夫の国では

「兄嫁」のことを

「バビ」

と呼ぶ


夫には

6人の妹と

3人の弟がいて

私達が結婚した時

義父は他界しており

義母は

家の長男が生まれた年に

亡くなった


夫には兄が3人いたが

日本で働いていた夫と私で

弟、妹の生活費や嫁入り支度を整えた


いくら物価の安い国といえど

それは私達二人に

重くのしかかった



夫と結婚する時

私は夫の国に渡った


自分が骨を埋めるかもしれない場所を

見ておきたい


親に反対されての結婚なら

なおさらだと

思った



夫の国で1年暮らし

不自由なことだらけ

カルチャーショック受けまくりだったが

でも

夫の家族や

近所の方達

家族の友人

皆、皆

私をとても大事にしてくれたし

単純だけど

純粋な気高い心を持った人達が

好きになった


二人で日本に戻ってから

二人で頑張って働いた


夫と個人事業で仕事を始め

規模が大きくなり

法人にして

私は代表になった


ホントは代表なんてやりたくない

でも

読み書きできないし

日本の法も価値観もわからない夫に

任せるわけにはいかなかった


子供4人を生み育てる傍ら

お稽古や幼稚園の役員やらお付き合い

毎日なりふり構わず

回していった


仕事も任せられることは人に任せ

でも全ての責任を負えるよう把握し


いつも色んな板挟みで

疲弊していた



でも

その努力のかいあって

夫の妹は

身体に障害のある妹を除き

皆嫁にいき

今たくさんの姪っ子が大人になった


障害のある妹も

日本に呼んで

あちこちの病院を渡り歩き

一箇所だけ

症状を軽くする

手術とリハビリをしてくれる病院を見つけ

今は元気に

国で暮らしている



夫が

「バビ」の意味は

「兄嫁」って意味だけど

それは

「母親に継ぐ存在」って意味なんだよ

と言った


あちらの国では

「母親の足の下に

天国はある」

という

諺があり

皆、本当に

母親を大事にする


その母親が亡くなった後

私が夫の弟妹の

「天国」を

足元に作らなければならない


その意味を考えるに


母親とは

無償の愛を直向きに注ぐ存在で

その足元に侍る安らぎこそ

「天国」だと

信じられているのだろう




私は決して

模範的な良いバビではなかった


結構

妹達に

ひどい扱いをしてしまった時もある

背負いきれない重荷に対する

苛立ちだった


でも私の精一杯で

彼女達の幸せを願い

満足な支度を整え

嫁に出した



何故今日

この話をしたかと言うと

さっき夫が

義妹と電話で話していて

義妹が

夫の国で一番人気の

クイズ番組に出演したらしく

その番組はバイクや車など

豪華な商品がもらえる番組で

ホントにバイクをもらったらしい


で、

バイクをもらった時の

インタビューで

義妹は

「私の日本にいるバビの為に

ドゥアーしてください」

と言ったらしい


「ドゥアー」は

祝福やご加護を祈ることなんだけど

義妹が

インタビューで

自分の家族でも

兄である夫でもなく

私のことを

視聴者に祈るよう言ってくれたことが


なんか

なんかね


ホントに

辛くて辛くて

たまらない事いっぱいあったけど

報われたなぁ

って

思ったんです


夫が前に言いました

「神さまは

誰の祈りを聴くかわからない」


そのテレビを見ていて

私の為に本当に心から祈ってくれた人がいて

最近私は

とても体調が良くなってきたのかもしれません


私は藤井風さんの音楽にも

祈りを感じます


たくさんの人達に

安らぎや潤い

癒やしをもたらしたい

という


昨日会った

陶芸の先生の作品にも

安寧を祈る思いが


娘の主治医の患者さんへの気づかいや

娘の音楽の担当さんの働きぶりにも




最近、私は

たくさんの人達の

自分自身ではなく

「他者の幸福」を願う

「祈り」を

あちこちで感じます


その思いが 

あっちからも

こっちからも吹いていて


とても心地良く

安らぎを覚えます