろう。

しかし83年~86年頃の音源としてはあまりにも斬新で、時代の先を行っていたような気がする。ハードコアと言うより、ノイズ・インダストリアルの影響を強く感じる。そう考えると後にインダストリアル・メタル的作風の「合唱(1992年リリース)」がリリースされたのも必然だったのかもしれない。

ちなみに下巻はハードコアパンクサウンドではあるものの、上巻のようなノイジーなギターの歪みはなく、割と健全(?)なハードコア・パンクサウンドとなっている。悪くはないのだが、収録された音源自体も手に入れにくいとは言え探しまわれば見つかるレベルの物で、上巻程の面白みは無い。

ただこの上巻はノイズ好きなら必聴だと思う。